ハング
ハング(2014年:日本)
脚本:嶋田うれ葉・平川雄一郎
出演:市原隼人
:金子ノブアキ
:時任三郎
:石橋蓮司
:蓮仏美沙子
非常に残念な作品。キャストは豪華で映える俳優ぞろいなのだが、脚本と展開が悪い。なので俳優それぞれが浮いてしまい、更に視聴する気を失せさせた。誉田哲也の警察犯罪小説を原作としているらしいが、原作の魅力を落としているのではないかと思う。読んだことないので偉そうに言えんが。
物語は父からDVを受ける母と幼い兄弟から始まる。弟を守るため兄は父を絞殺してしまい、母は自殺に見えるように偽装する。その数年後の現在、宝石店オーナーが絞殺されようとしていたところ通行人に発見され失敗。犯人は逃げようとした男をナイフで刺殺して逃走。事件は未解決となったが、その数か月後にその宝石店で強盗が発生し、オ-ナーの殺人事件と関連付けられる。警視庁捜査一課が捜査に乗り出し事件は解決するが、捜査班のメンバーは不可解な降格人事を受ける。そして黒幕と殺人者たちが動き出す。
こういう警察犯罪を扱った作品の醍醐味は、正体不明の黒幕がじわりじわりと凶手で主人公たちを追い詰めるスリルが面白いのだが、黒幕役の石橋蓮司が最初っからバンバン出てきてあれこれ指示を出す。ステレオタイプの悪徳政治家を見せつけるので何の面白さもない。なんで殺す必要があったのかも分かりにくい。理由が苦しすぎるし、人が死ぬ方が事実として残るのでリスクが高すぎると思う。クセ強の見た目でキャスティングするのはやめてほしい。
時任三郎が率いる捜査班は若手揃いで勢いがあるのだが、最初の展開が駆け足なので、ただやかましいだけの集団に成り下がってしまい、決して有能には見えない。しかも序盤に捜査員の一人が脅迫・恫喝されるシーンがあり、内部崩壊が早過ぎる。
市原隼人が主役の実直でタフな若手刑事を演じているが、本来見た目と同じように正義感と真っ直ぐな演技が売りの俳優なのに、よく分からない脚本や演出でその魅力が殺されているため、今一つ演技に説得力が欠ける。犯人と格闘するシーンでは派手なアクションを見せてくれたのだが、そこまで長々と殴り合わんでもいいだろうと興覚めした。彼が誉田哲也作品に通じて登場するキャラクターになる原因を描いた作品らしい。
ツッコミどころとしては簡単に人が死ぬ。それも一杯。いくら子供でも大人を絞殺できるほど力は強くないと思うし、体重も軽いのですぐ跳ね除けられる。タイトルにかかる首吊り(ハング)に見せるため柔道技で絞殺するが、紐と腕では明らかに圧迫痕が違うので鑑識には他殺とバレるだろう。ナイフで刺してもあふれる血はカキ氷の薄いいちごシロップのようにさらさら流れる。失血死するぐらいなら周辺は血の海になるはずなのに衣類を染めた程度。プレハブ小屋が爆破されたときはびっくりするどころか、ハァ(*´Д`)?と必要性が分からなかった。どうも視聴者を舐めているとしか思えない。小さなギャグシーンも挟まれるが、面白くもなければ、緊迫感を台無しにしていたので本当に無駄。
殺し屋の高橋努は顔面が硫酸で焼けただれているという設定だが、目立ちすぎるだろとツッコんだ。廃工場のプレハブ小屋に盲目の女性と暮らしている設定は盛り過ぎ。原作にもあるのかな?、この設定。
警察犯罪ドラマなのでもっと人間関係を複雑にして、敵の敵はグレーな味方、味方は実は敵というような一筋も二筋縄もいかないような展開を見せてくれれば惹きこまれたのだが、割と話は一直線。主人公の捜査になんも障害が現れず、トントン拍子に進みすぎるのが問題。最初のDVの件の説明はない。誰のエピソードと思ってしまう。仲間や身内が殺されるが動機が軽い、軽すぎる。消費税上げるために殺人?、政治不信を回避するために警察の評判を貶める?、なんだその訳の分からない理屈は。アベさんは消費税上げたぞ。クライマックスになるはずの最後の真相解明も何の高揚感は湧かない。何のためにクセの強い俳優を起用しているのか。いやクセが強いから最後にもってきてはダメだと思うんだが。クセ強俳優は展開をひっかきまわしてストーリーを盛り上げるのが役目。
何から何まで残念。感想が湧かない。良い所を探すのが難しいなぁと痛感させられた作品だった。
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