なんちゃって家族
なんちゃって家族(2013年:アメリカ)
監督:ローソン・マーシャル・サーバー
配給:ワーナー・ブラザース
出演:ジェイソン・サダイキス
:ジェニファー・アニストン
:エマ・ロバーツ
:ウィル・ポールター
:ニック・オファーマン
バカな下ネタとコントのような勘違いに、時折挟まれるホームドラマのような温かさが面白いが、やってることは重犯のドタバタコメディ。偽装家族それぞれのキャラクター付けが非常に上手。
いい年こいたマリファナの売人がメキシコからマリファナを密輸するように持ち掛けられる。国境を疑われずに通過するため、場末のストリッパーを母に、家出パンク少女を娘に、近所の童貞少年を息子に偽装して、家族と称してキャンピングカーでメキシコからデンバーまで旅する珍道中。途中には勘違い激しい麻薬捜査官ファミリーとマリファナを奪い返そうとするギャングに追い付きまとわれながら、次第に本当の家族のような絆が生まれてくる。
集められたそれぞれが個性的。もっさい中年売人の主人公は偽装のため髪を切って髭を剃り、いかにもアメリカのお父さんという雰囲気を出す。散髪シーンで「反抗的な娘と自己啓発が好きな妻を持つくたびれた中年」という指定に後ろの客が「これだ」と言って自分の髪型を指したときは爆笑してしまった。独善的な性格で仕方なく偽装家族を作るが、次第に他の三人に打ち解け、まるで本当の父親のように見え始めた。役のジェイソン・サダイキスがメリハリついた演技で笑わせてくれる。
個性的な子供たちも魅力的。家出パンク少女はファッションを変えられて、かわいいJDっぽく仕上がっていたが、やや跳ねっ返りなところもあり、難しい年ごろの娘を好演。なかなか機転の利くキャラクターで、ピンチの際に言葉に窮した偽両親を助ける。息子の姿はそのままだが、彼はこの旅で成長しており、童貞特有の先走り感といじいじとした青臭さがあったが、偽両親と偽娘のアドバイスや実地指導を経て、最後には男を見せていた。
その家族の中で一番魅力的なのが偽母役のジェニファー・アニストン。場末のストリッパーで自宅アパートを追い出されて仕方なしに旅行に参加。4人の中では一番状況把握がしっかりとしているが、割とえげつない下ネタを口にして空回りする姿がおかしくて笑ってしまう。ストリップのダンスを演じている隙に逃走のチャンスを作るほど腹も座っている。話が進むにつれ本物の母親のような包容力を見せ、偽姉が変な男からちょっかいを出されかけた時は、身体を張って娘を守るシーンは感動的。明るく賢そうな雰囲気で、爆笑した表情に非常に好感を持った。昔はそれほど好きな女優ではなかったのだが、こんなに魅力的な演技をする俳優とは思わなかった。
そんな彼らに付きまとうのが同じくキャンピングカーで旅行をする三人のファミリー。妙に偽家族に付きまとうが、実はその父親麻薬取締官。彼らと接触しただけで偽家族は浮足立ち挙動不審になるが、更に麻薬取締官ファミリーは勘違いを暴走させるので、苦笑いを禁じえない。ブランケットにくるまれたマリファナを赤ん坊と勝手に勘違いするわ、一緒にキャンプファイヤーを囲んで「I fought the law」を歌うわ、夫婦の夜の生活について誤解しまくるわで、もうメチャクチャにひっかきまわしてくれる。なんとなく例のピンクの衣装で写真を撮りまくる夫婦芸人を連想した。しかし父親は麻薬取締官らしく戦闘技術が高く、家族を襲うギャングをでっかい鉄のマグカップで撃退する姿がカッコいい。彼の存在は作品のラストに活きてくる。
偽息子と麻薬取締官家族の娘との恋模様も懐かしいものを感じる。好きだけど手を出せない青臭い苦悩に、偽家族総出でアドバイスをするシーンはちょっと感動的。偽父の3秒数えろというアドバイスは割と適切。偽姉と偽母がキスの実地を指導するシーンはウーン…。本当にうらやま…、いやけしからん。
ラストシーンはハッピーエンドに近いが、そこに見られるある植物が問題。ただでは感動的に終わらせないぞ、という監督の意地を感じた。アメリカは合法な州や郡もあるらしいが、日本人には理解ができない部分。
魅力的なキャストとドタバタとブラックジョークと下ネタがいい塩梅で調和した、いいバランスが取れた一本。スタッフロールのNG集でみんなの仲の良さを感じた。ジェニファー・アニストンは素晴らしいコメディエンヌだと発見できた。