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机上整理

 ふと思い立って、作業机の上を徹底的に整理した。
 飽き性のくせに多趣味で、手を動かすのが大好物という厄介な性格なので、デスク周りはいつも散らかっている。
 工具類、彫刻刀、絵筆にアクリル絵の具、机上用のキャンバススタンド、トラベラーズノートのリフィルを作る材料、未使用の紙類、そんなものが散らかって不可思議な構造体を形成している。
 こんなカオスが良いはずもなく、何かを書こうとしても目線にいろんなものが入ってきては邪魔をする。
 ただでさえ気が散りがちだというのに、これではただでさえ少ない集中力がデスクに向かってるだけで削られる。
 そんなこともあって今日の徹底した整理に至ったというわけだ。

 書くに適した環境には個人差がある。
 僕の場合は目線の先に余計なものが入らない方がいい。
 目線が3〜5メートル飛ぶのは理想だけれど、日本の住環境でそれだけの距離で何も余計なものが目に入らないなんてのは病院の個室病棟ぐらいのもの。どうしたって生活感たっぷりの光景が目に入ってしまう。
 そうして余計なものが目に入るくらいなら、数十センチ先が白壁である方がよほどいい。

 机の上にあるものを仕分けて、不要なものはすべて処分し、悪癖の多趣味も書くことを最優先にして、道具類は別のところに移した。
 それでも「きれいさっぱり」というレベルには達しなかったが、これまでがこれまでだったおかげで随分と目の前がクリアになった。

 「一つのことに集中」と言ったところで、性格がそうそう簡単に変わるわけもない。始めることは大得意でも、続けることは大の苦手なのだ。
 とりあえず、すぐに気分転換できるように、ちょっとした道具は作業机の下の棚にまとめて残したけれど、いまはもうそれすら頭から抜けて、目の前に壁を立てるにはどうしたら良いかなどと考え始めている。
 ホームセンターで買ってくる角材はどの太さが良いか、柱を立てるにはどうするのがベストか、壁面はOSB集成材とラワン合板どっちが良いか、古材っぽく仕上げるには一枚板よりどこかの解体現場で廃材をもらってくる方が良いんじゃないか、オイルステインより自家製のステインの方が味のある色になるんじゃないのか等々。
 まったく気が抜けない。
 それでも整理する前と比べたら視界は良好で、書いていても疲れは確実に少ない。
 僕自身の性格の問題だと思っていたが、そのうちのいくらかは環境問題だったようだ。

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樹 恒近
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