サイレントヒル リベレーション

サイレントヒル リベレーション(2012年:アメリカ)
監督:マイケル・J・バセット
配給:オープン・ロード・フィルムズ
出演:アデレイド・クレメンス
  :キット・ハリントン
  :ショーン・ビーン
  :キャリー・アン・モス
  :マルコム・マクダウェル

ゲーム会社KONAMIのサイレントヒルシリーズを映画化した連作。前作で母の奮闘により現実世界に還ってきた運命の少女のその後を描く。独創的かつ生理的嫌悪を抱かせるクリーチャーが印象的な異世界ホラー。
運命の少女は18歳となり父と二人でアメリカ中を転々と旅して、警察と忌まわしい封印された街、サイレントヒルを支配する教団の追跡を逃れている。少女は決して誰とも打ち解けず、ハイスクール編入初日の自己紹介でも「誰とも仲良くならない」と宣言する始末。そんな彼女に興味を持った同じ編入生の男子からのアプローチも邪険に扱うが、彼女を襲う悪夢や幻覚は次第に現実化していく。その矢先父が消えてしまう。自宅の壁には血で「メタトロンの印章」と「サイレントヒルに来い」と書かれていた。少女と男子はサイレントヒルに向かう。
主役の運命の少女役、アデレイド・クレメンスはあどけなさが残るが、割と大人びている気がする。日本と欧米では同じ年代でも見え方は違うのだろうが、ハイスクールの生徒って感じはしない。と言っても大学生にも見えないので難しいもんだ。消えた父からは「探すな」とメッセージを受けていたが、唯一の家族として助けたいという思いをよく表現していた。ごくありきたりなホラーのキャーキャー叫び逃げ回るヒロインではなく、拳銃を撃って真相に近づいていく、たくましい少女なので観ていて感情移入できる。出身はオーストラリアらしいが日本でも暮らしたことがあるようなので、なんか応援したくなった。これを自分は近所の娘さん効果と呼んでいる。
現実世界から裏の世界へ変貌する特殊効果はなかなかの気持ち悪さ。ペリペリと人の皮が剥離するようにめくれ上がり、赤黒い背景に梁や柱が剥き出しになった建造物。頑丈そうな鉄扉の鉄格子からは囚われた人間が無数に手を伸ばし、金網の下には無数のマネキンの首。明滅する電灯とざらついた質感の映像は嫌が上でも不安をあおる。鉄と血にまみれた嫌悪感ある空間が現れる。登場するクリーチャーは更に生理的嫌悪の塊。腕のないヌメヌメした顔無しクリーチャーも気色悪いが、人形が苦手な自分にとってはクモのようなマネキンの集合体はかなりキツい。そしてこの作品ではおなじみの顔のないナースの群れと三角の仮面をかぶったレッドピラミッドもいる。いつものようにレッドピラミッドは巨大な身体にでっかい鉈を引きずりやってくる。得体のしれない非人間性を感じさせるが、今回のレッドピラミッドは味方。不満。
なぜ少女がサイレントヒルに行くのか、行ってはならないのかという理由はストーリーが進むにつれ判明するが、そのキーとなるのが少女の対極に存在するサイレントヒルの少女。前作で解き明かされているが、彼女は現実世界の少女の素となる存在で、現実世界の少女はサイレントヒルの彼女の善の心が切り離された存在。今作はその彼女と少女の対峙を描き、ひとまずの終着を図っている。
ゲームを元にした作品なので、ストーリー上ではゲーム内のキャラクターの名を冠した登場人物が出てくるが、ゲームと映画では扱いが変わっており、最後まで生き残る者や途中退場する者がまったく違う。父親も扱いが異なるが、ストーリーに積極的にかかわる存在ではなくもったいない。ラストシーンで登場したトレーラーの運転手はサイレントヒルシリーズの外伝の主役というくすぐりもあり、シリーズに対してリスペクトを感じた。
前作は母と娘の強い愛情を描いた割とメッセージ色強い内容だったが、今作は娯楽作に仕上がっており、連作としてつながりは薄く感じてしまうのが難点。裏世界に取り残された母に出会うシーンがあってもよかったのではと思う。恐怖の盛り上がりも散漫になってしまったのも残念なところ。
骨太なホラーゲームとしてサイレントヒルシリーズは様々なプラットフォームで新作が出ていたが、8作目「ダウンプア」以来更新はない。そろそろ新作出ないかなと期待している。

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