犯人は、誰だ
政府と日銀が ”株価つり上げ策” をしたことで、買いが買いを呼ぶことになった。
それも ”呼ばれた買い” は日本人でなく、金融緩和でジャブジャブになった過剰なお金が投機として日本の株式市場に流れ込む。
これに加え、年金資金を運用する独立行政法人GPIFが株式での運用を巨額なものに拡大したのだから、そりゃあ日本の株価は実態を伴わず上昇する。
また、追加緩和までやったのだから、さらに円安だって加速する。
要するに、あの株価上昇を演じさせたのは日銀とほぼ海外投資家だけで、それは日本株を海外投資家へ叩き売り、安売りセールをしたに等しい。
それでも安倍元首相や黒田・前総裁が日本経済を良くしようと考えられたことはあっても、意図して悪くしようなんて考えるはずもない。
安倍元首相は第二次安倍内閣発足の時、国会演説で「日本は世界で一番企業が活躍しやすい国を目指します」と述べられていた。
この力強い演説からも、政府は大企業を応援するぜっ!という意思が伝わってくるし、明らかにトリクルダウンを狙ったものだったと思う。
もともとこれは1980年代の米国でレーガン元大統領が実行した政策だし、アベノミクスという造語も ”レーガノミクス” を模したものだと思えば、まぁそうなんだろうと。
トリクルダウンは「富める者(大企業やお金持ち)が富めば、貧しい者(中小零細企業や庶民)にも富が落ちる」という経済理論で、ウェイ、ウェーイな夜の世界の人たちがやっているシャンパンタワーのようなイメージ。
日本人らしく例えるなら「風が吹けば桶屋が儲かる」という考え方で、政府・日銀が人為的に ”大企業優遇策” という風を起こせば、それが波及して経済を刺激し、賃金が上がり桶屋(中小零細企業や庶民)まで儲かるという仮説だったと思う。
大企業はそれなりに儲かっただろうし、アベノミクスによって実際に株価は約3倍にも跳ね上がった。ところが肝心のトリクルダウンは起こらず、現実はいくら風を起こしても桶屋が恩恵を享受することはなかった。
それどころか、風を起こすためには将来の増税になるであろう巨額な財政赤字と円安リスクを伴うことになる。そして結果、桶屋(中小零細企業や庶民)は、過度な円安によって物価高騰に苦しむだけだった。
これが現在も続く物価高騰の経緯である、多分。
風を起こしたのに一向に実質賃金が上がらなかったのは、安倍元首相や当時の政権にとって誤算だったに違いない。
その後、国会で安倍元首相は「トリクルダウンと言ったことはない」「アベノミクスはトリクルダウンではない」「政権として目指すのはトリクルダウンではなく、経済の好循環の実現であり、地方経済の底上げだ」と主張されるようになった。
でも、これは言う必要なかったんじゃないかなぁ。言った言わないの水掛け論で、まるで子どもの喧嘩のようなことを国会でやる意味はない。
リスクを取ってまで風を起こした。
そして大企業までは潤った。
こうなると次の犯人探しが始まり、その矛先は大企業へと向かう。
おい、経団連のヤロー。テメーら、せっかくの風をなんで止めてんねん。ちゃんと桶屋までまわせや、ゴラァ
というのが、大企業が溜め込みすぎと批判される ”内部留保” だと思う。
一理あるとは思うし、ぼくは別段大企業や経団連の味方でもないけれど、彼らからすれば、これだけ上がり続ける社会保険料の会社負担増や雇用規制(原則、解雇ができない)、最近流行りの個人株主までがアクティビスト化(物言う株主)、明るい未来が見通せない日本の経済状況などなどを勘案すれば、そりゃ内部留保をするのも致し方ないと思えてくる。
つまり誰々が悪い云々と糾弾することに意味などなく、それが改善につながるとも思えない。
そう考えると、明らかに時代が変わっているのに、いつまでも昭和を引きずっている日本経済の構造そのものに欠陥があるとしか思えないんだけれどなぁ。
つづく