経営本のスゝメ 8.
「本はコスパが良い」とよく言われるけれど、その通りだと思う。
執筆に要した時間という意味でなく、著者の貴重な経験に費やされた時間を想像すれば、コスパが良いなんてものじゃない。
多くの人に届くように、という意味で適正価格というのはあって然りだと思うけれど、個人的には本の価格を材料原価から考えるのはナンセンスだと思う。
だから先述のビジョナリーカンパニーをはじめ、ここで紹介した書籍が仮に5倍の価格であったとしても、ぼくは躊躇なく購入する。
後述するつもりでいるけれど、今の時代はどの職種にとってもかつてないほどの厳しい状況だと感じる。少なくとも食べもの屋さんやその職人さん、お店を経営されている人たちにとっては間違いなくそうだろう。
ぼくが店をやっていた時代を振り返ってみても、お店を維持継続していくのは今の方が遥かに難易度が高い。
だからこそ特に経営をされている人は、本を読む習慣のない人も読んでみてほしいな、と思う。
もちろん語彙も増えるだろうし、著者の考えを知ることでそれまで見えていなかったものがきっと見えるようにもなる。それは、自分の視野を広げるということでもある。
何よりも本を読めば読むほど自分の無知を知り、身の程を知ることになる。
それは自然と謙虚になることであり、そこにこそ価値がある。
また本当に良い本に出逢えたら、それが結果として実業や実益につながるものもある。それもこんな低価格で。
それほど本や活字には力があるし、その象徴的なものが経営本、ビジネス書だとぼくは思っている。
ちなみに、ビジネス書でも本屋さんで平積みになっていたり話題のものに目が行きがちになるけれど、必ずしもこういった最新のものでないとダメということもない。もちろん時事的な内容だと賞味期限があったりするので最新のものに限るけれど、こういったものほど中身の薄いものが多い印象がある。
例えば、小手先のセコイ節税を教えているような本は、法律が改正されればすぐに使えなくなる。こういった法の抜け道は、仮にあったとしても決まって埋められるのが世の常である。
ぼくがここで紹介してきた本は、いずれも最近のものでなくどちらかといえば昔のものになる。
利己的な政治屋のおかげで、毎年のように税法が恣意的に変更されている印象があるけれど、商売、ビジネスの本質や原理原則そのものは今も昔も基本的に変わらない。
だからこそ名著と呼ばれるような素晴らしい経営本は、色褪せることなく時代を超えて受け継がれるのだと思う。
つづく