ホラーマニア VS5人のシリアルキラー
ホラーマニア VS5人のシリアルキラー(カナダ:2020年)
監督:コディ・キャラハン
脚本:ジェームス・ヴィルヌーヴ
出演:エバン・マーシュ
:アンバー・ゴールドファーブ
:アリ・ミレン
:ジュリアン・リッチングス
:ロバート・メイレット
冴えないホラー専門誌の編集者が泥酔後気づいたら殺人鬼たちの会合に巻き込まれた。各地の映画祭で高い評価を得ているカナダのブラックコメディ。グロ注意なので食事中の鑑賞には堪えない作品。
気になる女性とルームシェアしている殺人鬼専門ホラー雑誌の冴えない編集者は、彼女が他の男とデキているのを見て、その男を追跡。酒場でその男に近づいて親し気に話しかけるが、適当にあしらわれる。やけ酒を煽り、泥酔し店のバックヤードで眠りこけてしまう。眼が覚めるとそこでは怪しげな会合が開かれており、彼らは自分の殺人哲学や悩み事を話している。編集者は危険を感じたため架空の殺人をでっち上げ称賛されるが、その場に先ほどの男が遅刻して登場。ヤツの登場により危険な状況へと落ち込んでしまう。しかしその場には味方が一人いた。二人は殺人鬼どもと対決する。
ドタバタなコメディを期待したのだが、大笑いできる演出は少なく、物足りなさを感じる。5人も殺人鬼がいるのならもっとヤツらの個性を活かして画面狭しと暴れまくってほしかった。主人公の編集者が仲間と協力して一人一人撃破していくのかと思ったのだが、活発なアクションは観せず、相棒の謎の女がアクション担当。イカれた奴らを主人公の編集者が知識を活かした頭脳戦を繰り広げてほしかった。冴えない演技と目の前で繰り広げられる惨劇へのリアクションはなかなかだったので、そんな主人公だからこそ逆転の爽快感が欲しかった。
5人の殺人鬼はそれぞれ特徴的ではあるが、あまり記憶に残らない連中が多い。会合のホスト役の政府機関に勤めてるらしき中年は、毒物で一つの村を全滅させたとうそぶくが、退場が早い。どう見ても中国系なのに日本名を名乗る人肉食料理人は存在が軽い。キャンプ場で恋人たちを殺害していた大男は終盤までがんばっていたから存在感はあるが、大した個性を発揮できず。個性が一番あったのが計画に行動し、凶行時ピエロの姿で笑う会計士の男。それでも女子に撃退されるほど弱い。
その指揮を執るのは、IQ180のコロコロと身分を変え、三度目のデートで女を殺すという編集者のルームメイトの彼氏。こいつは本物のイカレっぽくて、ごまかす主人公編集者を論破する、FBIを装い刑事たちをだますなど高い知性を見せつけるかと思えば、ジュークボックスで音楽を流しノリノリで踊る、車に撥ねられながらも殺しへの執念を見せるなどの演技が秀逸。実際殺人鬼の大多数は高い知性と偏執を持っているというから、この男がこの作品の真の主役だったかもしれない。実際こいつ一人でいいんじゃないのか、思った。
ストーリー通じての設定が、80年代ごろの意匠を取り入れているので、古き良きホラームービーの雰囲気を醸し出している。よく考えたら、今は携帯電話やスマホが普及してるので、危機に陥っても通信が繋がる安堵感へ逃避することができるが、ここには固定電話や公衆電話しか出てこないので、誰とも繋がれない不安を感じることができる。殺人鬼がいるという非現実的な状況を警察は信じてくれないのも、かなりの焦りを感じる。この監督は80年代ホラーに思い入れがあるのは感じるが、それと同じくらいよく研究をしているとも感じた。こういう焦燥感はこの時代でないと出せないのかも。
思い入れは感じるが、何か足りないと思ってしまうのが残念。役者が少し多すぎたとも思う。もう少しコメディに振っても良かったとも思う。そして主人公をもっと動かしてストーリーをもっと廻してほしかったと思う。思う、思うで観終わった後に何かが足りない残念さが付きまとう。