不器用な母と素直になれない私
不自然なほど静かな車内だった。無言がつらい。すれ違う車のヘッドライトが地面に反射して、暗さを際立たせる。
「駅までどうやって行くの?お母さんに言わんで、どうするつもりやったの……。で、何時?」
念願のベトナムでの就職。いつもながら、ぶっきらぼうに母が送迎をかってでた。
「何時に着くの?」「忘れた」
「食べるもん買ってかんでいいの?」「うーん、いいわ」
言葉が出ない。本当はこんなこと言いたいんじゃないのに……。カチ、カチ、カチ……流れる風景が止まった。
「……ありがと。」
軽く