ファインド・ミー
ファインド・ミー(アメリカ:2016年)
監督:ザック・ウェドン
脚本:ザック・ウェドン
出演:アーロン・ポール
:アナベル・ウォーリス
:エンヴェア・ジョカイ
:ギャレット・ディラハント
:クリス・チョーク
普段通り生活していた親しい人が、ある日突然失踪する。そんな非現実的だが可能性はありうる状況のミステリー作品。消えた恋人を追い、闇の深みに嵌められていくごく普通の男を描く。静かな描写はよいが粗が非常に目につく。
同じアパートで暮らしていたグラフィックデザイナーの男と、写真家の女はひょんなことから親密になり、同棲することに。幸せな日常を過ごしていたが、写真家の女がある日突然失踪。手がかりはなく、事件は迷宮入りとなってしまい、男は無為の日々を過ごしていた。一年後、彼女の大学時代の友人が訪ねてきたが、彼にも手がかりはなし。しかしグラフィックデザイナーが留守にしていた隙に彼女の友人と称する男は自宅部屋の壁を壊すほど物色していた。問い詰めようとするが反撃され逃亡される。事件を担当する刑事からは写真家の彼女も、その友人と称する男も経歴はウソだったと聞かされる。荒らされた部屋で呆然としていたグラフィックデザイナーは、彼女の写真から庭の植木を掘り起こすとそこから缶に入ったフィルムが見つかる。現像してみると何やら密談する男たちの姿が映っていた。彼女の足跡を追って写真に写っていた場所へ赴くが、そんな彼に闇の手が襲いかかってくる。
幸せそうな恋人たちの日常生活が急転し、失踪した彼女を心配するグラフィックデザイナーの暗い不安を映す生活の対比はよい。騒がしく描かず、重苦しい映像と低いBGMをからめて、主人公のグラフィックデザイナーの苦しい胸の内をよく表現しているとは思う。しかし主人公の身なりが小ぎれいで、焦燥感も感じられないので、本当に悲しんでいるのかが伝わりにくかった。一般的な生活を送るには清潔感は必要だが、映画なので身形から悲しみや焦りを表現してもよいのでは。更にさすがに一般人なので超人的な能力はなく、困難に当たるとくじけてしまうのは仕方がない。そんな弱さも見せている後に、追跡者を撃退する活躍も見せるので、ちょっとキャラクター像にぶれが見えてしまうのも残念。撃退せんでも逃げて逃げて、逃げまくるっていう演出でもいいんでないかな。
自分が嫌う演出では現在と回想を行ったり来たりするのが多すぎた。彼女の足取りを追っていくうちに、彼女の姿や行動を思い出し辻褄が合うという、リンクさせている演出だが、あまりにも多いので、今は昔なのか現在なのかどっちやねんとイライラする。
グラフィックデザイナーに迫る敵の正体もパッとしない。陰謀論者お馴染みのあの情報機関がお出ましになるのだが、なんでそこに結びつくのかがはっきりしない。一応彼女が失踪した理由もそこにあるのだが、分かりにくい上に失踪する理由としては説明が十分ではないので、なるほどと手を打つような納得もない。大体黒幕がいかにもっていう演出で登場するので興が覚める。一人の一般人捕まえるのに後手後手に回りすぎなんだよなぁ。
エンディングも意識し過ぎな演出。映画を観たーっていうカタルシスもないし、だまされたーっていうどんでん返し感も一切ない。帯にはラスト15分の衝撃ってあったけど、何がじゃって腹が立ってしまう。昔見た映画のパクリのような映像で、終わらせ方に責任感を感じない。たぶん制作側は美しく締めたつもりなんだろうが、見ている自分にとっては消化不良がたまる。こういうきちんと作品のラストを飾らない作品をポツポツ見るが、よくこんなんでOKが出せたなと思う。脚本はよかったのに、映像化すると見事に失敗したいい例かもしれない。