歴代日本ダービー馬の子孫は、どれほど現存するのか?②(第21代~第40代ダービー馬編)
はじめに
過去に日本ダービーを勝った馬たちの血が、現在の競走馬の血統にどれほど残っているのか検証する記事、今回がpart2です。
今回は第21回~第40回ダービー馬(1954年ゴールデンウエーブ~1973年タケホープ)編です。
前の記事を読んでいなくても理解できる内容にはなってますが、検証方法が記載されているpart1の冒頭だけでも読むことをおすすめします。
検証結果(第21回〜第30回ダービー馬)
それでは、早速検証結果に移ります。まずは第21回~第30回ダービー馬まで。
全体的に数字が非常に低調です(参考までに、第8回ダービー馬クモハタは100頭、第20回ダービー馬ボストニアンは228頭)。
これには尤もらしい原因が考察できます。
というのも、戦時中から滞っていた競走馬の輸入が1952年に解禁され、それ以降に多数の種牡馬が国外から輸入されるようになったからです。
例えばライジングフレームやヒンドスタン、ソロナウェーといった、後にリーディングサイアーに輝く種牡馬たちも1950年代に輸入されました。
従って、1950年代以降の日本ダービー馬(及び内国産種牡馬)たちは、輸入種牡馬偏重のあおりを受けて子孫を数多く残せなかったと推察されます。
種牡馬輸入の歴史に関しては、下記の資料が詳しいです。
https://www.b-t-c.or.jp/btc_p300/btcn/btcn95/btcn095-01.pdf
そんな背景を踏まえつつ、2020年に15頭の子孫が生まれているコダマについて見ていきます。
この15頭の内の殆どは、コダマ自身の娘から広がった牝系から生まれています。以下はその牝系の例と、各牝系から2020年に生まれたコダマの子孫の頭数です。
・タマコダマ牝系→タイセイヴィゴーレなど4頭
・ヤマトサトル牝系→マリノフェアレディなど3頭
・ヒダカチェリー牝系→カビーリアなど5頭
タマコダマの牝系は近年では2008年東海S馬のヤマトマリオを輩出しており、また、ヒダカチェリー(1977年桜花賞馬インターグロリアの母)の牝系からは2022年毎日杯2着馬のベジャールが生まれています。
未だ活気のある牝系の祖先としてその名を残しているコダマですが、逆に考えると、自身の娘を介してしか血を残せなかった(有力な後継種牡馬を残せなかった)とも言えるかもしれません。
次に、ヒカルメイジについて見ていきます。
2020年に生まれたヒカルメイジの子孫数は8頭と少なめですが、その中にはラミアストラーダといった中央勝ち馬も存在します。
この馬の場合は、ヒカルメイジの子孫である1978有馬記念馬カネミノブを介して血が受け継がれた形ですね。
第21回~30回ダービー馬の中で、2020年産駒9代血統表に馬名を確認できたのは、コダマとヒカルメイジの2頭のみでした。
調べたところによると、「ダイゴホマレの血を継ぐ繁殖牝馬が現存する」との情報も目にしましたが、出典不明でいつの話なのかも分からず。
少なくとも私の今回の検証においては、ダイゴホマレの子孫は発見できませんでした。2020年産世代ではなく、もう少し前の世代を対象として検証を行えば、また違った結果を得られるとは思いますが。
因みに余談ですが、第28回ダービー馬ハクシヨウの子孫は確認できませんでしたが、1924年生まれの初代ハクシヨウの子孫は2020年に5頭生まれていました。
その5頭いずれも、初代ハクシヨウの子孫であるアイネスフウジンを介して血が繋がっていました(逆に言うと、アイネスフウジンの子孫が2020年に5頭しか生まれていないということでもありますが)。
検証結果(第31回〜第40回ダービー馬)
次に、第31回~40回優勝馬の子孫について見ていきます。
引き続き低調な数字が見られる中で、シンザンの28頭がひときわ目立ちます。
2020年に生まれたシンザンの子孫の代表としては、2022年鎌倉記念馬のヒーローコールが挙げられます。羽田盃では2着に敗れたものの、今年の3歳ダート路線でトップクラスの1頭であることに変わりはないでしょう。
また、シンザンの血を継ぐ現役繁殖牝馬としてはメイショウマンボや、牝馬ダート戦線で活躍したメモリーコウの母メモリーキャップなどもおり、シンザンは現在においても一線級の子孫を競馬界に送り出しています。
この表で次に数字が多いのはタニノムーティエ。
多いといっても、2頭ですが(フォルメノス、イテマエバファロー)。
この2頭はいずれも、タニノムーティエの娘であるヤノセイランから広がった牝系に属しています。
この牝系からはタニノムーティエの子孫が毎年1~4頭ほど生まれており、彼の血を現代に繋げる重要な役割を果たしています。
またヤノセイランの牝系ですが、トウカイテイオーの父系を繋ぐ現役種牡馬であるクワイトファインもここから生まれています。
クワイトファインは2020年から種付けを行っているため、翌2021年からは彼を介したタニノムーティエの子孫も生まれ始めています。
ここからは完全に余談です。
「AT対決」と称されタニノムーティエとライバル関係にあったアローエクスプレスですが、2020年には53頭もの子孫が生まれています。
同年代のダービー馬たちの数字と比べると、破格であることが分かるかと思います。
またその子孫の中には2022年に門別の栄冠賞を制したコルドゥアンや中央勝ちのバトゥーキなどもおり、数だけでなく質も高めです。
更に、過去にヒガシウィルウィンやタイニーダンサーを輩出しているキハクの牝系にもアローエクスプレスの血が入っており、彼の種牡馬能力の高さが窺い知れます。
内国産種牡馬不遇の時代にリーディングサイアーを獲るのも納得できる種牡馬能力です。
閑話休題、第31回~40回ダービー馬の中で、2020年産駒9代血統表に馬名を確認できたのは、シンザンとタニノムーティエの2頭のみでした。
その他のダービー馬の血が現在まで繋がっていない理由としては、単に目立った産駒や子孫を残せなかったというケースが多いように思われます。輸入種牡馬の割を食った影響が大きそうです。
おわりに
今回は全体的に子孫数が低調でしたね。実はここから更に後の年代になってくると、内国産種牡馬に対する評価も変わったのか、また徐々に数字が盛り返していきます。
従って今回出てきた日本ダービー馬たちは、ちょうど冬の時代を生きたと言って良いでしょう。
そんな中で、未だにある程度の数の子孫を世に送り出しているシンザンは、まさに別格。三冠馬の凄さを、改めて実感できるかと思います。
今回はここまで。第41回以降優勝馬については、また続編の記事で触れていきます。
なお、本記事の内容はあくまで私個人で調査、分析したデータに基づくため、提示した情報には誤りが含まれる可能性があります。何卒ご容赦ください。