ピンヒールと自分のマメさ|私にはハイヒールはまだ早い
ヒール、特にピンヒールというものに、小さい時からあこがれていた。
特に、働く女性がヒールをコツコツ言わせて闊歩するシーンを映画やドラマで見るたびに、私も将来こうなるぞとわくわくどきどきしたものだ。
そのまま大きくなった私は、勤務日は細いヒールのかっこいいパンプスを履くぞという夢をもち、それを夢見て就職活動を乗り切った。
就職活動中はもちろん細いヒールのパンプスは履けず、いわゆるリクルートパンプスを履いていた。
就職活動を終えた私は、7センチの細いヒールのパンプスを履いて、かっこいい鞄を持って、都内を闊歩する社会人ライフに胸を膨らませていた。
お金がたまったらどのブランドでパンプスを買おうか、どんなデザインが自分に似合うか考えては楽しんでいたものだ。
だが、その時の私は知らなかった。ハイヒールというものは、メンテナンスが大変だということを。ヒールの底が擦り切れるので定期的に修理に出して、底のゴムを替えてもらい、補強してもらうのだ。
そして、私はこの擦り切れがすぐに起きる。
歩き方が変なのか、姿勢が悪いのか、ヒールの減りが速い。すぐにヒールが剥げてきてしまい、かつかつという音がしてきてしまう。
外回りも多い私は、月に一度はヒールのメンテナンスに行かなくてはならなかった。1回1回は短時間かつ費用も高額ではないが、ちりも積もればなんとやらで、だんだんとハイヒールのパンプスで勤務を続けることが厄介になってしまった。
いまでは低いチャンキーヒールを履いている。歩きやすいし、急いでいるときはヒールを気にせず思い切り走れるし、何よりメンテナンスの頻度がぐっと減った。お金も時間も、心理的な負担も大きく軽減された。
都内に出てきて、社会人になって、社内や街で多くの働く人を見る中で、かっこいいお仕事靴は、細いヒールのパンプスだけではないことを知った。
スニーカーを合わせても素敵だし、ローファーだって素敵だし、チャンキーヒールだって素敵。ヒールのないぺたんこタイプだってコーディネート次第でかっこよく、しっくり決まる。
今は営業職なので、基本的に毎日パンプスを履いているが、かっこいい靴というものはパンプスだけではないということを知った今、勤務中は絶対パンプスというこだわりもなくなった。
選択肢も増えて、ファッションの楽しみも増えた。雨の日に足がびちょびちょになることも少なくなった。
こだわりをなくすことで、障壁が減って選択肢が増えて、楽しくなった。
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ハイヒールを履くということ、ハイヒールを美しくかっこよく身につけるということは、立ち姿、歩く姿もそうだが、ハイヒールのメンテナンスを定期的に行えるマメさというものが求められるのだ。
そして私には、それはまだ早かったのだ。
いつかまたハイヒールに挑みたい。とっておきのパンプスと、信用する修理屋さんと一緒に、かっこよくうつくしいヒールライフを送りたい。立ち姿、歩く姿、着脱を美しくできるよう意識することから始めよう。