バイオハザード:デス・アイランド
バイオハザード:デス・アイランド(日本:2023年)
監督:羽住栄一郎
原作:カプコン
出演:ニコール・トンプキンズ/湯屋敦子
:マシュー・マーサー/森川智之
:ケビン・マードン/東地宏樹
:ステファニ・パニセロ/甲斐田裕子
:エリン・カーヒル/小清水亜美
:ダマン・ミルズ/子安武人
ゲームを主軸に実写、CGと連作が作られているカプコンのサバイバルホラー、バイオハザードシリーズ。そのドラマティックな展開が人気で、自分は一作目から追いかけているが、今作はCG作品の第五作目。ゲームでの6と7の間に位置する、人気キャラクターが一堂に会してバイオテロと戦う物語。特に前エピソードで囚われ操られていた、美しき女戦士の再生と心の帰還を中心に描いている。でも、主役クラスが揃うと役割や見せ場が渋滞してもったいないんだよなぁ。
国家機密を持ち出そうとした研究者が拉致され、バイオハザード(以下BH)2の主人公、レオンは拉致した集団を追う。激しいカーチェイスを繰り広げるが、敵の女による妨害で取り逃がしてしまった。同刻、BH1の主人公、クリスとジルはバイオテロの現場を捜査。前エピソードで洗脳され、解放された後、リハビリを経て現場復帰したジルは暴走するかのように単独行動をとる。BH0の主人公、レベッカによりバイオテロに使われたウイルスは以前のものの改良型が検出され、新たな脅威を感じさせる。海岸では何か巨大な海生生物に襲われたシャチの死骸が漂着。BH2の主人公、クレアが調査するとこれも先述のウイルスが検出される。ゾンビ化した人々、シャチの死骸、情報を繋ぎ合わせると沖合に浮かぶ元監獄島、アルカトラズ島が浮かび上がる。彼らは結び付けられるかのようにアルカトラズ島へ向かっていく。
CGアニメーション作品なので登場人物のアクションや表情、感情表現等は自在に操ることができるが、BH1の時代からは隔世を感じるほど美麗。浮かび上がる汗、飛び散る血しぶき、躍動するおぞましいクリーチャーなど実物が動いているかのようなアニメーションを見せるので、デジ好きアナログ人間の自分には驚きの連続。実写作品で効果的に使われるCGはフル映像で使うと実写以上に説得力を感じる。年代が進めば進むほど、CG作品の質が向上しているので、リアルに将来の映画に発展性を感じている。それでも生身のアクションの方が説得力あるんだが。トムとかジャッキーとか。
物語の中心はジル・バレンタイン。前作で因縁の敵にさらわれて洗脳された後、クリスらを抹殺するように操られたが、エンディングまでには解放。その後リハビリという名の監視下に置かれつつも現場復帰を果たした。洗脳され操られたという心理的負い目を感じるあまり、現場では暴走気味に突貫し、一人でクリーチャーをせん滅するような危ない橋を渡ろうとする。長年の相棒クリスに見守られ心配されながらも、焦りが先走る様子が何か哀しい。シリーズ、スピンオフの中でも一・二を争う人気キャラクターで美しくインテリジェンスがあり、そして強いというほぼパーフェクト・ヒューマン。そんな彼女が負い目から突っ走る姿は意外性があり、この作品のストーリーの妙を感じる。衣装はBH3時のような露出が多めなんだけど、オレはやっぱりBH1のベレー姿がよかったなぁ。
ジルが中心となるため、ほかの主人公クラスの登場人物がかすむのが残念。レオンは超人的なカーチェイスや因縁のある敵との格闘で見せ場はあるものの、クリスにはほぼない。ジルが出るならクリスも出るだろうと期待したが、部活の顧問のようにジルを見守るだけなのが残念。更に残念なのがクリスの妹、クレア。見せ場がないどころか窮地に陥って助けてもらうお姫さま状態。CGの具合もこれまでのイメージと違う。BHシリーズの主役クラスの女性キャラは強くて賢くて美しいでなけりゃ。なぜかクレアは毎回イメージが変わる。レベッカは非戦闘員だから仕方ない。でもこの五人がそろって銃を構えたシーンはしびれた。
作品としてはこれからも順次続いていくだろうし、世代を経て新たなキャラクターや脅威、主人公たちの因縁の決着が望まれると思う。今回登場した五人以外にも人気のキャラクターはいるし、未回収の設定や謎、そして更に大きな陰謀と世界は広がっている。マンネリの気配も漂っているが、物語としてはどこかで落としどころを作らないとファンは納得しないと思う。過去作のリメイクだけででなく、ゲームでは9の期待も高まっているのできっちり終わらせてほしいと願う。オレの希望を言わせてもらうと、レオンとエイダの関係の清算と、BH0のビリーとBH3のカルロスの行方、あとコード:ベロニカのリメイクを期待している。お願いします、カプコンさん。