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授人以魚 不如授人以漁

このタイトル、読める人いますか?


ぼくは、読めません。

話を進めます。

どれほど才能があっても独りでできることには限界がある。だからモノづくりにおいては、1人(や2人)でやる以上事業としてスケールすることはまずないとぼくは考える。
無論、善し悪しといった話ではない。
もしそれを目指すのであれば自分以外の手が必要不可欠なのだけれど、そのとき同時に必要となるのが「再現性」だと思っている。これを平易にいえば「仕組み」のことになる。

昔、パンの卸しでお付き合いのあったイタリア料理店があった。
そちらのシェフは当時かなり若かったけれど、とても才能溢れる人だった。
ぼくはいわゆる天才シェフというものを大抵眉唾に思っているのだけれど、もし本当に天才シェフがいるとすれば、彼のような人のことなんだろうな、と思っていた。

ある日、予約困難な日本料理屋さんへ伺うことができたことを彼に報告したことがある。
その料理屋さんは完全予約制のカウンター数席のみ。若いご主人がすべてを1人で切り盛りされていて、食通や評論家からも評価がとても高い話題のお店だった。
彼から感想を訊かれたぼくは、噂に違わない素晴らしい料理であったこと、その技術の高さに驚いたことなどを率直に伝えた。
そのときに言った彼の言葉が今でも忘れられない。

西山さん、自分で料理を作って数席のお客様を満足させることくらい、プロなら誰でもできるんですよ。ぼくは、1人ではできない何十人というお客様を毎日満足させるためにスタッフを指揮してやっているんです。オーケストラなんですよ。

目からウロコというか、以前から賢い人だなぁとは感じていたけれど、何げにこれ、名言じゃないですか。

シェフがすべてを1人でされているお店の方が、ともするとクオリティが高い印象を持たれがちかと思う。しかし、彼の言葉は多くのスタッフさんを率いて運営することの素晴らしさ、メリットを説得力を持って端的に言い表している気がする。
自分以外の手を借りながらあれだけ質の高い料理を提供されていたのだから、スタッフさんたちの有能さもさることながら、シェフには仕組みづくりの才能もあったのだと思う。
そんな彼も今では独立をして、1人で数席のお店をされているんだけれど。


仕組みづくりなどの重要さを語る際、「魚を与えるのではなく、釣り方を教えよ」というのがある。

授人以魚 不如授人以漁

元ネタは老子の格言らしい。いま知った。
人に魚を与えれば一日の糧となる。人に魚を捕ることを教えれば一生食べていくことができる。
ということなんだけれど、これは仕事や勉強、いろんなものに当てはまりそうだし、支援や寄付も同様な気がする。
わかりやすいことで例えれば、お金に困っている人にお金をあげるのでなくお金の稼ぎ方を教えた方が良いという考え方であり、つまりこれは自立のススメといえる。

「ビジョナリーカンパニー」という経営本のバイブルと称される名著がある。

ぼくの所有しているものが 2006年7月21日 1版 1刷 とあるのでその頃に読んだのだけれど、これがめちゃくちゃおもしろくてとても感銘を受けた。さすが名著である。
全編通して価値ある素晴らしい内容なんだけれど、第2章の初めにある「時を告げるのではなく、時計をつくる」という件が当時、特に印象に残った。

昼や夜のどんなときにも、太陽や星を見て、正確な日時を言える珍しい人に会ったとしよう。「いまは1401年4月23日、午前2時36分12秒です」。この人物は、時を告げる驚くべき才能の持ち主であり、その時を告げる才能で尊敬を集めるだろう。しかし、その人が、時を告げる代わりに、自分がこの世を去ったのちも、永遠に時を告げる時計を作ったとすれば、もっと驚くべきことではないだろうか。

すばらしいアイデアを持っていたり、すばらしいビジョンを持ったカリスマ的指導者であるのは、「時を告げること」であり、ひとりの指導者の時代をはるかに超えて、いくつもの商品のライフサイクルを通じて繁栄し続ける会社を築くのは、「時計を作ること」である。

ビジョナリーカンパニー

前述した老子の言葉と同義である。
そう思うと、格言となるような真理や原理原則は古今東西同じなんだろうな。

あ、書き忘れてた・・・「再現性」って大切ですよね、と。


シリーズは、5巻まであります


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