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マラソン・セッション

マイルス・デイヴィスに「マラソン・セッション」と呼ばれる数枚のアルバムがある。
レコード会社を移籍するにあたって、契約上、あと4枚のアルバムをリリースしなければならず、マイルスはたった2日間で4枚分の曲のレコーディングを済ませたという(連続2日ではなくて、間は空いているそうだ)。
録音された曲はすべてワンテイクで、いまでいえばYouTubeの「ファーストテイク」を24曲でやったということだ。バンド5人のセッションで。

別にマイルスのすごさをここで語りたいわけではない(十分にすごいけど)。
このところの上がり下がりの激しい気温にやられて、どうにもぼんやりしてしまって、書くのはもちろん、まともに頭が働かない時間が多かった。
そんなこともあって、短い時間の中で立て続けに文章を書き、アップしようと考えたことが、マイルスのマラソン・セッションと結びついたわけだ。

こういったトレーニングはスポーツジムでボディシェイプをするときや、競技選手が試合に向けて調整するときには必ずといっていいほど行うものだ。
インタビューで「今は追い込んでいる時期」と話すアスリートの言葉を聞いたことがあるかもしれない。それと似ている。
同じようなペースで繰り返していると、体が慣れてしまって、それ以上のパワーが出ない(筋肉が大きくならなかったり、瞬発力が落ちたりする)。そんなこともあって、全体の工程の中のある時期、意図的かつ集中的にオーバーワークさせる。それを僕は文章書きのメカニズムのなかに組み込んで見たというわけだ。

ただ、これで身につくのはパワーの側面で、これではテクニカルなところは身につかない。文章を書く勢いへの耐性は上がるけれど、文章を構成する技術はまた別な方法で磨かなければならないということだ。
世の中、都合よく転がっていく方法などないのである。


(追記)
レベルは段違いに低くても、自分がやっていたからか、トップの選手の練習を見ていると、身の毛がよだつことがある。二人とも引退してしまったけれど、イチローにしても吉田沙保里にしても。
今は白血病からの復活に向けてステップを踏んでいる池江璃花子。自分が泳いでいたから、彼女の練習のしんどさは体感レベルで理解できる。テレビで見てるだけで吐き気を催すくらい。
才能だけでトップに立つ選手はいないよなあ、やっぱり。

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樹 恒近
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