コール・オブ・ヒーローズ 武勇伝

コール・オブ・ヒーローズ 武勇伝(2016年:中国)
監督:ベニー・チャン
  :サモ・ハン
出演:エディ・ポン
  :ラウ・チンワン
  :ルイス・クー
  :ウー・ジン
  :ジャン・シューイン
 
混乱期の中華大陸に割拠する悪辣な軍閥に対して、貧しい村の自警団と放浪の無頼漢がともに力を合わせて立ち向かう武侠アクション。中国・香港でもトップクラスの俳優が共演した歴史アクション大作。全体的に西部劇やクロサワ映画テイストがあふれているが…。
舞台は辛亥革命後の中華大陸。各地では内乱が起き、庶民の暮らしも脅かすほどの悪行を行う軍閥が村に迫ろうとしていた。頼みの味方の軍は遠征に行ってしまい脅威が迫っている。子供を連れた女教師は一時村に避難するが、その翌日白づくめの男がやってくる。男は女教師とその従兄の食堂店主、そして子供を射殺。自警団に逮捕されるが、やってきた男の護衛から、村に迫っている軍閥の息子で副総裁と明かされる。副総裁を解放しなければ村を攻撃すると脅されるが、自警団の団長は解放を拒否。流れ者の無頼漢の助力を受けて、悪辣な副総裁に対抗する。
ここまで聞くと、西部劇かもしくはクロサワ映画のストーリー展開。おそらく監督も意識しているのだろう、映像もBGMもそれっぽい。しかしカンフーが主体の映画なので銃は悪役の副総裁しか持っていない。アクションはすべて格闘戦。さすが香港アクションの流れを汲んでいるだけあって、息つく暇を与えないほどのスピード感と手数の多さ、そしてバリエーションの豊富さが目を引く。しかしそれだけ。蹴りを受けて吹っ飛ぶ姿などワイヤーアクションとCGを使って派手に見えるが、使いつくされた感のアクションのように感じて少々物足りない。剣や槍など中華武術でも粋のアクションもあるが、斬新さはなく物足りない。
主役のエディ・ポンに迫力がないのも残念。クマのようなヒゲを、自警団団長が精悍に整えてくれるのだが、この人にはもさっとしたヒゲは似合わない。眼力が強い男前なのだが、ワイルドさが似合わず役に容貌があっていない。役どころは愛馬ととともに各地を流れる無頼漢なので、人助けをしても金を要求したり、割に合わない依頼は断ったりしているが、最終的に引き受けてしまういい人。でも無頼漢を気取るんなら、もっと斜に構えて、自身の自由を大事にした方が説得力はあったと思う。西部劇っぽい人物描写だが、中途半端な存在。自警団団長と副総裁に喰われてしまっている。敵の中にはかつて自分を助けてくれた兄弟子がおり、対決シーンは何とピラミッドのように積み上げた酒甕の上。主人公の二刀流と兄弟子の短槍の対決は死闘だったが、結末はあっけない。この決着は納得がいかなかった。
ストーリーを注視するなら自警団団長の物語。非道の軍閥副総裁を捕らえたが、解放しなければ村を攻撃すると脅され、村の住人からは村の安全のため解放するように懇願されるという板挟み状態。それでも法の遵守を理念とするが、最後は自ら責任を取ろうと覚悟を決める。ただ葛藤が少なく、見ようによっては正論エゴの塊のように見えてしまう。もっと苦悩した方が感情移入できたんだがなぁ。それでも鞭を振るって立ち回りする姿はこの作品で一番のアクション。
更に残念なのが、悪の副総裁役のルイス・クー。今までみた作品の中では結構なキレ者の役が多かったのに、今作では行き当たりばったりで人を殺すサイコパス。高笑いしても目が笑っていないのはさすがの演技力だが、この人も容貌と役が釣り合っていない。自警団に逮捕されて怯えた顔になったすぐ後に副総裁とバレて急に横柄になり、牢の鍵を逮捕した張本人の団長に開けさせて屈辱を味わさせようしたり、いきなり首吊って泡吹いて嘲笑ったりとやってることが支離滅裂。一応自警団に逆圧迫をかけているのだが、視聴していて見苦しかったので面白さが落ちる。計算高いサイコパスなキレ者だったらカッコいい悪役だったのに。後真っ白な衣装と金ピカのオートマチック拳銃は印象に残るが、これはアホのボンボンをイメージしているのだろうか。それだったら正解だろう。
古き良き時代の香港カンフーと西部劇・クロサワ映画の融合を期待していたが、昇華できずに中途半端に終わっている。大円団に近いんだろうが、どこの何がよかったんだろうと理解に苦しんでしまう。そして字幕落ちで軍閥を撃退したという味方軍の馬に跨った軍装のサモ・ハン・キンポーを見た時イラっとした。最後にお前がエェとこ持って行くんかい。

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