【Team Haneen】チャリティグッズ秋冬物発売のお知らせと、この機会にお話ししたいこと。
このたび【Team Haneen】より、新作のチャリティグッズとして、スウェット、パーカー、ロングTシャツなど、秋冬物の販売を開始しました。
これにともなってみなさんにお伝えしたいことと、この機会にお話ししたいことがあり、少し長めの文章を書きました。
内容は、主に以下のとおりです。
①秋冬物を作ることには、ためらいがありました。という話
②【Team Haneen】がチャリティグッズを作る理由
③糸川個人の、個人支援についての考え方
④おまけ:今日からできること
①②は、プロジェクトの運営に携わるメンバーやハニーンさんと話してきた内容をもとに書いた文章ではありますが、あくまでも「それらをふまえての糸川個人の見解」であり、「チームの総意」ではありません。(ハニーンさんの呼びかけに賛同して集まったみんなが、それぞればらばらの個人のままでやっているプロジェクトなので、がっちりした総意のようなものはないのです)
本題に入る前に、【Team Haneen】とはなんぞや? という方へ。
当プロジェクトは、ガザにいるハニーンさんと彼女をサポートする日本のメンバーが立ち上げたチャリティ企画です。
ハニーンさんについては、こちらのインタビュー記事をお読みください。
プロジェクトの詳細については、他サイトで申し訳ないのですが、こちらの投稿でお話ししています。
また、2024年8月4日から10月18日までのあいだの【Team Haneen】チャリティグッズの売り上げと寄付について、下記の記事でご報告しています。あわせてお目通しください。
それでは、本題に入ります。
①秋冬物を作ることには、ためらいがありました。という話。
冬物は夏物に比べて単価が高くなります。
寄付をするために日常的に出費を抑えようとされている方も少なくないなか、高額な商品を販売することには、ためらいがありました。
お支払いいただいたお金のすべてをまるごと寄付できるのであればよかったのですが、私たちが選択した販売方法では、そうはゆかないのです。
【Team Haneen】のプロジェクトは、mgmさん、唐崎昭子さん(山中千瀬さん)、糸川乃衣の3人で運営しています。
各々の生活のなかから捻出できる時間とお金は限られているため、持続可能性を重視し、グッズの作成と販売にはsuzuriというプラットフォームを使うことに決めました。
suzuriはとても使いやすいサービスです。
受発注から出荷までの工程すべてを任せられるのも、これだけ豊富な種類のグッズをさまざまなデザインや色でそろえることができるのも、suzuriだからこそです。
ただ、これらのサービスを利用するには、もちろんお金がかかります。
suzuriにおける商品の販売価格は、
原価(suzuri側に支払うお金)+「トリブン」(suzuriの用語。販売者の収益のこと)=販売価格
という形で設定されています。
販売価格全体に占める「原価」の割合が高く、収益(=寄付できるお金)がごく一部に限られてしまうため、同じ金額を使っていただけるのであればsuzuriでのお買い物よりも直接寄付していただけたほうが、より直接的なサポートになるのだよなあ……という思いが、どうしても拭えません。
(suzuriの原価を不当だとは思いませんが、私個人の感覚として、うう……高いな……とは思っています。めやすが気になる方は、お手数ですが調べてみてください)
そういった葛藤がありつつも秋冬物を作ることにしたのは、これからの季節もパレスチナについて話すためのきっかけになるものがあってもよいのかな、という考えからです。
ハニーンさんが寄付を募らなければならなくなっている状況を終わらせるには、この状況を作り出しているイスラエルによる軍事侵攻を止める必要があります。
そのためには、「私は停戦を求めています」と表明する人が、今以上に増えなければなりません。(本当の原因は占領と植民地支配ですが、今はまず、とにかく停戦……)
さまざまな事情から「虐殺反対」や「停戦を求める」といった意思や要求を言葉にすることが困難な方も、「こんなチャリティグッズがあるよ/買ったよ」ならば比較的言いやすいかもしれない。
あるいは私のように面と向かって「今パレスチナでこういうことが起きていてね……」と切り出すのがどへたな人でも、「そのスウェットかわいいね」と言ってもらえたら「これね、実は、ガザにいるハニーンさんと作ったチャリティグッズで……」とスムーズに話すことができるかもしれない。
そんなふうに、SNSやリアルでの会話や発言の糸口としていただけたら、と願っています。
ちなみに、suzuriでは不定期で各種セールが開催されています。たとえば、例年どおりにゆけば11月の終わり頃にウィンターセールが開催されるので、そのタイミングを待って購入されるのもよいのではないかな、と思います。セール時も「トリブン」(=ハニーンさんへの寄付になる額)は通常時と変わらないため、おすすめです。
(セール開始時にはなるべくアナウンスしたいなと思っているのですが、気づけないことも多いです。お手数ですが「セールを狙って買う!」と決めてくださっている方は、ご自身でもsuzuriをチェックしてみてください)
そして、もしよろしければ、なのですが……
ハニーンさんをサポートしたい! という方は、上記のような事情から、直接送金もあわせてご検討いただけますと幸いです。
下記のリンクから、GoFundMeというアメリカのクラウドファンディングのプラットフォームを使ってハニーンさんに直接寄付をすることができます。
GoFundMeは英語のサイトですが、操作は難しくありません。
こちらの動画で、使い方をわかりやすく解説してくださっています。
くどくどと内情を説明してしまったことが、「買うんなら寄付してほしいな」というメッセージになってしまっていないかな…と、少し不安です。
言うまでもなく、チャリティグッズをご購入いただけるのは嬉しいことです。
苦境が長引くにつれて寄付が集まりにくくなるなか、自分たちで作ったグッズの売り上げとして得られる収入は、ハニーンさんにとって金銭面でも精神面でも大きな支えなるに違いありません。
まずはお店をご覧いただき、いいな、と思われた方はぜひお買い求めください。
(私も買います! ほしいので!)
