ズーム/見えない参加者
ズーム/見えない参加者(2021年:イギリス)
監督:ロブ・サヴェッジ
出演:ヘイリ・ビショップ
:ジェマ・ムーア
:エマ・ルイーズ・ウェップ
:ラディーナ・ドランドヴァ
:キャロライン・ウォード
:エドワード・リナーディ
新型コロナウイルスによるロックダウンの最中、暇を囲っている友人グループが、Zoomを使った交霊会を行う。女子五人に男性一人が霊能者の手引きで霊を呼び出そうとしたが、トラブルによりに不測の事態が発生。Zoomで繋がる彼らの身の回りに怪奇現象起き始める。
60分のショート作品ながらアイデア勝負のモキュメンタリー仕上げの力作。全編通じての画面は見慣れたZoom画面で構成されて、場面の動きは少ないながら、恐怖に混乱する各々の状況を一目で理解させてくれる演出は斬新。特にそれぞれの顔を映し出すことで、恐怖におののく者、混乱しわめく者、必死に理性を繋ぎとめようとする者などの表情がありありと映し出されて、自分もこの会に参加しているような錯覚を起こす。
オカルト好きの女子大生っぽい女子を中心に、四人の女子が参加するが、それぞれの個性をきちんと作っているのが面白い。特に彼氏と同棲し始めたが早速ケンカし始めたラテン系の女子や、彼女の実家に転がり込んだが、肩身の狭い思いをしている男とか、ロックダウン中の閉塞感、それによる人間関係の軋轢を感じさせてくれる。また、男の彼女が五人の女子から嫌われており、集団ができると必ずこういう存在が現れるよなって苦笑いしてしまった。もしかしてオレもそう思われてんのかな…。
交霊会を進めると、中国移民の祖父母を持つ眼鏡女子が異変を訴える。脳裏にある人物の名前が浮かんだと言い、不安を感じて泣き始める…が、これはウソ。悪ふざけだったのだが、これが呼び水になり怪異が彼女たちを襲い始める。交霊会を指導している霊能者が「敬意をもって霊を迎えるように」と念押ししていたのに、悪ノリしてしまったことが因果となってしまい、呼び出されたのは悪意を持った霊だった。
ラップ音がして、怪しい影が現れ、そして霊能者との通信が繋がらなくなる。一度霊を返そうと試みるが、そこからは怪異が怒涛の攻勢。飲んでたワインのグラスが破裂する、座っているイスごと引きずられる、物が飛んできて当たる等々、短い時間で恐ろしい霊の攻撃が続く。そして彼女たちに不幸が訪れるが、彼女たちだけでなく、その周りにいた人物にまで襲いかかってくる。その惨状をZoom画面越しに観続なければならないのは、無機質な恐怖を感じた。この演出と構成は見事。Zoomの特徴を生かした恐怖の演出もあり、観ていて唸るものがあった。
上手いなと思わせるのが、Zoomという世界的に共通したシステムを使うことで、個性を別けられているものの彼女たちがごく普通の女子たちで、特別な登場人物ではないことを演出していること。なので余分な情報を差し込まず、仲間内の好悪や異変に直面した際の言い争いや仲間を気遣う励ましなど、人間臭い部分を演出できている点。怪異が自分の身にも降りかかるのでは思わせてくれる没入感もあった。これが60分超えると飽きてくると思うので、監督の演出の勝利だと思う。
設定にツッコむ部分は多々ある。特に交霊会なんかそんなに簡単にうまくいくのかと思うし、指導する霊能者の無能ぶりも映画にありがちなステレオタイプ。霊のとらえ方が日本とイギリスでは異なるので出てくる怪異にも違和感がある。自分はホラー好きの唯物主義者なので、心霊ホラーを見てると、こいつら怪異の行動原理はなんだろうと深堀してしまうのが悪い性分。
さて全世界的に普及しているZoomだが、よく不調を起こすのもあるある。自分も使う機会が増えているが、今一つ使いこなせていない。いきなり画像が真っ暗になったり、マイクが途切れたり、ひどいときは首から下が背景になってたこともある。もしかすると霊のせいかもしれない。