経営本のスゝメ 2.
ぼくが経営本というよりも経営者本を手当たり次第に読んでいた理由は、ロールモデルとなる経営者を探していたのである。
つまり、いろんな経営手法や考え方がある中で、お手本となりそうな経営者を探すところからぼくは始めた。
目指すべき場所が右にあるのか、左にあるのか、北か南なのか、それさえわからずただ突っ走るのはあまりにも合理的でない。
目指すものが右にあるのに全力で左に走ったところで目的地に辿り着くこともなく、いくら努力をしてもそもそもの方向性を間違っていたのでは、おそらく結果が伴うこともない。
企業理念というほど大袈裟なものではないけれど、その経営者がなぜ成功されたのか、何を大切に考えておられたのか、まずはそれを知りたかった。
それに自分自身、腑に落ちることの方がやはりモチベーションだって上がる。
もちろん、どの方もぼくよりはるかに賢い人ばかりなのでどれを読んでも学ぶべきこと、参考にすべきことはある。だからそういった良い部分は都度、参考にしたり可能なことは取り入れていくのだけれど、自分が経営をしていく上でまず根幹となるものが必要だった。そしてそれは、できるだけシンプルな言葉で伝わるくらいのものがいいなぁ、とも考えていた。
そういった意味で行き着いたのが、経営の神様と呼ばれる京セラの創業者・稲盛和夫さんと、吉野家1号店でのアルバイトから叩き上げで社長、会長にまでなられた安部修仁さんのお二人だった。
ちなみにぼくが一番最初に読んだ経営本も稲盛和夫さんの著書である。
経営者という同じ職種ではあるけれど、ジャンルも扱われているものもまったく違うこのお二人の著書からぼくは共通点を見つけた。
それが「内部留保の重要性」だった。
この駄文ばかりのnoteを以前から読んでくださっている奇特な方の中には、お気づきになられた方もおられるに違いない。
そう、以前にぼくが「独立した元スタッフへの言葉と、経営のこと」という話の中で内部留保の重要性を繰り返し述べてきたのは、稲盛さんと安部さんの著書で感銘と影響を受けたことに由来する。またぼく自身、それを指針とし実践してきたことが本当に良かったと感じた経験からあの話を綴った。
余談になってしまうけれど、稲盛さんがどれほど偉大な功績を残されたのか、近年のことを少しだけ述べておきたい。
もちろん、後述する経営本につながる話でもある。
稲盛さんが経営破綻した日本航空の再建を成し遂げたられたことは、多くの人の記憶に新しいと思う。いや、これは自分が歳をとった証拠だな。
日本航空は元国営企業(半官半民)であり民営化後も杜撰な企業体質が抜けきらず、長年に渡るその放漫経営が原因で戦後最大の負債額を抱えて経営破綻した。
そんな日本航空の再建を政府から託された稲盛さんは誰もが不可能と思う中、見事な手腕でV字回復を果たし、上場廃止から最短記録で再上場までさせるという偉業だけでなくその後、史上最高の営業利益まで出されている。
そりゃ、経営の神様って呼ばれるわ。
過ぎてみれば、終わりよければすべてよし的な話に聞こえるけれど、当時のぼくは憤懣やる方ない気持ちになった。
それは尊敬する稲盛さんに、晩年にまでそんな火中の栗を拾うとしか思えないことを要請すんなよ、という思いともう一つ。
そんな自業自得でしかない怠惰な会社を救済する必要なんてないだろ。と思えてならなかった。
なんで、稲盛さんは引き受けちゃったんだ・・・と、そのときは率直に思った。
この日本航空が経営破綻するほんの1年半ほど前に、リーマン・ショックが起きている。
あのとき、巨大金融機関であるリーマン・ブラザーズの経営破綻による影響が危惧され、大方の見方は国が救済するだろうというものだった。
ところが、まさかの救済措置をとらないという結論になったため、これを機に世界的な金融危機、大不況へと発展することになった。
稲盛さんは、こういった巨大企業の経営破綻による甚大な影響を目の当たりにし、それによる多くの雇用問題なども考慮され、日本航空再建の要請を引き受けられたのだろう。
けれど、それ以上に日本航空が破綻し消えてしまうことで、業界の健全な競争原理が働かなくなることに懸念を抱かれたのではないか、と思う。
ぼくがそう思うのにも理由があるけれど、その話はまた次回。
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