アンダー・ザ・シルバーレイク

アンダー・ザ・シルバーレイク(2018年:アメリカ)
監督:デヴィッド・ロバート・ミッチェル
配給:A24
出演:アンドリュー・ガーフィールド
  :ライリー・キーオ
  :トファー・グレイス
  :ゾーシャ・マメット
  :キャリー・ヘルナンデス

クエンティン・タランティーノが注目している若手監督の一人で、将来商業的に成功しそうな有望な監督と評されるデヴィッド・ロバート・ミッチェルの第3作。ポップカルチャーやサブカルチャー、都市伝説とちょっとしたオカルトを交えて、キラキラ輝く世界の暗部を描いたごった煮のような作品。下劣、下品、割とえげつない表現がたくさん出てくるのに、レイティング規制がかかってないのはどうなのか。仕事しろよ、映倫。
一目ぼれした女とデートの約束を取り付けたヲタク気質の男が、彼女の部屋をたずねるともぬけの殻。怪しい女が去った後に壁に残されたマーキングを発見し、彼女の捜索が始まる。L.Aを代表する富豪の失踪や都市伝説も絡んで事態は一本のロープのように集まっていく。
主人公を観ていると首を傾げてしまう。金なし、職なしの男が、何でいい車に乗って、女に不自由していないのか。それに、そこまで全身写さんでもいいだろうと思うシーンやスカンクに屁をかけられて嘔吐するシーン、大麻クッキーを丸食いしてトイレで吐いて墓場で目覚めるシーン。家族と食事しながら観てたらえらいことになるぞ。何でもスカンクの屁の臭いはトマトジュースを浴びれば中和できるという民間伝承があるらしく、トマトジュースの風呂に入る姿は自分が日本人なので理解が追いつかなかった。個人的にはこれらの表現は苦手。アンドリュー・ガーフィールドのクズヲタクの演技はなかなか捨て身で迫真的。
調べると失踪した女役のライリー・キーオはあのエルヴィス・プレスリーの孫にあたるそうだ。尻軽で軽薄な雰囲気を見せていたが、プールサイドから上がったとき、とてもセクシーかつ天真爛漫な笑顔だったので、表情で見せることができる女優と認識。フィルモグラフィを確認すると着実にキャリアを積み重ねているので、これから伸びてほしいと思った。
失踪した女を探す最中に陰謀や秘密に巻き込まれるという定番のストーリー。展開や演出に過去の映画のようなおどろどろしくも神秘的な雰囲気があり、ヒッチコックやリンチの作品へのリスペクトを感じる。BGMの使い方が昔のサスペンス映画的でヤマを感じるが、主張が強すぎるのでやや耳障り。クラブでのダンスやバンド、都市伝説等々なんかは監督の好みを詰め込んだように思え、ポップ・サブカル好きは嬉しいだろうが、それらへのカウンター側からは訳が分からない状態になってしまう。ソングライターの暴露はインパクトがあるが、説得力には欠ける。
映像を通してキラキラと光り輝く表の世界と、その下に漂う汚物のような世界の対比が際立つ。パーティーで着飾ったセレブリティに対して、主人公の衣装は場違い感漂う。このあたりの表現はこれから注目の監督らしい手法と思うが、ただ純粋に見たくないもの写すのは拒否感がある。
謎解きのようなストーリーが進んでいく割には説明不足も気になってしまう。急に重要人物からヒントを提供されたり、なぜ殺す、殺される必要があるのかわからない。あれだけ恐怖をあおった怪人も結局何だったのか。カルトムービー特有の設定過剰と説明不足、そして説得力の弱さが散見される。
後半の展開もよくわからなかった。詳しくは控えるが、言ってることとやってることが矛盾していると感じる。魂の向上を目指す割には怠惰な暮らしするんだなと思った。そしてラストもなんも脈絡がない。意外というより、何なん?と疑問に感じてしまう。
監督の作品に対しての強い意欲を感じるが、色々引っかかる部分もあり今一つすっきりしない内容。賛否が分かれているらしい。ポップカルチャー・サブカルチャーには共感できる場面もあるが、映画は自分に響くところがなかった。もっと都市伝説に根差した謎解きを期待していたんだがなぁ

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