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キズナ産駒の母馬の変質について

さて、今年の日本ダービーも終わりを告げました。今年のクラシック戦線を振り返ってみると、とにかくキズナ産駒の強さが一際目立ちましたね。

悲願の牡馬産駒GⅠ馬のジャスティンミラノを総大将に、ライトバックやタガノエルピーダなどがGⅠで活躍。また、シックスペンスやクイーンズウォークといった大物感溢れる馬も多数登場し、牡・牝ともにクラシック戦線を盛り上げました。

今や父を国内リーディングサイアーにまで押し上げた絶好調の3歳世代ですが、これまでのキズナ産駒とは血統的に明らかに違う傾向を見せているため、この記事で紹介していきます。


母馬の変質について

では、3歳世代キズナ産駒はこれまでと何が違うのか。一言で言うと、「母馬の生産地」です。まずは下の表を見ていただきましょう。

2020年以前産のキズナ産駒(2024年6月2日現在の国内獲得賞金TOP15)

上表は2020年以前に産まれたキズナ産駒から、2024年6月2日時点での国内獲得賞金額TOP15を抽出したものです。表の「母産地」「母戦績」欄で赤文字になっているものは、海外で産まれた/現役時代に海外で走っていたことを示しています。

上表を見ると、牡馬産駒の総大将ディープボンドや、GⅠ馬のソングラインやアカイイトを筆頭に、国内で産まれて国内で走った馬の産駒が活躍馬の大半を占めていることが分かります。

一方で、2021年に産まれたキズナ産駒は全く違う傾向を示しています。

2021年産のキズナ産駒(2024年6月2日現在の国内獲得賞金TOP15)

真っ赤ですね。一目見て、輸入牝馬の産駒が活躍馬の大半を占めていることが分かります。米国から欧州、南半球まで、世界中から日本に集められた牝馬にキズナが付けられていますね。

この表から、端的に「キズナに集められた繁殖牝馬の質が上がった」と言っても過言では無いでしょう。
これは決して「日本馬 < 海外馬」ということを言っているのではなく、「国内良牝系は大抵、既にサンデーサイレンスの血が入れられている」という、サンデー系種牡馬のジレンマ故に、ハイレベルな繁殖牝馬を求めるなら自然と海外からの輸入牝馬に行き着くことが論拠です。


原因について

じゃあ、何故このように繁殖牝馬の質が変化したのか。下表がその考察の一助になるかと思います。

ディープ・ハーツ・キズナの種付数推移と、キズナの種付料推移

上の表は、ディープインパクト・ハーツクライ・キズナの種付数の推移と、キズナの種付料の推移を表した表となります。
因みに、黄色で着色しているラインが、今回話題に挙げている2021年産(2020年種付け)世代となります。

この表から、キズナの繁殖牝馬の質が上がった要因は下記の2点と考えられます。

①ディープ・ハーツに集められていた繁殖牝馬がキズナに回ってきた(外的要因)
②初年度産駒の活躍により、キズナ自体の種牡馬評価が上がった(内的要因)

まず①についてですが、背景として2019年にディープインパクトが逝去し、2020年にハーツクライが種牡馬を引退したことがあります。
サンデーサイレンス直仔である彼らのために、サンデーの血を持たない有力輸入牝馬が多数用意されており、それらの一部が2020年の種付けからキズナに回ってきたと考えることができます。

次に②について。キズナ産駒は2019年にデビューしましたが、2歳戦から怒涛の活躍を見せ、ファーストシーズンサイアーに輝くとともに、2歳リーディング自体もディープインパクトに次ぐ2位に付けました。

仕上がりの早さと芝・ダート問わない活躍、アベレージの高さなど多数の魅力を見せつけながら最高のスタートダッシュを決めたキズナは、翌年(2020年)の馬産シーズンは当然評価を上げ、上表にもある通り種付料・種付数ともに大幅アップを果たしました。

このように外的要因である①と、内的要因である②のタイミングが重なった結果、2020年から繁殖牝馬の質が急上昇したことで、今年の3歳世代の大活躍にも繋がったと考えることができます。


以上を踏まえて再度2021年産駒を見る

では以上を踏まえて、2021年産キズナ産駒の母馬について再度見ていきましょう。

2021年産キズナ産駒の母馬が過去にどの種牡馬を付けられていたか

上表は冒頭でお見せした、2021年以前に産まれたキズナ産駒のうち、2024年6月2日時点での国内獲得賞金額TOP15を抽出したものですが、各馬の母が過去2年にどの種牡馬を種付けされていたのか表に付け加えてみました。

種付けされたものの受胎しなかった種牡馬まで記載しているので不格好な表になっていますが、2021年産キズナ産駒の活躍馬の母には、過去にディープインパクトやハーツクライに種付けされていた馬が多いことが分かります。

特にジャスティンミラノの母マーゴットディドは、キズナに種付けされるまではディープ・ハーツのみが種付けされており、まさに今回の記事の内容を象徴する1頭のように思えますね。


おわりに

さてクラシックも終わり、いよいよ2歳戦のシーズンが始まった訳ですが、世代最初の新馬戦をキズナ産駒のダノンフェアレディショウナンザナドゥが強い内容でワンツーを飾り、2022年産世代キズナ産駒の活躍を予感させています。

では、このままキズナ産駒の天下が続くかと言うと、必ずしもそうとは断言できません。何故なら、2023年産世代からはコントレイル産駒が登場するためです。
キズナと同じディープインパクト産駒であるコントレイルはこれ以上ない競合相手であり、当然、同系統の繁殖牝馬を奪い合う関係になるかと思われます。

とはいえ今年の3歳世代での活躍を受けて、来年はキズナの種牡馬としての人気が更に上がるでしょうし、一定レベルの繁殖牝馬は確保できるでしょう。
今年の世代を目の当たりにして2025年に種付けされた世代がクラシックを迎える2029年に、キズナ産駒たちがどのような活躍をするのか、注目です。

そして、現時点でキズナはディープインパクト系で最も活躍している種牡馬です。偉大な名馬の父系を繋ぎ、繁栄させていくことができるのか、見守っていきましょう。


以上で本記事は終わりです。私の拙筆をここまでお読みいただき、ありがとうございました。

イトカワ

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