五葉/itsuha(イツハ)

毒親育ちの経験や生きづらさを書き綴っています。たまに日記のような詩も書きます。

五葉/itsuha(イツハ)

毒親育ちの経験や生きづらさを書き綴っています。たまに日記のような詩も書きます。

マガジン

  • 自由詩

    半分日記のようなもの

  • 毒親連鎖の断絶

    私は親のようにはならない。自戒を込めて。

  • 毒親育ちの弊害

    毒親に育てられた原体験、生きづらさの正体。自分にしか書けないことをありのまま。

  • 読書・映画の感想

    読んだ本や観た映画の感想をつらつらと。 ネタバレあるかもしれません。

最近の記事

荷解き

山積みのダンボールを煙たがる 必要なものばかり詰めたはずなのに なくても生きていけそうな気がしてくる このまま全部捨ててやろうか 裏側に十字の封をするのは強い祈りみたいだ 何を詰めたかなんて覚えてないよ 確かにさっきまでそこに在ったのに まるで隠した感情みたいに見えなくなった 箱を開けなくちゃ 全員の新しい居場所を探さなくちゃ ほんとうは捨てるつもりなんかないんだ ただ価値を忘れてるだけなんだ

    • 明晰夢

      深まる夜は泡沫の夢のよう 暗闇はすべてを隠すから 私は無防備で、大胆で、わがままになる いつの間にか夜が明け 薄いレースカーテン越しに光る金色 眠りから醒めた私を必要以上に照らす 昨夜の恥が浸食されていく べつにいいじゃない、独善的だって あの人が呟いた言葉を愛と受け止めたのは 明晰夢だったことにして

      • さっきまで浅瀬にいたはずなのに どんどん深みにはまって 眼前の渦に飲み込まれそうになっている 嫌なことを思い出した夜は 記憶がなくなるまで酔うだけ 過去から解放される方法を他に知らない 明日は快晴 電磁波でこの地はすべて初期化される 現実から幻想の中へ消えていくあなた 私は渦の裏側から生還して 何もなかったかのように渚で眠る 波音のする太陽の下で

        • Tへ

          あなたがこの世を去って4か月が経ちました。 今は10月の終わり。金木犀は早々と散って、ようやく始まった秋です。 今年の梅雨入りは随分と遅くて、あなたがいなくなった数日後にやってきました。 梅雨入り前の、蒸し暑い月曜日。 私が、更新された運転免許証を取りに行く予定だった日。 あなたは、自宅前に停めた車の中に灯油を撒いて、 火炙りになって死にました。 もう何年も会っていなかった。 最後に会ったのはたぶん成人式で、 言葉を交わしていないはずはないのに、覚えていない。 私が覚え

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        • 自由詩
          2本
        • 毒親連鎖の断絶
          8本
        • 毒親育ちの弊害
          5本
        • 読書・映画の感想
          5本

        記事

          「どんな自分も大切にすること」ジェンダーにとらわれない生き方を目指す

          LGBTという言葉が広がって、ジェンダーやセクシュアリティについて考える機会が増えました。性的マイノリティの人たちは多少生きやすくなった部分があるでしょうし、私もその一員です。 実のところ、私はLGBTでいうとBのバイセクシャルに該当します。恋愛感情も性的志向も、男女どちらにも向けられます。好きになるのに性別は関係ありません。ただ、どちらかといえば、恋愛感情は男性に、性的志向は女性に向けられることが多いような気がします。   性には4つの指標があると言われますが、私の場合、現

          「どんな自分も大切にすること」ジェンダーにとらわれない生き方を目指す

          「本当の母じゃない」授業参観で蘇る母との記憶

           今日は小学1年生の娘の授業参観日。  授業参観と聞くと、苦い思い出が蘇る。  私が小学校3年生の授業参観前日のこと。  母は私と弟の授業を両方見なくてはならず、夕飯中に面倒くさいとぶつくさ文句を言っていた。  その日はとくに機嫌が悪かったのだろう。ご飯を食べているあいだはしゃべってはいけないといつも厳しく注意する母が、自分のことは棚に上げてぐだぐだと文句を言うのに嫌気が差した。そこで、私はとっさに言ってしまったのだ。 「どうせ本当のお母さんじゃないんでしょ、だから私の授

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          【映画感想】林眞須美は無実かもしれない/和歌山毒物カレー事件『Mommy』

           キッチンの換気扇の下、タバコを吸う男性。  まるで煙を吐くことを知らないかのように、ニコチンの毒を極限まで吸って吸って吸って吸う。口からタバコを離すのは一瞬だ。吐き出されない煙はすべて、体内に吸引されていく。吸われるたびに点滅する火が、タバコを挟んだ指に近づく。  この独特な喫煙シーンは、彼の孤独と焦りを表しているようだ。強制的に課せられた死刑囚の息子という宿運——。  先日、『Mommy』を観た。和歌山毒物カレー事件のドキュメンタリー映画だ。ポスターに書かれた「母は、無

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          【読書感想】人間の欲望や罪と罰/花房観音『京に鬼の棲む里ありて』

          花房観音さんの新刊『京(みやこ)に鬼の棲む里ありて』は京都を舞台とした時代小説だ。 実のところ、時代小説はあまり好んで読まない。藤沢周平作品をいくつか読むくらいだ。ただ、今回は好きな作家である花房観音さんの小説ということで、発売を心待ちにしていた。 本作には6つの短編が収録されているが、そのうちの3つについて感想を書き留めておく。 鬼の里 ときは室町時代。主人公の「かや」は京都の北東にある八瀬の里で、夫の千太と暮らしている。八瀬の里に住む者は鬼の子孫と呼ばれており、延暦寺

