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かわいいおばあちゃんになりたい
「かわいいおばあちゃんになりたい」
これは、私のSNSのプロフィールにここ数年書いている一文。
世の中の大半の人にとって大きなライフステージとなる結婚や出産なども、まだ周りには多くはない20代半ば。
とにかく、おそらくあと60年近くこの世界に住むと思うと、
空白な60年間がこの先ずーっと続いているような
ポツンとした空虚な気持ちがそこにはある。
そんな私がやわらかく持っている自分の将来像が
「かわいいおばあちゃん」
SNSのプロフィールに書いた時の心情は覚えていないけれど、日々の生活の中でそう思う瞬間が何回もあったような気がする。
1月。大阪からの出張帰り。東京行きの新幹線のぞみで隣になったおばあちゃんに話しかけられた。
おばあちゃんは70代くらいで、私が乗車した時にはもうすでに窓際の指定席に座っていたから「おばあちゃん一人でだいぶ遠くまでお出かけするんだな」とうっすら考えたのを覚えている。前日に若干熱っぽかった私は、その時に体調は大丈夫であったものの、席に着くなり、目をつぶってしまった。名古屋を出発した際に目を覚ますと、お手洗いに行きたかったおばあちゃんが立ち、戻ってきた時に、話しかけられたのだった。
「富士山の写真を撮りたいのよね」
「何度か通っているけど、毎回わからないの」
話を聞いているうちに、どうやらおばあちゃんは大分に住んでいて、その日はおばあちゃんの好きな演歌歌手、竹島宏さんのディナーショーに行くとのこと。
Twitterのアプリは入れていないものの、ブラウザから竹島さんのツイートは見ているようだった。
おばあちゃんはスマートフォンでLINEを開いて、おともだちの紹介をしてくれる。この人はね、千葉県のどこどこに住んでいるの。この人はね、ツーショット写真を撮る時にはわざわざ着替えるのよ。「この人はね」と教えてくれる。
竹島宏さんに会えるのはもちろん、全国から集まる竹島宏さんファンのおともだちと会えるのも楽しみなおばあちゃんは、声を弾ませながらお話ししてくれる。
私もついつい話を聞くのが楽しくなってしまった。
なんだって、私も県をまたいで好きな人に会いに行く人間だから。
「つい最近、私も好きな俳優さんのイベントで東京から高知までいったんでですよ」とか「アイドルも好きで」とか話していたら、おばあちゃんも昔V6のファンクラブに入っていたり、私の好きな俳優やアイドルのことを見たことがあったりして、話が盛り上がってしまった。
話しながら「新幹線 富士山」と調べる。
どうやら静岡駅を過ぎたあたりで見えるらしいので、おばあちゃんとGoogle mapを見ながら、富士山を待つ。
「あ、見えましたよ!」
随分と前からカメラアプリを開いていたおばあちゃんは、スマホを窓に向けて写真を撮っている。
思っていたより、長い時間富士山を見えることができたし、こんなにワクワクしながら新幹線から眺めたのは初めてだった。
おばあちゃんは、東京プリンスホテルに泊まるらしい
事前にホテルに電話して、東京駅の丸の内南口のタクシー乗り場から乗ると良いと教えてもらったようで、私は乗り場までついて行くことにした。
多分、その手間にあった別のタクシー乗り場でも良いと思うのだけれど、おばあちゃんにうまく説明できなくて、丸の内南口のタクシー乗り場まで歩く。
おばあちゃんと歩きながら「将来こうなりたい!」と思った。いくつになっても好きな人に会いに行くという気力、体力、経済力。
こんなにも目を輝かせて、声を弾ませることが、この先の私にもあったら良いな。
おばあちゃんがタクシーに乗って出発した。
楽しんできてくださいねー!
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