アイテムをご紹介いただく際は、可能であればこの記事もあわせてシェアしていただけますと、非常にありがたく存じます。
②【Team Haneen】がチャリティグッズを作る理由
【Team Haneen】は、なんのためにチャリティグッズを作っているのか。
もちろん第一には、ハニーンさんのためです。
このプロジェクトは、ハニーンさんの「ガザから脱出する費用を集めるために、自分たちでグッズを作って販売したいです。力を貸していただけませんか?」という呼びかけからスタートしました。
ハニーンさんは、イスラエル兵によっておつれあいを連れ去られて以来、幼いふたりのお子さんたちをおひとりで守りながら避難生活を送っています。そうした苦境にありながらも、家族とともに生き延びるために自分にできる最大限のことをしようと心を決め、力を尽くそうとされていました。
もともと洋服を作ったりデザインを手がけたりすることがお好きだったハニーンさんの、持ち前の能力や感性を生かしたプロジェクトを形にすることは、ハニーンさんの意志を尊重し、一人の人間としての尊厳を守ることであり、ご本人にとっても私たちにとっても、大切な抵抗でした。
そういった経緯で始まったプロジェクトではありますが、同時に、「ハニーンさんだけで終わってほしくない」という気持ちが、私(たち)にはあります。
ハニーンさんのようにご自身のことを語ることに長けていたり、チャリティグッズを作ることができたりする方は、決して多くはありません。
そもそも、現在支援を必要とされているガザの方々のなかで、海外のコミュニティと繋がって寄付を募ることができている方は、ごく一部に限られます。
支援を呼びかける術を持たない大勢の方々を、私たちのプロジェクトを通じて直接サポートすることは、残念ながら難しい。(※1)
私(たち)にできるのは、パレスチナに目を向けてもらうためのきっかけになることだ。このプロジェクトを糸口に今のパレスチナに目を向けてくれる人が増えれば、それは間接的に、助かる方が増えることに繋がるのではないか。
チーム内で共有しているこうした思いを、メンバーのひとりであるmgmさんが、チラシに落としこんでくれました。
チャリティグッズの紹介にとどまらず、パレスチナで今起きていること、これまで行われつづけてきたことを知るための、はじめの一歩としても役立てていただける内容になっています。
印刷用データをGoogle Document(※2)にアップしています。どなたもご自由にダウンロードしてお使いいただけますので、周囲の方との会話のきっかけにしてください。
「きっかけにしてほしい」というのは、ハニーンさんの願いでもあります。
どんなデザインのグッズを作りましょうか、と希望をお聞きした際、ハニーンさんは迷うことなくこう仰いました。
「母親と子どもたちの目の前で兵士が父親を連れ去り、子どもたちが泣いている、そんなイメージを取り入れたいです」
「これは、多くのパレスチナ人に対して繰り返されてきたことです」
ハニーンさんのおつれあいがイスラエル兵に連れ去られたように、子どもたちが親を奪われ、家族が引き裂かれるということが、パレスチナではこれまでずっと行われてきて、今もまさに行われている。
そうした現実があることを、ハニーンさんは伝えたいと望んでいます。
その望みをひとりでも多くの方が受けとってくれることを。受けとってくれた方一人一人が、その方の言葉だからこそ受けとってくれる人たちに、ハニーンさんたちの、パレスチナの話をしてくれることを。心より願っています。
「ハニーンさんだけ」で終わらせないために、あなたの力を貸してください。
※1:プロジェクトを通じてもっと大きな額を集めることができれば、収益の一部を他の方や団体に寄付する、といったことも考えられるかもしれない……と、私個人としては思っています。ですが、①に書いたような事情から、suzuriでの販売で得られる額はどうしても限られてしまい、そのような余力は持てずにいるのが現状です。
※2:チラシのデータ置き場としてGoogle documentを利用してしまっているので、この話をしておきます。
Google(とAmazon)は、パレスチナの方々主導の「BDS運動」において「ボイコット以外の圧力の対象」とされている企業です。「避けて生活することは困難なので、不買とは別の形で圧力をかけましょう」という位置付けです。「別の形の圧力」の一例として、 #NoTechForApartheid というキャンペーンが行われており、下記のサイトから署名に参加することで「イスラエルによるアパルトヘイトに加担する技術提供をやめてください」という圧力をかけられます。
自分が使わなければやってゆけない企業が虐殺に加担してるの、まじ勘弁してくれ……という気持ちをお持ちの方、その気持ちを署名にぶつけてみてはいかがでしょうか。名前とメールアドレスを記入するだけなので、すぐに終わります。
