バトル・インフェルノ

バトル・インフェルノ(アメリカ:2019年)
監督:ダミアン・レベック
脚本:ダミアン・レベック、アーロン・ホロウィッツ
出演:カイル・ガルナー
  :ライアン・ガスマン
  :ジョアンナ・デヴィッド
  :エマ・ホルツァー
  :アリックス・アンジェリス
 
高校の時の一泊オリエンテーションの時、初めて有名な悪魔払いの例の映画を観た(これを上映に選ぶ担任もどうかと思うが)。確かに怖かったのだが、所々意味が分からない箇所があり、特になんで罪の告白を強要されるのかが分からなかった。その悪魔を退治する悪魔払いの神父が実はインチキで動画配信で有名になりたいだけだけだったが、出演者に本物の悪魔がとり憑いてという心霊ホラー。終盤までの葛藤や駆け引きには目を見張るモノがあったが、ラストの余韻にはチープさを感じて残念。
神学校出身の幼なじみ二人は悪魔に取りつかれた人の悪魔払いを動画配信していた。が、実はすべてヤラセ。ニセ神父の男は有名になりたく、SNSのチェックに余念なく、バーではファンから言い寄られていい気になっている。プロデューサーの男は番組に行き詰まりを感じており、新展開を提案しているが、神父役からは断られている。しかも承認欲求強い神父役に振り回されつつも、幼なじみということで彼に付き合い続けていた。ニセ神父はバーのファンをお持ち帰りした朝、一瞬彼女におぞましい老婆の姿を見るが、取り繕い次の撮影に。プロデューサーの彼女は映画の仕事が決まり、プロデューサーに、神父役は自分の事しか考えていない、この番組を辞めてきちんとした仕事についた方がいいと勧める。プロデューサーは幼なじみを捨てられないといい、撮影に臨む。今回の悪魔憑き役者が来ないので彼女を代役に仕立てて撮影はスタート。しかし彼女は急変して異形の表情となり、次々と怪異現象を起こす。本物の悪魔が現れ、二人を非情な手段で責め立てていく。
ニセ神父とプロデューサーの二人の罪を暴くために、彼女に取りついた悪魔が憎たらしく責めていくのがなかなかエグい。裸踊りをさせた上に足元に砕けたガラスがばらまかれニセ神父の足が傷ついていくのが最初の痛み。そこから噛みつかれたり、幻覚を見せられてナイフで傷つけられたりとかなり痛々しい演出がある。どれもこれも二人が犯した罪を認めさせるためのものだが、よく考えるとその巻き添えになるスタッフや彼女にはどれも不条理なことばかり。なので二人の良心をえぐるような展開になり、観ている方もかなり精神的にやられる。しかも悪魔は動画を配信し続けることを要求。断ろうとすると彼女の命をタテにして、リアルタイムで一部始終を配信させ続けられる。
そんな中で二人が犯した罪を思い出させることなるのだが、最初はインチキ悪魔祓いや偽物の除霊グッズを売りさばいたことかと思うが、彼ら二人に共通した事件があることが掘り起こされる。それもまた悲惨な過去であり、二人がインチキ動画を作るきっかけになったことでもあり、原因はかなり深いものであったと判明。そこに彼女の命や、ニセ神父の承認欲求などが絡み、二人の間に諍いが始まる。こういう危機に際してエゴがむき出しになるのが人間臭く感じた。
スタジオ内の密室劇なので登場人物は少ないが、動画配信の設定なので、動画がリアルタイムで全世界に流されていることが重要。悪魔は二人の罪を広めるためのように振舞うが、最後の最後にその真意が判明するのが、現代的に感じる。軽いどんでん返しのようなラストで、なるほどねぇと手を叩くが、ありありとそのシーンを映すとちょっと軽すぎるんでないかと思った。今まで実物が出てこなかったのに出してくると、何かのクリーチャーのように感じてしまい、這い寄るような恐怖を感じられなくなったのが残念だ。
なおかつ、二人が犯した罪を告白させるのもよく分からない。キリスト教は無学なので語れないが、悪魔が人の犯した罪を裁くのは西洋と日本の感覚の違いだろうか。最後の目的があるなら、彼女にとり憑いて激戦を繰り広げる必要はなかったんじゃないかな。
ラストまでの過程までにいくつもの波があり、自分には盛り上がったが、観る人を選ぶ作品であると思う。悪魔とニセ神父とプロデューサーらの掛け合い、一進一退の攻防に注力すれば、もっとハラハラドキドキの展開が望めたんではないかと感じる。タイトルがいただけないのも残念だった点。もっと考えてほしかったなぁ。

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