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[感想]ウェビナー「デザイナーは何をすべきか-『UX原論』の視点から-」

2020年5月28日にウェビナー「デザイナーは何をすべきか-『UX原論』の視点から-」を聴講したので個人メモも兼ねて感想を書いてみることにしました。


UXを「デザインできない」という立場と、「デザインできる」という立場

この「UX原論」の内容について、事前にUXとデザイン活動の関係について2つの方向性があることを意識していたので、どちらの立場で語られるのか気になっていました。

Wikipediaの「ユーザーエクスペリエンス」の項で「ユーザーエクスペリエンスのデザイン」に関する複数の観点 という内容があります。ここでは、UXを「デザインできない」という立場と、「デザインできる」という立場の、2つの観点が存在することについて触れられています。

「デザインできない」という立場は、ユーザーエクスペリエンスに影響する3要素(状況、ユーザー、システム)のうち、デザイナーが設計できるのはシステムに限られ、状況やユーザーはコントロールし得ないからだ。という考え。

「デザインできる」という立場は、ユーザーがうれしいと感じる体験となるように、製品やサービスを企画の段階から理想のユーザー体験(UX)を目標にしてデザインしていく取り組みとその方法論をUXデザインと呼ぶ。という考え。

デザイン活動の関与できる範囲をどう考えるかが両者の立場の違いになっています。

「UX原論」内では、UXは作り手が直接関与できない(=デザインできない)領域としている

ウェビナー内でポイントとして感じたのは2つでした。

1つ目は”UXを「デザインできない」とする立場”の解説。

黒須先生の品質特性図では、品質というものを「設計時・利用時」「客観的・主観的」の軸で4象限に分けています。

図の左右で「設計時の品質」と「利用時の品質」をフェーズが違うものとして分けており、設計時の(デザイン活動によって生み出されるユーザビリティなどの)品質は利用時の品質(=UX)に影響を与えるものではあるが、決定づけるものではない。としています。


2つ目は「デカゴンモデル」というデザインプロセスについて。

「大怪獣デカゴン!」(10人中9人は考えつくボケ)……じゃなくて、10段階のプロセスから成るループモデルなので、10角形=デカゴン。とのこと。
12角形はドデカゴンらしいです(どうでもいい情報)。

ここで私が気になったのは、「5:具体化」「6:調査・検査」から、その前のプロセスに戻る矢印は無くて、開発のプロセスの外側である市場に出てユーザーの手に渡り利用されてからの「印象」からフィードバックを得るというプロセスになっていることでした。

ここが、HCDなどで見られる”開発中の”仮説構築と仮説検証のフィードバックループと明らかに考えが異なると感じたところで、仮説はあくまで仮説にとどまるのだということを表しているの思いました。

ここまでの話で「結局、どんなに考えてもUXをデザインしたことにはならないんや…(´・ω・`)ショボーン」となってしまいそうなところもありますが、個人的には次のような見解でいます。


個人の見解としては「作り手はUXに関与できるが変数や寄与率の扱いには注意が必要」

私は学生の頃にデザインの要素がその嗜好に影響を与える関係について研究していたことあります。

概要としては、ラフ集合理論を用いてデザイン要素やその組み合わせを「式」、それが好きか嫌いかという嗜好を「解」と考え、解が「好き」となるデザイン要素やその組み合わせ(=式)を見つけるというものです。

(画像はDevLOVE2012の発表資料より。このとき、黒須先生も私も「UX枠」での登壇でした。今にして思うとだいぶおこがましいですね…)

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元々、このような「デザイン要素が式で、好き嫌いが解」という因果関係を持っているという感覚があったので、作り手からのデザイン活動などの取り組みがUXに関与することはできる。と考えています。

ただ、この因果関係も決して単純なものではないですし、式というのは変数の集まりですから、作られたもの(デザインなど)に関する変数だけでなく、ユーザーや、ユーザーが使う環境も同様に変数となることを忘れてはいけません。

また、ラフ集合になぞらえるならば要素の組み合わせによって解への寄与率(影響の大きさ、と言い換えて良いと思うのですが)も異なってくることもありますし、これを解き明かして百発百中のUXデザイン?を生み出そうというのは茨の道なのかも知れませんね…研究テーマとしては面白そうなんですけど。


参考(UX原論、件のウェビナー関連)

ウェビナーのテーマになっている「UX原論」の書籍

azumiさんのスケッチノート

ちゃちゃきさんの感想note

参考(ラフ集合関連)

ラフ集合について興味があるようでしたら私の先生の本を手にとっていただければ(私も解説できないことはないですがたぶん情報が古いw)


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