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賃上げのための源泉をどうするか


この最低賃金は法的に遵守すべき金額であって、「その額を出せば働きに来てもらえる」といったものでないことも実感あると思う。

パラダイムシフト

現在、東京都の最低賃金は、1113円。
しかし、かのバイトルさんによると東京都のアルバイト・パートさんの平均時給は、すでに1470円になっている。
やはり国から設定や強制をされなくても時給1500円になるのも、それが地方に波及するのも時間の問題だと思うな。

ひとり親方のお店はさておき、どうしても他人の手が必要なお店にとって人材確保に即効性があるとすれば、先に述べたようにおそらく賃上げしかない。

難しいのは、すでに複数の店舗になっていたり、1軒のお店であっても売り上げが大きく、他人の手を借りなければ物理的に成立しない規模の場合。

「誰か、いませんかね」

そこで賃上げのための源泉をどうするか?ということになるけれど、これは多分2つくらいしかない。

賃上げを「無理だ」「できるわけない」と思ってしまうのは、おそらくこれまでと同じ条件を前提に考えているからだと思うので、まずはそれが変わったと認識すべきだと思う。

何が変わったかといえば、適正価格が変わった。

原材料費、光熱費、人件費などが急騰しているのだから、利益確保のためには適正価格も変わる。当然、コスト上昇分を加えたものが新しい適正価格になる。
大幅な賃上げをするためには、付加価値( = 粗利)を上げるための価格転嫁が不可避だと思うけれど、とはいえこれにもおそらく限界がある。

クロワッサン1個が千円というわけにもいかないだろうし。

こうして価格転嫁にも限界がある以上どう考えても行き着くところ、賃上げを続けるためには労働生産性の向上が不可欠になると個人的には考える。
よほどカリスマ性のあるオーナーやシェフのお店なら、ふわっとした情緒的や抽象的な精神論で人材確保ができるのかもしれないけれど、昔ならともかく今どきそんなお店はほとんどないのが現実でしょう。

少なくとも大半のお店が人材不足に困窮しているのが現実なんだから、具体的な方策を考えれば考えるほど事業である以上そこへ向かうのが必然とぼくは思うし、それ以外に打つ手も思いつかない。
そう考えると生産性を上げれない(上げる気がない)会社(お店)が賃上げを続けるというのは、早晩不可能になるのも自明だと思う。

賃金の高いお店や事業所は効率が高いから販管費が低く、おしなべて働く人ひとり当たりの絶対額は高くても全体からの割合では低くなっている。ゆえに労務費を上げる下地や余裕があるというのが現実。だから人件費を捻出できないほど収益性が低く、それでも労働生産性も見直さないのであれば、他人の雇用は諦めた方がいい気がする。

そもそも、これまで銀行の貸出金利が1%もなかったから利益率の低すぎる会社やお店でも生きながらえることができたわけで、むしろこれから間違いなく金利は上がるし、インフレだってまだまだ続くと思うので、そういった事業所は利上げの時に破綻するなり、いずれは世の中の変化を受け入れざるを得なくなる。

「賃上げのための源泉をどうするか」のもう一つは、次回にしよう。

それから原材料費や人件費が高騰すれば当然、事業所はその上昇分を価格転嫁することになるけれど、これは無論食べもの屋さんに限った話でもなく、どの業界でも同じこと。
食べもの屋さんに近い業界(影響がある)でいえば、需要拡大に供給が追いついていない物流業界がその典型だと思う。
ドライバーさんの時間外労働に関する上限規制まで適用されたので、こうなると稼げなくなったドライバーさんの賃上げは必須だろうし、あるいはそれが理由でドライバーさんが辞めるとさらに人材不足が加速し、結果どちらにしても物流コストは高騰することになる。

経済に興味のある人なら気づいておられる人も多いと思うけれど、インフレ退治に苦心し、めちゃくちゃ利下げに慎重な米FRBのパウエル議長が毎回どのデータ(経済指標)に注視しているのか。
一つは、もちろんCPI(消費者物価指数)。そしてもう一つが「雇用統計」なんだな。それだけ雇用はインフレと不可分の関係にあるということ。

日本は世界最先端の少子化問題(=労働人口減少問題)を抱えている国であり、ぼくはそれを ”止めることのできない時限爆弾” だと思っている。
また、それが現在以上の破壊力で爆発するXデーがくるのは ”ある日、突然” くらいにも想像している。

現在、インフレの要因としてよく言われる原油などエネルギーや輸入物価の高騰といった対外的要因ももちろんあるけれど、本当に深刻なインフレ要因はFRBがそうであるように、労働人口減少による対内的な要因だと思うんだな。

つまり、仮に政府が最低賃金を設定し強制をしなかったとしても結果的に賃金は上げざるを得なくなるとぼくは思っている。それが労働人口減少による影響で、対内的なインフレ要因になると考える。

対外的な根拠と対内的な根拠

だから、ぼくは「インフレは続く」と推測している(やっと伏線を回収できた)。

つづく



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