          【読書感想】人間の欲望や罪と罰/花房観音『京に鬼の棲む里ありて』

          私の記事が実話ナックルズnoteに掲載されています。 読んでいただけたら嬉しいです。 【前編】 https://note.com/jitsuwa_knuckles/n/na1bc6473d976 【後編】 https://note.com/jitsuwa_knuckles/n/nb24c12427643

          私の記事が実話ナックルズnoteに掲載されています。 読んでいただけたら嬉しいです。 【前編】 https://note.com/jitsuwa_knuckles/n/na1bc6473d976 【後編】 https://note.com/jitsuwa_knuckles/n/nb24c12427643

          女という足枷に縛られた私の生きづらさ

          まともじゃない恋愛 20代前半の頃、ろくでもない男たちと付き合っていた。 バイトを掛け持ちして実家暮らしを続けるパチンカスのフリーター。 顔も頭も良いのに男尊女卑の考えが染みついた薬学部の男。 路上教習中にナンパしてくる20歳年上の自動車学校の教官。 妻との離婚をほのめかしながら、不倫関係を迫ってくる会社の同僚。 朝から晩まで人の家でオナニーを繰り返すモラハラストーカー男。 こうして書き出してみると、自分の恋愛遍歴があまりにもひどすぎて笑えてくる。 なぜ、どうしよ

          女という足枷に縛られた私の生きづらさ

          タイムカプセルの埋め直し

          私は、2024年の4月からこのnoteで過去と現在の自己開示をしている。 それは「自分の棚卸」をして、「他の人が言っていないこと」で「自分にしか書けない」ことが、毒親育ちの子育てだと気づいたからだった。 私が受講しているライティング講座の講師が、そのことに気づかせてくれた。 そして、実話ナックルズnoteに私の書いた記事が掲載されることになった。 自分の幼少期の経験を、ありのままの記憶と感情で書いただけの、内省文。 記事を読んでくださったうちの一人が、私を含めた講座生の一

          タイムカプセルの埋め直し

          わたしが一番毒親だったとき(後編)

          ※前編はこちら 保育園の入園が決まって、パートを始めたのは娘が3歳になる年だった。 前職は土日の出勤もあり、残業も多い会社だったので、産休などは使わず出産前に退職をした。 保活のために就活をして、3社に内定をもらった。その中でも勤務時間が17時までと短く、自宅と保育園から一番近い、自転車で送迎できる距離の会社を選んだ。とある中小企業の、パート事務だ。 この会社が、かなりのブラック企業だった。 仕事が終わらないと休日出勤、持ち帰り残業は当たり前。社長はワンマン、上司は「や

          わたしが一番毒親だったとき(後編)

          わたしが一番毒親だったとき(前編)

          娘は、手のかからない赤ん坊だった。 母乳が出ない私に文句もいわず、ミルクをがぶがぶ飲んだ。 がぶがぶ飲んでも吐き戻すことはめったになかった。 私に似て少し肌が弱く、生まれたのが夏だったのでいつも汗疹に悩まされたりはしたが、成長曲線はずっと平均値。生育は順調だった。 私には年子の弟と10歳年の離れた弟がいて、一番下の弟が生まれたのは私が小4の夏休みだった。未熟児で生まれた弟は手がかかる赤ん坊だった。とにかくよく泣いた。睡眠不足で参っている母の代わりによく世話を買って出た。抱っ

          わたしが一番毒親だったとき(前編)

          【読書感想】生き地獄を語る女性たちの前で私はこの言葉を言えるのか/中村淳彦『私、毒親に育てられました』

          出産後、自分が毒親育ちで、毒親は連鎖する傾向があると知ってから毒親本を読み漁ってきた。 実際に我が子に対し、憎き母親と似た言動を取っている自覚があった。血の繋がりが恐ろしかった。 毒親育ちと毒親連鎖に沼りかけていた自分の経験を、noteで書き始めてから数か月経った。書き始めたきっかけは、ノンフィクションライターの中村淳彦さんのVoicyを聴き、著作を読んだからだ。 今回は、中村淳彦さんの著書『私、毒親に育てられました』について、うまくまとめられず書きかけのまま放置していた

          【読書感想】生き地獄を語る女性たちの前で私はこの言葉を言えるのか/中村淳彦『私、毒親に育てられました』

          この家がいつも安心して帰ってこられる場所であるように

          「ママは小学校好きだった?楽しかった?」と小学生になった娘に聞かれた。 「好きだったよ、楽しかったよ」と私は答えた。 「ママは家が嫌いだったから、学校がとにかく好きだったよ」と。 小学校から高校までの12年間、学校を休んだことがない。 義務教育期間は早退と遅刻もないから9年間皆勤賞だ。高校は皆勤賞とはいかなかったが、欠席は一度もない。人に話すと、結構驚かれる。 私が小学生の頃はまだ、土曜日は月に何度か午前だけ授業があった。 だから、学校に行けない日曜と祝日、長期休みが大大

          この家がいつも安心して帰ってこられる場所であるように

          親を捨てて、田舎を出て、自分の力で生きたい

          私は東北地方の、人口6000人にも満たない田舎で生まれた。 公共交通機関はバスのみ。それも1時間に1本あるかないか。一車線の国道を通るバスは、雪が降ると平気で3時間は遅れる。 保育園、幼稚園、小学校、中学校はそれぞれ1つだけ。 いまだに、隣町まで行かないとスーパーはない。ドラッグストアも本屋もない。あるのは役場と簡易郵便局と農協と、寂れた飲食店だけ。初めてコンビニができたのは中学2年のときだ。1件のコンビニが、地元住民の唯一の溜まり場だった。 盆地なので夏は風が抜けていかず

          親を捨てて、田舎を出て、自分の力で生きたい