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大人の火遊び

巷ではキャンプが流行っているらしいが、キャンプといえばなんと言っても焚き火である。

ちょっと前には、ただ「自宅以外の野外」としか思えないグランピングなるものがあると知ってひっくり返ったものだが、芸人のヒロシやコロナ禍もあって、クリーンでサニタリーなものとは対極にあるソロキャンプまで流行っているらしい。
どんなスタイルのキャンプにしても、焚き火のないキャンプはキャンプにあらず、焚き火をすることが目的と言ってもいいくらい、キャンプと焚き火は切り離せない。

YouTubeなどにも最小の道具だけで野営する動画がたくさんあって、それぞれに結構な視聴回数を取っている。ファッションと同じで、何年か周期で訪れるブームなんだろうが、山を買う人まで出てきているというから驚きだ。
いくらアウトドア好きでも山の管理まで背負って遊ぼうとは思わない。遊び方が多様化してるからって、山まで買うとは…と驚いたり感心したり忙しい。

以前はよくクソ重たいザックを担いで、キャンプ場に出かけていたものだが、心臓を悪くしてしまってからはザックを両肩にかけるのも難しくなってしまって、ご無沙汰になっている。
車でも持っていれば、荷台に荷物を放り込んで出かけられるだろうが、オートキャンプにはあまり興味がないし、林の奥のサイトまでは担がねばならないなら、結局は同じこと。指をくわえて動画を見ているしかないというわけだ。

それでもときおり、テーブルの脚にヘリコードを回してロープワークの復習をしたり、焚き火の火おこしの復習をしたりはしている。
使い潰したフライパンを焚火台がわりにガスレンジの五徳に置いて、その上で小さな火を起こす。
できるだけ少ない材料で、できるだけ早く種火を作る練習だ。

とはいえブッシュクラフトの動画にあるような、綿毛にスターターの火花を飛ばして種火を作るような面倒な真似はしない(もちろん木片に木の棒を差し込んでひたすら回すなんてこともしない)。
火を起こす遊びをするなら手に豆を作りながら火おこししようが、スターターをナイフの背でこすって火花を飛ばそうが「お好きにどうぞ」だが、過度にロマンティックな性格ではないからか、ロマンと実用を天秤の両側にかけると、どうしてもやや実用側に寄ってしまう。
そんなわけで身近にある材料で、いかに早く、確実に種火を作るかが目下の愉しみになっている。

はたから見れば危ない火遊びでしかないけれど、例えば大きな地震とか、自然災害でやむなく限られた場所で過ごさなければならないなんてことになったとき、アウトドア的な経験の有無はけっこう大きな差になる。
電気もガスも水道も止まったら、建物を除いた生活環境は、いきなり文明開化前に戻ってしまうのだし。
というような言い訳をして、ガスレンジの上で今日もささやかな火遊びは続くのであります。

(余談)
牛乳パックを洗って干しておくと、けっこう便利。食品用の素材だから安全な上に、ワックスを引いてあるので非常時には皿にもまな板にも、炭火を起こす時の着火剤にも使える万能選手。燃やしても丸めた新聞や段ボールみたいにカスが舞い上がらないので、キャンプ場のかまどの焚き付けなどには重宝します(切って開いて畳んでしまえばかさばらないし)。
くれぐれも火の扱いには気をつけましょう。

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