犬鳴村

犬鳴村(2019年)
監督:清水崇
配給:東映
出演:三吉彩花
  :坂東龍汰
  :古川毅
  :宮野陽名
  :高嶋政伸
 
都市伝説界隈で有名な犬鳴村伝説をもとに、行方不明となった兄と弟を探すべく臨床心理士の女性が自らの宿業を明らかにする怪奇の物語。ジャパニーズホラーで世界に名をはせた清水崇の村三部作の第二作。おどろおどろしい雰囲気を煽ってくれるが、途中何度も視聴をあきらめかけた駄作。
兄と恋人は心霊スポットで有名な犬鳴村を訪れるが、這う這うの体で逃げ帰ってくる。その後精神を失調した恋人は鉄塔から飛び降り命を絶つが、その本当の死因は溺死だった。兄は再び犬鳴村を訪れるが、以前とは異なり入り口だったトンネルにはバリケードが張られており、進入できなくなっている。強引に侵入したが群がる何者かに襲われ、弟共々行方不明に。その後兄の友人たち、事情を知る老医師らが次々と謎の溺死、きょうだいの母が犬のように変貌してしまうなど怪異が現れる。すべての原因が犬鳴村にあると悟った臨床心理士は祖父から自身の祖母のルーツを聞かされる。そして何者かにダムの底へと沈んだ犬鳴村へと導かれていく。
ジャパニーズホラー特有の忍び寄る恐怖を期待したが、怪異は関係のない人ばかり襲い、当の主人公とその周囲が恐怖におののく場面は少ない。なので怖くない。本当に怖くない。画面の暗さや音響の気持ち悪さで恐怖をあおるのは慣れた手練手管を感じさせるが、その演出に頼ってストーリーを進めるので展開が予想しえてしまう。犬食いする母の生理的に気持ち悪かったが。
人物の関連性も分かりにくいのも怖くない要素の一つ。主人公の臨床心理士の祖母が強い霊力を持っており、実は犬鳴村の出身で、尚且つ重要な血のつながりを持った人物というお決まりの内容だが、その因習に塗れた陰惨さは薄く、悲劇さも感じない。その娘である主人公の母は犬のように変貌してしまうが、姿形はほぼ人間で、牙と目の色を変えただけでクリーチャー要素も弱く、変わってしまった悲しさもない。父はその血の宿業を知っていたようだが、何の対策も考えもなく、ただ忌み嫌っただけに終わってしまっている。高島礼子と高嶋政伸が夫婦の役で出ているのが何となく新鮮味はあった。
そして肝心の怪異の原因である犬鳴村の存在はさらに薄い。もっと因習めいた村の怪異を期待していたが、実際はダム建設の陰謀に巻き込まれ住民ごと壊滅させられ、ダムの底に沈んだとされる。そこに住んでいた人たちが怪異となっているのだが、その村は山犬を狩っていたことに由来するという。何そのニッチな設定。山犬(きちんとした意味では狼だろうか)だけを狩るのは効率悪い。狩猟民の村で、何かの縁で山犬のうらみを買って宿業になったという設定の方が筋が通るのでは。掘っ立て小屋にぼろの着物をまとった人たちが暮らしているなか、ダム建設に来た者たちが陰謀で例の「この先日本国憲法通用せず」の看板を立てたというが、無理がありすぎる。いったいいつの時代だ。衣装から明治大正戦前と分かるが時代が合わなさすぎる。できあがったダム本体の形を見ても現代のダムなのでそこら辺の時代設定がメチャクチャ。更にタイムリープを持ち出してくると何でもありやなと白けてしまった。
犬へと変貌する理由も分からない。祖母・母とそして怪異の大元と犬へと変わったが、その理由の説明もなければ、なぜこの面々が変わらなければいけなかったのかが説明不足。女性に見られるようだが、例外もあるみたいでさらに分からない。その他、関係のない登場人物は殺されるのに重要人物は殺されない、その幽霊と子供は結局何に関係があったのかとか説明不足で、何度途中で観るのを止めようと思ったことか。
そして終わりごろは大円団にしたかったのだろう蛇足が過ぎた。そんな演出はいらん。わざわざ現れるのも不要だと思ったし、なおかつ実はまだ終わってないんですよっていう演出は更に不要。ホラーのラストは恐怖のインパクトを残すような一瞬の演出でいい。
有名な話題とかなり有名な監督だったので、普段日本のホラーを見ない自分でも期待はしてたのだが非常に不満が残る。もうしばらくは悪い意味で日本のホラーは観ないだろうな。

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