シルクロード.com ー史上最大の闇サイト

シルクロード.com ー史上最大の闇サイト(アメリカ:2021年)
監督:ティラー・ラッセル
原案:デヴィッド・クシュナー
出演:ジェイソン・クラーク
  :ニック・ロビンソン
  :アレクサンドラ・シップ
  :ダレル・ブリット=ギブソン
  :ケイティ・アセルトン
  :ウィル・ロップ
 
自分はそれほど頻度多くはないが、オンラインでの購入はもう重要なインフラになっている。が、その匿名性や秘密性さから地下では違法な取引があるのも事実。2013年の闇サイト摘発、シルクロード事件を描いた物語。
天才的な頭脳を持ちながらやりたいことが見つからない大学生。自由を求めつつ自身の顕示欲も捨てきれずフラフラ過ごしていたが、ある時何気ない会話から闇サイトを立ち上げる方法を思いつく。猛勉強の末サイトを立ち上げ軌道に乗せ、シルクロードと名前を付ける。一方やりすぎな捜査で更生施設に入れられていた麻薬取締官が復帰する。自宅では妻から愛娘に学習障害があり、特別支援学校への入学が必要と知らされる。職場ではサイバー犯罪対策課へ飛ばされ、引退まで腫れもの扱いされる。自身で動こうとする捜査官は情報屋からネットを使った麻薬入手の方法を教わり、闇サイト、シルクロードの存在を知る。大学生は更にサイトを拡大して違法な取引も増やし、高揚感と顕示欲は最高潮に達する。そんなことをよそに捜査官はシルクロードを追いかけ始める。が、二人の行く末には暗雲が立ち込めていく。
主人公である大学生の、やるせない日常の無気力から闇サイトを立ち上げる没入と依存的になる様子、そして破滅に向かう焦燥と乱高下をよく見せている。アクセスの匿名性を確保する方法と秘密性がある暗号通貨を組み合わせることを思いついた時、瞳に力が宿る。そこから走り抜けるように一気に闇サイトを作り上げ、違法取引で世界を席巻していくと高揚感が頂点に。しかし頂点は終わりの始まりで、サイトの運営に依存的になり、更に銃火器や殺人まで取り扱い始めて、それまでノリで協力してくれていた恋人、友人との間にも距離が開いてしまう。大人になり切れず、それでいてでっかいことを打ち立てたいという欲求が先走っているシーンは怖いものなしのイケイケ感を感じる。そこから闇サイトが巨大になると押しつぶされないように依存的になり、危険な領域に入ってしまうと焦りと不安、そして恋人や友人との断絶と破滅に襲われていく悲しさを感じた。
サイトを追う捜査官もクセ者で、時代に取り残されているような暴走気味の仕事ぶりが問題になるアナログ人間。現代のツールを駆使する年下上司とはまったくソリが合わず放置状態にされている。家族愛強い反面ワーカホリック傾向強く、大事な娘の用を忘れてすっぽかしてしまうようないかにもなおっさん。そんなおっさんが猛勉強してある程度ICTを使えるようになり、闇サイトを追っていくのがこの物語の大きな軸。ビシッとスーツで固めた上司と対比されるような普段着で無精ヒゲのだらしない姿だが、現場で奮闘する姿に共感してしまうのはオレもアナログ人間だからか。デジタル世界の犯罪にアナログの手段で切り込んでいくのはカタルシスを感じる。所々今の捜査のやり方に疑問を挟む演出があり、キーボードを打つのは人間だろ、というセリフには眼からウロコ。デジタルと言っても根本はアナログの集約だと気づかされる。エゴや独善の象徴に見えたが、後半になるとなかなか印象に残る名言を語る。本来デジタルはこういうアナログ人材をサポートすることで効率を発揮するんだと思う。
印象的な二人のキャストが通信を通して絡み合い、追いつ追われつするが、妙に緊迫感はなく、ヒリつくようなタイトロープも感じない。実際の世の中ではリスクは犯さず、ハイリターンを得るのが本分だが、映画なのでもっと二人のギリギリさを感じる演出が欲しい所。大学生・捜査官とも行動と末路となる背景があるのだが、描くと間延びしてしまっている。特に捜査官は重い理由になりえるので、そこを重要に描いていれば、終盤のセリフが更に印象的になったんではないかと思える。
摘発され、裁判も結審した事件なので、ハッピーな終わり方ではないかもしれない。闇サイトもシルクロードだけではなく、SNSの闇など未だに残る。テクノロジーが進み、人の考え方がより短絡化されつつあるが、感情というものは理不尽なアナログさは残ると思う。どちらもうまく昇華していってほしい。とりあえず自分はリンゴ印のスマホと時計を扱えるようになろう。それら購入した理由? 持ってるとカッコいいからです。

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