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節税に夢中な事業所に、賃上げはできるのかな

節税対策で法人税を逃れようと考えると、利益を圧縮する必要がある。

どうするのかといえば、まず「経費、経費」「領収書ちょうだい」といってお金を使う。設備投資をしたり車や道具を買ったり、たいして必要なさそうなものまで購入したりする。

商売を始めると必要経費をまるで自由に使えるお金かの如く「経費、経費」と言う人がいるけれど、自称のものもきっと多い。
あれもこれも必要経費と思うのも言うのも自由だけれど、それらの判断は税理士先生に助言を求めることはできても最終的な判断は税務調査官次第になる。
(中略)
「それ(料理やパン、お菓子)を作るのに、そんなに高額な設備や道具って本当に必要ですか?」といったことを思うことがある。
それが合法な必要経費や節税のつもりであったとしても現金(キャッシュ)の流出であることに他ならない。

納税する君と僕のために 3.

みんながそうだとは思わないけれど、意図的に赤字にする会社にはこういった カラクリがある。

もちろん本当に必要なものであれば購入すべきだし、その多くは経費として認められると思う。
けれど、消耗品レベルの小物をいくら買ったところで節税と呼ぶほどにもならなければ、ただの無駄遣いになりかねない。かといって、ちょっとしたモノを購入すればその多くは減価償却が必要なため、それらを一度に経費処理することもできない。

設備投資は実質経費処理ができていることになるけれど、掛かった費用を一度には経費処理ができない(これが減価償却)。
だから過剰な設備投資をした場合など、元本返済期間より減価償却期間の方が長くなる場合があり、その分税金の支払いが多くなることで残高不足、資金繰りの圧迫が起こり得る。
(中略)
また新品の機器の場合、耐用年数の設定が長いため年度あたりの減価償却費が少額になり利益の圧縮ができない分、それだけ税金が高くなるので資金を圧迫されたり残高不足になる可能性が出てくる。

独立した元スタッフへの言葉と、経営のこと 12.

つまり、会社の現金が出ていった割には思いのほか大した節税にならなかったり、上記のように却って残高不足を起こすといった可能性もあったりする。
要するにこれは ”税金を少しでも払わなくて済む方法” ではあるけれど、 ”現金を残すための方法” にはならない。
そこで大半の人は、役員報酬を多く設定することで利益を圧縮し節税をする。
経費でいろんなものを買い、役員報酬を高くして利益をゼロにすれば、「はい、赤字会社の出来上がり」である。
購入したものが税務署に経費と認定されることが前提だけれど、無論これも合法な節税対策ではある。

しかし役員報酬を多くすれば当然、今度はそこ(個人所得)にかかる所得税や住民税、社会保険料が高くなる。役員報酬をどこまで上げると法人税を納めるよりも税率が上がるのか、また社会保険料は会社にも負担がかかるものなので、そういったことも相対的に考慮しながら役員報酬を設定することになる。

とはいえ、これもやはり適正な額に設定するべきで、法人を赤字にすることを目的に役員報酬を高く設定しすぎるのは、あまり良いことだとも思えない。
これだと結局、法人が役員(個人)の資産から借入をすることになるだろうし、この辺りを金融機関などがどう勘案するか次第だろうけれど、会社に現金を残したいと考えるのであれば黒字決算にして、ちゃんと法人税を納めることが一番の得策だと思う。この方が経営者の精神衛生上的にも良いと思うしね。

無論節税は悪いことではないけれど、節税そのものが目的になってしまい赤字を出し続けると金融機関からの融資も受けづらくなるだろうし、そのため結果的にキャッシュがまわらなくなっていたのでは本末転倒でしかない。

それに、節税に夢中な事業所(事業主)が賃上げをできる気があまりしないんだな。

もちろんぼくは税のプロでもないし、役員報酬の設定や税にまつわる法律、細かいルールなどは、みなさんが普段お世話になっている顧問税理士の先生や税務署に直接問い合わせなり確認をするのが間違いない。
ただこういった側面とは別に、この ”役員報酬の設定” が、特に零細企業の経営者に心理的な錯覚を与えている部分があるのではないか、と思うことがある。
またそれが、「無理だ」「できるわけない」という反応につながる要因なのではないか、とぼくが考える話を次回。

つづく



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