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そこじゃない気がする

一昨日、noteでつながっている「満太郎さん(大阪の餃子屋さん)」の辻社長に、ぼくの記事をご紹介いただいた(辻さん、ありがとうございました)。

この記事を拝読していてふと思うことがあったので、今回は予告していた内容を変更し、それについて述べてみたいと思う(予定していた内容は後述します)。

辻さんが社会保険について触れられている箇所で、「スレッズで知人がシェアしていた投稿」として引用されていたものがある(”知人がシェアしていた” とのことなので、辻さんの直接のお知り合いではないと思うけれど)。

こちら

会社負担分の社保を記載義務にしませんか?
例えば会社が給料として「月給500,000円」としていても手取りは366,372円である。
差額の133,628円は社保が77,700円、所得税が18,470円、住民税が37,458円。(扶養等を考えないものとする)
そして会社は社保を負担しており、実質人件費は579,200円。
この事実を知って給料について考えてほしいし、経営者目線を知ってほしいし、負担多すぎなことを知ってほしい。
サラリーマンで月収を30万円とすると、手取りは23万円程。会社は社会保険料40,000円を別途負担するので34万円を支出する。つまり社員が23万円受け取るには会社は34万円支払います。支払う側と受け取る側でのズレが月に11万円、年間で132万円。会社のコスト感覚と社員の満足感の間にはいつもこれくらいのズレがあるのだ。

人件費(固定費)定まってきた&社会保険

ぼくも前回、「月給がいくらなら会社の人件費負担がいくらで、手取りはいくらになる」という同様の説明を述べた。ぼくが計算したものと若干の誤差があるのは、おそらく地域や条件(年齢など)が異なっているか、計算に使用した制度の年度が違うか(ぼくのは2025年度の条件)程度の差で、そこがこの話の本題でもない。

「こんなに会社は負担しているのに、本人の手取りがこれだけにしかならない」というのは同じだけれど、この人が述べられている本質はこちらだと思う。

「この事実を知って給料について考えてほしいし、経営者目線を知ってほしいし、負担多すぎなことを知ってほしい」

「会社のコスト感覚と社員の満足感の間にはいつもこれくらいのズレがあるのだ」

だから

「会社負担分の社保を記載義務にしませんか?」

と。

これ、少し前にかなり多くの人たちが同様のことをSNSで発信されていた。
そしてこれを述べられていたのはいずれも雇用主だろうし、またそれは自社の被雇用者へ向けられたものだったと思う。

「会社は、あなたを雇うためにこんなに人件費を負担しています。あなたの手取りが少ないのは会社のせいでなく、国が、社会保険が悪いんだよ。だからそれをわかってくれよ〜」と、いうことなんだろう。
その通りだし、雇用主側であったぼくもそれを訴えたくなる気持ちはよくわかる。
そして、多くの人がその手段として発信されていたのが「会社負担分の社保を記載義務に」だった。

もちろん、それを被雇用者へ理解してもらうことは大切なことだと思う。
また、給与明細に記載することは違法じゃないだろうから記載すればいいし、義務化すればいいとも思う。それにより被雇用者の意識が、経営者にとって良いように変わるならそれに越したこともない。けれど、残念ながら仮にそれを義務化したところでおそらく何も変わらない。やはり被雇用者が意識するのは手取りであって、きっと雇用主が期待するほどのことは何も起きないと思う。

かくいうぼくもスタッフに「みんな給与明細をもっとちゃんと見た方がいいよ」と言い続けてきたし、上がり続ける社会保険料に危機感を覚えたぼくは昔、スタッフに手取りの仕組みを説明したこともある。
上司の話だから当然スタッフは聞いてくれるけれど、実際には聞いているだけで聞いていない。
ぽか〜んって、顔をしていた。
ちゃんと理解してくれた人がいたとしても ”店をやって人を雇うと大変なんだなぁ” と思うくらいで、「経営者の大変さは理解できました。じゃあ仕方がないですね、手取りが低いのは我慢します」なんて人はまずいない。

また「それなら売り上げを伸ばして利益を増やしましょう」と本当に思えるのも、その成果が明確に自分の収入に反映される一部の人であって、大半の被雇用者にとって一番重要なのは、やはり自分の手取りというのが現実。
ましてこれほど物価高で生活が苦しい中、”そういった事情なら手取りが少ないのも仕方がない” なんて、経営者都合を理解するほど殊勝な人がいるとも到底思えない。

「この事実を知って給料について考えてほしいし、経営者目線を知ってほしいし、負担多すぎなことを知ってほしい」

経営者側の気持ちはわかるけれど、それを被雇用者側が「はぁ・・・」と理解した表情を見せたところで彼らからすれば、「これらを知って、どうしろと?だから我慢しろと?」というのが本音だと思うんだな。

よく「経営者目線で」と言われるけれど、大きな会社で取締役や立場のある経営陣ならともかく、小規模な会社でそれを求めても本当に自分自身が経営者にでもならないと、こればかりは実感もわかないだろうし難しいんじゃないかな。

そう考えると、経営者は「わかってくれよ〜」と身内(自社の被雇用者)に向かって理解を求めるよりも、この国の理不尽なルールの中でどうすれば自社が生き残れるかを考えた方が建設的だと思うんだな。

つづく



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