原稿用紙一枚分の物語 #4 『友』
ショックだった。
電話を持つ手が震えてとまらない。
ふと、背中に気配を感じた。
振り返ってみると、そこにはケントが立っていた。
五年ぶりの奇跡的な再会に目を疑った。
それでも「元気そうで安心した」と屈託のない笑顔で言う目の前の彼は、
まぎれもなくケントだった。
儀式的なたわいもない世間話をしたあと、ケントは突然真顔になった。
「どうして五年もの間連絡してこなかった。
裏切られたかどうかはオレたちが決めること。
そんなことよりも、本当にうれしかったんだ。
相談すらしてこないリョウが初めて頼ってくれて。
やっと親友なれたと実感できて。それなのに、
それから一切連絡がない。
どれだけ寂しかったか」
そう涙ながらに話した。
リョウは首を横に振りながら彼の言葉を聞いていた。
胸が痛かった。苦しかった。声を上げて泣いていた。
顔を上げると、もう彼の姿はどこにもなかった。
メールの着信があった。
ケントの告別式、葬式の知らせだった。