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ごめんなさい、耳くそ

ごめんなさい、


耳くそを食べたことがあります。


みんなが鼻くそを食べるような感じではありません。

信じてください。

その一瞬に全神経を注いだのです。


まずわたしは、鼻くそ・鼻水と違って粘性のない耳くそが気になりました。

小さい頃から耳垢がたっぷり出る方でした。

母はいつもピンセットを使ってほじりました。

ビロビロビロとでっかな耳垢がいくつもでました。

そういうタイプの耳でした。


ちなみに、あんまりにもでかいのが出るので母は

"耳垢、脳みそ説"

を提唱しています。

入り込みにくそうな耳に、何がそんなに溜まってこんなに黄色くさせているのでしょう。



わたしはおっきな採れたての耳くそを見て、ふと思いました


『ふりかけみたい』



カサカサした感じが、ふりかけを彷彿とさせたのです。

耳くそには、塩味があるのか…ちょっと匂うのか…苦いのか。

気になりました。


でも口にする勇気がありませんでした。

みんな鼻くそは食べるのに、耳くそは食べてないから。

先駆者になっちゃうから。


ああ、ウニを初めて食べた人ってこんな気持ちなのか

カニ味噌を初めて食べた人ってこんな気持ちなのか…



金曜日。

軍隊と同じ、金曜日は大体カレーが出ます。

そのまま口にする勇気がなかったわたしは

母の目を盗んで

耳に突っ込んだ小指をカレーの上で親指と擦り合わせました。


大漁でした。


いくら大漁でも、カレーの上では意味がないのです。


固くて芯のあるにんじんの味もかき消すカレーの上では、意味がないのです。


それでも当時のわたしは大きな満足感に包まれていました。


"耳くそを食べた"という事実に陶酔していました。




ごめんなさい。




それは本当に耳くそを食べたとは言えないから。


ほんと、すみません。

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