#NoTechForApartheid キャンペーンについては、山中澪さんによるこちらの解説が、とてもわかりやすいです。
③糸川個人の、個人支援に対する考えかた
もともと私は、個人による個人の方への支援には、消極的な立場でした。
これは一般人に務まることじゃない。少なくとも私には荷が重すぎる。そもそも根本的な原因が解決されない状態では、どれだけ寄付をしたところで穴の空いたバケツに水をそそぐも同然だ。1日も早く停戦が果たされ、公共の支援が入れるようになるのを待つしかない。それが当初の考えでした。(これは、今も大きくは変わっていません)
しかしながら、停戦は一向に果たされず、ガザでは依然として、公共の支援がまともに行き渡らない状態がつづいています。寄付がなければ今日1日を生き延びるための水や食べ物も買えない方々の、助けを求める声が聞こえてきます。
逡巡するなかで、「adoption」という概念を知りました。
クラウドファンディングをサポートする上での方針のひとつで、「支援する先をひとつもしくは少数に絞り、その周知と目標達成に注力する」という考え方です。
そうか。そういう方法もあるのか、と思いました。
相手を選ぶのは苦しいことです。それでも、選ぶことを避けるために誰も選ばないよりは、選んででも自分にできることをしたほうが、少なくとも私自身の行動としては、まだいくらかましな気がしました。
それで、ご縁があったひとつの家族だけ、と決めてサポートするようになりました。バケツに穴が空いているのだとしても、その穴がふさがるまでなんとか持ち堪えられるよう、自分に可能な範囲で水をそそぐ人の一人になろう。そそぐというより一滴一滴たらすようなことしかできないけれど、それでも無よりはましなはずだ。今は、そう考えています。
「ひとつの家族だけ」というのは、私自身が自分のキャパシティを見極めたうえで決めた、潰れてしまわないための線引きです。
だからといって、自分がサポートしているご家族さえ助かればそれでいいのかというと、そんなわけがありません。
私自身が応じられないSOSを目にするたび、心を無にしてやり過ごしています。
この声を誰か他の方に受けとめてもらえたら。そう願うことしかできません。
寄付をするひとが増えてほしいです。
増えてくれたらそのぶんだけ、助かるひとが増えるし、支援者ひとりひとりにのしかかる負担も軽くなるから。
でも、寄付を他より「重要」あるいは「正しい」ことだと思っているわけではなく、むしろ単体ではまったくもって不十分で、だからこそ、本来ならばバケツの穴をふさぐための行動とセットでやってゆかなければならないと思っています。
今の私には、そちらがほぼできていない状態です。「ごめんそっちはむりだ! できるひと頼んだ!」「いつもありがとう! ものすごく助かっています! そのぶん、ここは私が引き受ける!」というような気持ちを、見ず知らずの大勢の方々に対して抱きながら、ご家族のサポートに専心しています。
水をそそぐひとも、穴をふさぐひとも、両方を少しずつやるひとも、もっともっと、もっともっともっともっと、人数が必要です。
今からでいい。どの係でもいい。新しい方にくわわってほしい。
そのために、私に何ができるんだろう、と考えつづけています。
すばらしい方法なんて浮かびそうにもないけれど、とりあえず引き続き、隙あらばチャリティグッズを身につけて出かけるつもりです。
どれだけ最悪が更新されようと、ひとりぶんの力でできるささやかな抵抗を手放しません。
④おまけ:今日からできること
首相官邸、外務省、防衛省・自衛隊、在日米国大使館に、 ここから意見を送れます。作成者の山中澪さんが文例を用意してくださっていて、コピペして使っても構わないそうです。匿名でも大丈夫。数が重要だそうなので、一言「これ以上イスラエルに武器を送らないよう、アメリカに働きかけてください」などと送るだけでも。同じページの下方にある「おすすめリンク」もとても良いです。
同じく山中澪さんが作成された、パレスチナ連帯に関連する情報やデータへのリンク一覧まとめです。寄付先の例、プラカードのデータなど。署名のプラットフォームChange.orgについての注意喚起もあります。Change.orgで署名をされている方は、目を通されることをおすすめします。
今からパレスチナで起きていることについて知りたい、できることを探したいという方におすすめのサイトです。インターネットには胡乱な情報が氾濫しており、鵜呑みにするのは危険なので、まずはここで紹介されているメディアや書籍を入り口にすると良いのではないかと思います。【Team Haneen】の一員でもあるmgmさんが運営に携わっているのですが、そうした事情を抜きにしても、万人におすすめしたいサイトです。