トリプル9 裏切りのコード
トリプル9 裏切りのコード(2016年:アメリカ)
監督:ジョン・ヒルコート
配給:オープン・ロード・フィルムズ
出演:ケイシー・アフレック
:キウェテル・イジョフォー
:アンソニー・マッキー
:アーロン・ポール
:クリフトン・コリンズ・Jr
:ウディ・ハレルソン
警察、武装強奪団、マフィアと、様々な人物の思惑と欲望が入り乱れ、一つの大きな犯罪が展開されていく、キャスティング豪華な犯罪群像劇。武装強奪団がアメリカ国土安全保障省に保管された機密を強奪するようにマフィアの女ボスに命じられるが、警察の注意を逸らすために警官殺しを計画する。全警官は事件現場に直行しなければならない緊急コードが「999」。
序盤から登場人物が多くて混乱する。武装強奪団のメンバーは個性的だが、みんな主張が強すぎて誰がどの役割か把握するのが大変。ともかくリーダー格のキウェテル・イジョフォーは元兵士で、マフィアの女ボスの妹とできている。二人の間にできた息子を人質に取られているのでマフィアの命令を渋々実行している。一方アンソニー・マッキーとクリフトン・コリンズ・Jrの二人は刑事。汚職刑事が事件に関わるのは映画あるあるだが、実際に犯罪を行うのは少し奇妙に感じた。汚職刑事の役割は犯罪のもみ消しだろう。その他ナビゲーターの男とジャンキーのその弟。割と二人の扱いは雑。ナビゲーターこそ作戦の肝だと思うのに早々の退場。ジャンキー弟は行動が迷走するが最期は割といい仕事をする。
マフィアの女ボスがケイト・ウィンスレット。今までのキャリアからはかけ離れた非情な女ボスを演じているが、見た目ただの派手でイヤな女と化している。強盗団に機密を盗ませる理由を語るが、その割には足を引っ張るようなことしかしていない。人質は手に届きそうで届かないところでちらつかせることに意味があるし、重要なメンバーを殺しては計画が遂行できないことも分からないのだろうか。その全然似ていない妹をガル・ガドットが演じているが、彼女は黒人強奪団リーダーの恋人であり、その息子の母という難しい立ち位置。それなのにどういう思いなのかさっぱりわからない。恋人なのか、母なのか、それともマフィアの妹なのか、複雑な立ち位置を活かしてドラマに幅を持たせてほしかった。
一応警察側が主役になるのだが、こちらも存在が弱い。ケイシー・アフレックの四六時中ガムを噛んでいる刑事のキャラクターはいいが、目立った活躍はなく、その叔父の刑事であるウディ・ハレルソンの地道な捜査が流石に説得力がある。ラストの車の後部座席で待ち構えていた姿がカッコいい。奇行がなければもっと評価される俳優と思うんだがなぁ。
武装強奪団のメンバーで主役のケイシー・アフレックの相棒という、これも難しい立ち位置のアンソニー・マッキーも活かし切れていない。「999」を使った陽動を思い付き、計画のために相棒を死地に落とさなければならないことに複雑な思いがあれば、これもストーリーに奥行きが出たと思うが、どういう気持ちなのか分からなかった。彼の計画が狂ってしまうが、結果的には「999」の緊急コードを出せたことは映画的展開で、これから始まるだろうアクションに、これまた心が躍ったんだがなぁ。
犯罪アクションということで、擦り切れるようなスリルある犯罪と派手な銃撃戦を期待したが、少々期待外れだった。犯罪は計画されているが、結果は行き当たりばったりの行動が目立つ。実際「999」のような全警官現場へ直行みたいな命令はないのだろうが。銃撃戦は制圧するための銃撃が多く、自分は嫌いではなかった。
群像劇にするにはドラマが足りない、アクションにするには派手さが足りない。犯罪はスリリングでなく、中途半端にリアルを求めたので理解しにくい展開になった。欲張った結果が、悪い形で出た映画だと思う。キャスト一人一人は演技力の高い俳優が出ているだけに非常に残念。
その昔中国人留学生に「広島は怖いトコですか?。」と質問されたことがある。彼は高学歴で日本でも高度な設計の現場で研修していたほどの知識人だったが、来日直前「仁義なき戦い」を視聴して思い込んでしまったらしい。この作品の舞台になっている都市は米国ジョージア州アトランタ。色々な作品でも登場するほどの全米有数の犯罪多発都市らしい。それらだけでこの都市のイメージを作ってしまうのはかわいそうだろう。歴史ある都市だし、オリンピックも開かれたこともあるし。そういえば昨今何かと聞く、アメリカ疾病予防センター(CDC)もあるらしい。
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