第六章 「人は天国に行かなくてはならないッ!」
こんな寓話を聞いたことがある。
ある日、クモがハエに向かって
「僕の部屋に遊びにおいでよ」と誘った
クモはとても優しく友好的に見えたが、
そのクモの目的は、
一緒に遊ぶことではなく
そのハエを腹一杯に食べることだったのだ
そう。メンヘラも同じだ。
彼らは、あなたの弱みや優しさにつけこんで
頼み事を引き受けさせようとしてくる
あなたの弱い心や
プライドをくすぐるのも常套手段だ。
…え?
なんで僕が同棲中の家賃を
全額払わされていたかって…?
もちろん交渉はしたさ。
君は、前の章に出てきた
穴の空いた壁の写真は見たか…?
まあ、焦りは禁物だ。
ちゃんと順番に全部話すから
そこに座って大人しく聞いていなさい。
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これはあくまで僕の推察だが
当時彼女には、相当額の借金があった
確証はないが、黒よりの黒だと踏んでいる。
医療系の職業についていながら
ランチ代、タクシー代、家賃、光熱費、食費
彼女が財布を出すそぶりを一瞬も見たことがない
誕生日プレゼントやクリスマスプレゼントは
何をもらったかすら、覚えていないほどだ
当時の僕には理解ができなかったが
呪いが解け冷静になった今なら分かる。
ヤツは黒だ。
僕は、考えれば考えるほど
ヤツの正体が知りたくなった
そう思わせること自体が、
ヤツのスタンド能力だということは
十分に理解していた。
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最近、
彼女の昔の交際相手と話す機会があった
彼は夜通しのスタンド攻撃を連日浴び続け
鬱病を患ったのち、病院送りにされていた
「今はとっくに退院して
別の彼女と幸せに暮らしているよ
あの時のことは思い出したくない」
「まあ、軽い傷害事件だもんな」
僕は冗談まじりで笑ったが、
彼の表情は依然、固かった。
「あ、ごめん、中条あやみ見て元気だす?」
「いや、大丈夫。ありがとう。」
控えめに言って、雰囲気は最悪だった。
ただ間違いなく、分かったことはある。
ヤツはスタンド使いであり、犯罪者だ。
これ以上の詮索は危険だ。
僕まで病院送りにされては笑えない。
もう、やめよう。捜査は打ち切りだ。
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この時の僕はまだ、
まさか僕が、
探偵にストーカーをされることになるなど
夢にも思っていなかった。。
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とうおるるるるるるるるるるる
とうおるるるるるるるるるるる
ガチャッ
「はい、もしもし〇〇です」
「〇〇不動産の〇〇です。
新居のご契約の件でお電話しました。
今お時間よろしかったでしょうか?」
し、新居だと、、!?
意味がわからない。
俺の周りだけ、時が加速しているのか。
呑気に素数なんて数えている場合じゃあない。
プッチ神父もびっくりだ。
いや、待てよ。おかしい。
一人につき、スタンド能力は一つのはずだ。
こいつは吉良吉影の生まれ変わりなのか?
それとも、設定自体が歪んできているのか?
ただでさえ、存在がバグなのに
スタンド能力までバグっていては
一般人では、到底太刀打ちできるはずがない
せめてキャラ設定くらいちゃんとして欲しい
いや。そうか、分かったぞ。
俺がいま、必死に生きている
このイカれまくった世界線に
荒木先生なんて、そもそも存在しないのか…!
や、野郎、、チキショウ、、、!!
「今忙しいのでまた後日お願いします。」
ガチャ
一体、ヤツの頭の中はどうなってやがる。
花京院がいるなら
真っ先に脳内を調べてもらいたいものだ
もうやめよう!! 茶番はおしまいだ!!
決着はつけるっ!!!!
「因果」を未来へ持って行く事は
決して出来ないのだっっ!!!!!!!
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その晩、
僕は文面で理由とともに別れを告げた。
電話だといつものスタンド攻撃を受けるのは
火を見るよりも明らかだったからだ。
別れたい?バカなのか?
寝言は寝ていえ。前にも言ったはずだぞ。
鬼電が4時まで続いたが
僕はこの晩、携帯を風呂場に置き
ベッドで酒を飲み、ゆっくり寝ていたため
全く問題はなかった。
眼には眼を、
スタンド能力にはスタンド能力を、だ。
こうして僕とメンヘラちゃんは
しばらくの休戦期間へと突入するのであった。
いま振り返ると、
この期間が一番幸せだったのかもしれないな。
to be continued…