何かがおかしくて
明かりが灯る明日を期待して待つ夜の街で、暗闇を探し、足元を見失わないように歩き続けるような生活に、ひとつひとつ小さな歪みが浮かびあがり、今もう一歩踏み出したら、地面に飲み込まれてしまうのではないかと不安になるのに、早く飲み込んでくれと思う自分もいるくせ、友達が結婚したり、オリンピックで年下が活躍したり、小学生が他人を救ったりするのを見て、どうにかしたいと思い続ける自分が馬鹿らしくなる。どうにかしたいと思い尽くすほど、自分は何者でもないし、悲しくなくなるまで、人を愛したわけでもない。それなのに、急行に乗れたらちょっとラッキーだし、他人の子供の笑顔に癒されたり、人に褒められたり頼られたりするだけで、瞼がいつもより少し広めに開く。どれだけ地球が熱くなろうとも、太陽が今まで以上に活発になろうとも、新しい星座がどれだけ見つかったとしても、親戚がどんどんいなくなっても、世界に要らないと言われても、好きなバンドが新曲を出さなくなっても、生活は変わらない。
小さく小さく絶望していくのに、生活はそのままで。何かがおかしいとしか思えない。自分がおかしいのかも知れない、ただ気づいた、人は、今まで、にうるさいし、無いものに敏感で、自分が主人公だとどこかで思っている。心の設計図に、何かおかしいところがあるとしか思えない。