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『小さくて強い店』について考えてみた 8.

※こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

「いろんな業態がある中で相対的にパン屋さんが一番キツイとぼくは思っている」と書いたけれど、これは設備投資の部分にもあてはまる。
例えば料理屋さん、コーヒーショップ、お菓子屋さん、バー、パン屋さんといったお店を可能な限り少額でミニマムにつくろうとした場合、投資額、面積の部分で最初に限界がくるのがやはりパン屋さんだと思う(恐らくその次がお菓子屋さん)。それほど製パンの設備は高額で大きい。

そして規模がそれなりに大きくでもならない限り1人でやるお店も2人〜4人でやるお店であっても必要な設備は基本的に変わらない。
設備に同等額を投資するなら、製造能力が足りない人数で無理をして作るよりもスタッフを雇用し、その分の売上を伸ばすことを考えた方が効率的だと思う。
無論何人雇用すればベターなのかは一概には言えないし、他人を雇用するのは責任も増えれば単純に人件費も増えるし、マネジメントといったそれまであまり気にする必要のなかった課題も出てくるのでその辺りはトレードオフの関係だけれど、そういった煩わしいことを差し引いても雇用した方が良いとぼくは考える。

やはり雇用をすることで自分自身、事業主として学ぶことや鍛えられることも確実にあるし、その瞬間を切り取った効率の部分だけでなくスタッフがいてくれることで1人2人では絶対に作れないような製造量や種類を作ることも可能になる。
また、やり方次第ではその先の展開も考えることができるようにだってなる。
それが労働集約型の仕事である以上、どれほど個人に才能や能力があろうと自分の力だけでできることは限界があるけれど、他人の力を借りることで実際の人数以上のことを可能にすることも考えられる。

この話の最初に小さなお店の強さ、メリットを思いつくまま書き出そうとしたらすぐに終わってしまったけれど、今度はそのリスク、デメリットを書き始めると枚挙にいとまがない。
労働環境や労働条件など、これほど改善の必要性が切迫した時代にあってもそれさえ小さなお店ではできることが限定されると思うし、細かいことまで書けば1人2人といった同じメンバーでずっと一緒にいると話題もなくなり息が詰まりそうになったり飽きませんか、とまで本気で思ってしまう。
お店というのは拘束時間がとても長い。
1人2人で回すといったお店で働かれた経験のある方ならわかると思うけれど、雇用する側はともかく雇われている下の子にとって、それは精神衛生上思いのほか大きなことだったりする。
こういったことは机上の数字には現れないけれど、意外と小さなお店のリスクの一つだと考える。

修業中、自ら望み意図的にそういったお店ばかりで働いてきたぼくでさえ、かなりキツかったのだから。

つづく


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