エイリアン バスターズ
エイリアン バスターズ(2012年:アメリカ)
監督:アキヴァ・シェイファー
出演:ベン・スティラー
:ヴィンス・ヴォーン
:ジョナ・ヒル
:リチャード・アイオアディ
:ローズマリー・デヴィッド
アメリカの田舎町のコストコ支配人がエイリアンと戦うSFコメディ。ベン・スティラー主演となればドタバタコメディを期待したいところであったが、視聴して非常に後悔。エイリアンの造形に凝っているのに、登場人物たちの意味のないすれ違いや、不快を感じさせるブラックな表現などイラっとさせてくれたB級にもなれないAマイナー級作品。
主人公は地元を愛する真面目なコストコの支配人。アメリカ市民権を取得した店の警備員が惨殺されたことに奮起して、町を守るために自警団、ご近所ウォッチャーズの結成を呼び掛ける。集まったのはちょっと粗暴で娘LOVEな工務店経営者、警察官採用に何度も落ちている厨二病気味の男、そして妄想下ネタ暴走の離婚したての男の三人。主人公はあくまでもマジメに近所の平和を守る活動をしようと呼びかけるが、三人は楽しくワイワイやりたいだけ。主人公は空回りしつつも、次第に町にエイリアンが潜んでいることが明らかになる。ご近所ウォッチャーズのメンバーたちもそれぞれ抱えている問題もあり、周囲を巻き込みながらエイリアンの侵略に対峙していくことになる。
主人公のベン・スティラーは2000年代のコメディ王だとは思うが、この作品ではその存在が活かされていない。過去の作品ではハイテンションで空回りしつつも身体を張ったような演技で笑いを誘いつつ、どこか中年男の悲哀や一途さを感じさせたが、この作品の主人公はマジメなのは一緒だが、空回りに笑いがない。仲間の三人は自警団の活動はそっちのけで、男同士集まってワイワイ楽しもうとすることだけを考える。その姿は滑稽でもなく笑えるものでなく、いじける姿は気分のいいモノではなかった。また妻との夜の生活に悩みを抱えているのだが、内容はかなり問題。それを笑いに変換できるほどオレは能天気ではないぞと思わずツッコんだ。その他、エイリアンを見つけ次第殺そうとするなどサイコパス的な気質も感じてしまい、まぁ笑えない、笑えない。
メンバーの三人も見ていたら腹が立ってくる。ヴィンス・ヴォーン演じる工務店経営者は父親業の息抜きのために活動に参加しており、真面目な話をしてもビールを取り出して、あくまでも大人のサークル活動としか見ていない。娘にやや束縛気味で、彼女が付き合っている彼氏に対して非常に不満を持っている。ごく当たり前のお父さんなんだが、イケイケで自分勝手にユニフォームを作ってだっさい翼の付いたトラを刺繡する始末。いざエイリアンとの戦いになると勇ましくはあるが、私怨からの立ち回りでドラマはあっても見せ場としては弱い。下ネタなんだよなぁ、決着のつけ方が。
後のメンバーも重要な役回りはするが、特に厨二感ある白人はいるのかなぁという印象。やたらいきって威勢のいいことをほざくが、ストーリー的にはずれている。エイリアンと戦うために隠し集めた武器を提供したことが最大の見せ場。もう一人の黒人はエロ妄想全開で、ご近所ウォッチャーズの活動であわよくば据え膳にありつこうと目論んでいる。離婚した直後と語るが彼には秘密があるらしい。それが後半動き出すが、今まで伏線はまったくないから唐突過ぎる。もっと個性的で世間的にずれまくったキャラクターが、良識的マジメの主人公を振り回してほしかった。
エイリアンたちが住人に成りすまして田舎町に潜んでいるのだが、ご近所ウォッチャーズのメンバーは疑心暗鬼になってしまう。いつも洗車しているアジア系奥さんや郵便配達人、殺人事件を捜査している地元警察の警部、最近近所に越してきた怪しい男等々。そこいらの葛藤をもう少し掘り下げてほしかったが、横道にそれてしまい、ちょっと中ダレしてしまった。そのおかげで秘密が解明されるのだが。
そして最終決戦。ご近所ウォッチャーズたちが主人公の職場のコストコで激闘を繰り広げるのだが、銃を乱射してエイリアンを殺害。オーバーキルのように一頭に何度も弾丸を撃ち込んでいるのが不快。なんかコメディを通り越して笑えなかった。笑えないコメディは非常にイラっとしてしまう。やっぱりベン・スティラーに殺しは似合わない。