バイバイマン

バイバイマン(2017年:アメリカ)
監督:ステイシー・タイトル
配給:STXエンターテインメント
出演:ダグラス・スミス
  :クレシダ・ボナス
  :ルシエン・ラヴィスカウント
  :ジェナ・カネル
  :ダグ・ジョーンズ

怖くないホラーはいかがなものか。アイデアはいいのだが、やってることはただの脅かしで、怪異が何者で何のためにやってくるのかがまったく分からない。人智を超えた存在の理由なんか分かりはしないんだろうが、内容は非常に残念になってしまったホラー。チョイ役のお二人の存在感が光る。
その昔、眼鏡の男が知人宅を訪問し「名前を誰に教えた」と知人の妻らしき人に質問。誰と誰に教えた聞くと急にライフルを持ち出してその名前を聞いた人たちを惨殺し始める。そして月日は流れて現在。大学生の恋人同士二人と友人の三人がルームシェアのため郊外の古い屋敷へ引っ越しする。恋人の男が家具を物色していると古いコインを発見し、それを見つけた引き出しにはびっしりと「考えるな、言うな」と書きつけられており、その下には「バイバイマン」と殴り書きされていた。その日から怪異現象が起き始める。
導入はありがち。禁忌の存在を知らずに呼び込んでしまうというこれ以外の導入は難しいと思う。色々なホラーでも使われている。しかし、そこからが意味不明。
怪異の主人公であるバイバイマンが存在感薄。猟犬を見てコインの音を聞くと近くにいるというが、直接的な干渉はせず、その名前を知った人間に幻覚を見せて死へ誘導するというもの。その割には主要三人は勿体つけてなかなか殺さない。幻覚を見せてじわじわ追い詰めていくのだが、見せる幻覚がしょぼい。もっと心の内側をえぐり取るような悲痛な幻覚を与えて、狂気に落としこんでいくようにしてほしかった。そして連れている猟犬やコインの因果関係は語られないので、悪い意味でキャラクターがつかめない。人の思考に存在し、口づてで怪異が広がっていくというアイデアはいいんだが、恐怖としての個性がなさすぎる。ちなみに役のダグ・ジョーンズは死体とか半魚人とか幽霊とか人間でない役を演じるとめちゃくちゃ光る俳優。
そして大学生三人のそれぞれのパーソナリティが活かされていない。主役の男性は両親を亡くして、兄に助けてもらって大学進学したことを引け目に感じているし、付き合っている彼女のことも大事にしている。そこをもっと攻撃されれば嫌が上でも恐怖は盛り上がっていくのに、バイバイマンを調べることが中心になり、怖さや悲しさを感じられない。彼女はどんどん体調崩すが、それが怪異によるものかよくわからない。もう一人の友人に至っては主役の当て馬扱い。女性関係でトラブル起こして寮を追い出されたというくらいなのに、もっと狂って主役と取っ組み合いになればよかったのに。
ここでチョイ役に大物が二人。冒頭のライフル殺人を起こした男の妻役にフェイ・ダナウェイ。さすがに80歳を超えた御大なので美貌とは言えないが、その存在感はやはりレジェンド級。セリフ一つに重みがある。その若いころを演じていた女優、キーリン・ウッデルが若いころのフェイ・ダナウェイによく似ていたのには驚いた。ベレー帽かぶってほしい。
そして刑事として主役に関わるのがキャリー・アン・モス。例の大作4本目の直前に撮影しているので、容姿に変化はないが、強い女性を演じると存在感がある。彼女の役がもしかしたら続編もありうるのではないかと思わされる。
最近、鉤づめの怪人も復活したと聞く。彼は鏡の前で5回名前を呼ばないと現れてくれないが、バイバイマンは考えるだけで来てくれるという親切さ。もし続編を作るなら、もっと内面へえぐりこんだ幻覚を見せまくって、人々を狂気に深遠に叩き込んでくれる怪人にパワーアップして帰ってきてほしい。

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