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そういえば「憑依型」だった



再び物語を書き始めたことで、QOLが爆上がりしているこの頃。創作をしていると、心が潤うのを感じる。

それと同時に「物語の世界に没頭しすぎて現実世界に戻れない」感覚を思い出したので、ここに記したい。

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登場人物の心情や物語の展開を考えていると、その世界に沈んでゆく感覚がある。

物語を書いていないときにもぼーっとして、心ここにあらず、の状態へ陥るのだ。

こんなふうに、物語の世界へ分け入っていくのは久しぶりのことだった。

特に出産後は【日常生活】を送ることに必死。いつでも現実ばかりを生きていたように思う。

でも、たった数年前まで、このような生活が当たり前にあった。舞台俳優の現役時代だ。

私は「憑依型」と呼ばれるタイプの役者だった。役を演じていると、役と自分との境界線がどんどんなくなっていく人のことだ。

私の場合、それが顕著で、役を演じている期間は無自覚のうちに、服装の好みや話し方が変わったりした。

一度だけ、舞台で男役をしたときのこと。
お風呂に入った際、鏡に映る自分の姿を見て、「そういえば私は女だった」と気づいたことがあった。

その役を演じていたときには、生理も止まっていたのだった。

20代半ばからはそういったことも少なくなってきたが、稽古が佳境になればなるほど、演じる役と自分との境界線が薄くなっていくのを感じていた。

楽屋で鏡の前に座ると、そこに映っているのは自分ではなかった。かなり深刻な役を演じたときには、鏡の向こうから役が話しかけてきたこともあった。

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物語を書くときも、登場人物に憑依するような感覚がある。

とはいえ、母親となった今では、否応なく現実に引き戻される。

それに、物語を書くのと役を演じるのとでは、視座が違うようだ。物語を書いていても「自分が自分でなくなるような」あの感じはない。

しかし、その世界に没入して、気づけば現実ではなく、「あっちの世界」に足を踏み入れている。

これは、創作をする人なら誰しも経験する普通のことなのかもしれなけれど。

皆さんはどうなのか、ぜひ聞いてみたい。​​​​​​​​​​​​​​​​

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糸崎 舞|カルチャーライター
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