怖いから
拭えない不信感にじたばたしながらも
夜、電灯に群がる蝉の断末魔に怯え
いつもより大股に歩く信号機
自分の影の小ささに
トラウマになったサイレンと、
角のほつれた角砂糖
金色に見えたひまわりも実はちょっと汚れてんだな
先を競い合う空車のタクシーに
轢かれそうになりながら進む
合間にため息を挟みながら、
財布とケータイを落としてないか探す
考えてみればここまであっという間だった
ここにいるよと大きな声で騒ぐ若者を
かき分けながら進むのに
ここにいるなという速さで流れる時間には
まだ、逆らえずにいる
またひとつ、マスを進んでしまう
どれだけ自分で選ぼうと、
どれだけ意思で進もうと、
どうしても逆らえない時間に手綱を握られて、
自分で選んだ気になっている
そんな滑稽な生き方を、人は努力と呼ぶ