LA JETÉE と 12モンキーズ
※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。
少し前、ブーランジェリー・ジャンゴの川本さんと久しぶりにお会いした。
彼は、ぼくなんて比べものにならないくらいのフランス映画、ヌーヴェルバーグの超オタクで、そんな彼から「LA JETÉE(ラ・ジュテ)」という古いフランス映画のポスターをプレゼントしていただいた。
ぼくはこの作品を知らなかったけれど、さすがフランス映画、さすがヌーヴェルバーグだけにとにかくポスターがかっこいい。
これは見とかなきゃということで早速、amazonでポチリ。
1962年のSF作品であること、本編が28分という短編映画であること以外、事前に何の知識も持たずに見ることにした。
衝撃的だった。
物語の内容はいろんな方が書かれているので割愛するけれど、この映画は全編ほぼモノクロ写真で構成されていて、セリフも一切なければわずかな効果音とナレーションだけで物語が進んでいく。
ほぼモノクロ写真で、というのは後半の数秒間のみが動画になっているからで、当然これも監督であるクリス・マルケルさんの計算され尽くした演出だと思うけれど、ワンシーンだけというのが余計に強烈な印象として残る。
このつくり方、演出方法だけでもかなりの衝撃を受けたけれど、時代背景を考えればおそらく予算もなかっただろうし、今のようなCGやVFXといった技術のない時代にSFを撮ろうという発想もすごい。
もちろんぼくらが今のSF映画からイメージする装置などは一切登場しないけれど、それでいてSFとして成立していること、何よりもテーマがこれほど壮大なものにもかかわらず、たった28分間という短い時間で物語が完結していることにも驚かされる(ラストシーンなんて切なくさえある)。
ぼくはヌーヴェルバーグの作品は好きだけれど理解できるのかと訊かれれば、ゴダール作品などは特にそうだけれど正直よくわからない、意味不明、ストーリーが支離滅裂、起承転結があるとは思えないといった感想になる。
それでも好きなのは、作品を見るときの視点や見方が他の映画を見るときとはまったく違うのと、ヌーヴェルバーグは最初からストーリーなんてないよ、くらいの気持ちで見ているということもある。
このLA JETÉEはヌーヴェルバーグ真っ只中の時代のものだし、本編が28分というのも見る前からいかにもな印象を受ける。
ところが見終わると何とも言い難い感動があった。演出こそ他のヌーヴェルバーグ作品と比べてもかなり斬新だと思ったけれど、きっと物語として起承転結があったからだと思う。
それにしてもこの作品の素晴らしさを上手く言葉で言い表せないのがもどかしいけれど、もしぼくが中学生や高校生の頃にこの作品と出逢っていたら、今とはまったく違う進路を目指していたかもしれないとさえ思う。
ぼく自身はアートといったものに疎いし知識もないけれど、それでも機会があれば、写真や映像をされている方には是非、見てほしいなと思う映画だった。
ちなみに、ブラピの怪演が素晴らしい1995年の「12モンキーズ(Twelve Monkeys)」は、LA JETÉEを原案にされたもので、冒頭に「INSPIRED BY THE FILM ‘LA JETÉE’ WRITTEN BY CHRIS MARKER」のクレジットが出てくる。
こちらもかなりおもしろい。もう23年も前の映画なのに、いま見てもまったく古さを感じない。機会ある方は、「LA JETÉE」、「12モンキーズ」と続けて見てほしい。
川本さん、本当にいい映画を教えてくれてありがとうございました。
また、食事にでも行きましょう。