妖獣奇譚 ニンジャ VS シャーク
妖獣奇譚 ニンジャ VS シャーク(2022年)
監督:坂本浩一
脚本:足木淳一郎
出演:平野宏周
:西銘駿
:長野じゅりあ
:中村優一
:宮原華音
水族館に行くと必ずサメの展示を見る。泳ぐために進化したその姿形はいつまで見ていられるほどの流麗さを感じる。映画好きの一部界隈ではサメ映画ってジャンルが人気を博しているらしいが、狙っているとしか思えない無理のある設定の中、出演者の頑張りは光るが、ツッコミどころ盛りだくさんの超B級映画。
海女の女が海に漁に出た所、サメに襲われる。必死に逃げ浜辺に上がったが、そこには無残に食い殺された別の海女の死体が転がっていた。村は邪教を操る集団に襲われ、村で採れる真珠を巻き上げられている状況。村長はワケアリの用心棒を雇い邪教集団を何とかしようとする。その用心棒とは元忍者で、ある理由で忍びの里を抜け出たことから、同じ流派のくノ一から狙われていた。邪教集団と用心棒、くノ一、人食いザメのバトルが繰り広げられる。
シャークとうたっているが、サメが出る必要性はまったくない。そもそも邪教集団のねらいが真珠なのでそれを採りに行く手段である海女を食い殺すのは本末転倒。しかも物語の中心に据えられていないので、タイトルもどうかと思う。主役である抜け忍の用心棒が邪教集団と追手のくノ一とのバトルが中心なので必要かなぁ…って思わされる。最後のラストバトルでその威容を現すのだが、丁寧に作りこまれたCGの巨大ザメが飛んだり、跳ねたり、地下に潜ったりとやりたい放題。洋画の超B級作品に影響を受けてるんだろうが、自分には荒唐無稽すぎて盛り上がらなかった。サメの名誉のため言っとくが実際のサメは好んで人なんか襲わない。さらに陸に上がって地下にも潜らない。
その抜け忍用心棒役の平野宏周と村の若者役の西銘駿の二人がよく頑張っていた。殺陣の説得力やアクションの存在感など身体を張った動きで躍動感を感じる。抜け忍用心棒となったいきさつも悲しい過去として語られ悲哀を誘う。抜け忍なので忍術は使わないと固く誓っているが、ラストバトルには使って強大な敵と戦う。だけどラストバトルの忍び衣装が地味なのが残念。村の若者はボコボコにされまくっても致命傷にならないというご都合あるものの、一途にヒロインを守ろうとする思いが伝わってくる。多少過剰な演技っぽい気がするが、B級作品に必要な盛り上げを満たしていると思った。調べると二人とも平成版光の巨人や異形のバイク乗り等で主役を張ったことがある俳優。特撮ができる俳優は演技が上手っていう持論の裏付けになってよかった。
B級作品に必要なグロは盛りだくさん。切られて首が飛ぶ、血しぶきが上がる、五体バラバラ、臓物ぶちまけとお好きな人には十分満足できる演出がいっぱい、たくさん。血しぶきはCGだろうが、血が全身や衣装にべったりつくのは細かい演出を見られる。でもところどころ変に思う場面もあり、血まみれで海に飛び込んだから血が洗い流されたんだなと見ていた次の場面で浜辺に上がった瞬間また血まみれと、え?と思わされるシーンもある。編集が甘いな。
それぞれアクションができるキャストが出演しているので、バトルシーンが楽しめるが、女性陣にそれなりの武術のキャリアを持った人が演じているのでなかなかカッコいい。抜け忍用心棒を追うくノ一は長い手足でバシバシ打ってくるし、生贄にされる村娘も蹴りが見事。でもくノ一役の宮原華音にそんなセクシーなくノ一がいるかとツッコんだ。高飛車女王様な雰囲気はよかったんだが。村娘役の長野じゅりあにはヒロイン性が弱い。この人の声はドラマ向きじゃない。YouTubeで観たことあるが、明るいキャラクターなんでバラティ向きだと思う。ゾンビになった人妻は何気に最後までのさばる。製作のお気に入りだったんだろうか。
B級ノリがふんだんに楽しめる作品であったが、「生きる」を連呼され少し押しつけがましいのが気に障ったところ。大事なことだが、人がバンバン殺され喰われる世界観で言われても説得力はない。いっそのこと主要人物だけ生き残って村は全滅したらよかったのにと思わされる。そして最後のエピローグの演出。かつての角川映画での沢田研二を意識しているように見えた。こういう演出は賛否が悩ましい。面白い作品だったらニヤッとするんだけどねぇ。