ヴァン・ヘルシング

ヴァン・ヘルシング(2004年:アメリカ)
監督:スティーヴン・ソマーズ
配給:ユニバーサル・ピクチャーズ
出演:ヒュー・ジャックマン
  :ケイト・ベッキンセイル
  :リチャード・ロクスバーグ
  :デヴィッド・ウェナム
  :シュラー・ヘンズリー
 
テンガロンハットに黒コート。屈強な身体に武器を携え魔物を狩る。凄腕モンスターハンター、ヴァン・ヘルシングと吸血鬼の王、ドラキュラ伯爵との熾烈な戦いを描いたアメコミ原作の近世ファンタジーアクション。レスポイルされた古典的クリーチャーが新鮮かつ、カッコいい武器が男心をくすぐる大作。
時は19世紀後期。文明が過去の野蛮さと決別しようとした頃、トランシルバニアでは吸血鬼の王ドラキュラ伯爵がある研究を完成しつつあった。そして、ドラキュラ伯爵を抹殺しようとする一族は窮地に立たされていた。凄腕モンスターハンター、ヴァン・ヘルシングは枢機卿の命令で現地に赴くが、いきなり襲撃を受け、これを撃退。一族の姫と共にドラキュラ伯爵抹殺のため協力する。しかしドラキュラ伯爵の力は強大で劣勢を強いられていき、ついにはドラキュラ伯爵は研究を完成させ、大きな野望を現わしていく。
クリーチャーが現代的になり、CGを使って滑らかに動く。ドラキュラ伯爵のおぞましい怪物への変身や空を縦横無尽に飛び回る吸血鬼どもなど素晴らしい。特に狼男の変化は人の皮膚がボロボロと崩れ落ち、その下から獣の剛毛が生えだす描写は身の毛がよだつほど効果を発揮している。
主役のヒュー・ジャックマンもワイルドな容姿と力強い表情がカッコよく、さすが今を代表する俳優と納得。長身に黒づくめの衣装は威圧感と精悍さがあふれ出し、魅力を十分に演出している。割とアクションはやられっぱなしだが、この人も眼に力があるので、どんな窮地でもあきらめない不屈の闘志を感じさせてくれる。某ミュータントの狼男もハマリ役だが、この役もハマっていると思う。どっちも狼が付きまとっているが。あと、この人は必ず脱がされる。これだけの筋肉美なら納得するが、ちょっとかわいそう。
相棒となる姫にはケイト・ベッキンセイル。豊かなウェーブかかった髪を振り乱して吸血鬼と戦う姿に華があって美しい。吸血鬼にボコボコにやられても立ち上がってくる芯の強い姫を熱演。二人ともあきらめない姿勢が素晴らしい。タイトな衣装に身を包んで腰がメチャクチャ細いのと脚がメチャクチャ長いのにも驚いた。この人の作品はあまり見たことがなかったが、アクションも表情も、佇まいも素晴らしかったのでうれしい発見。
その二人をサポートした半僧半俗の修道士武器開発者と、物語の鍵を握るフランケンシュタインの怪物もなかなか魅力的なキャラクター。修道士はちょっとドジな性格だが、重要なヒントを発見し、時には身体を張って二人を助ける愛すべき脇役。フランケンシュタインの怪物は生きたいという根源的な希望を抱えて、その生命力をドラキュラに狙われる。哲学的な物言いがあるのは原典と同じ。彼の活躍をもっと観たかった。
意欲的なファンタジーアクションではあるが、設定が置き去りにされているところが気になるところ。ドラキュラ伯爵はヴァン・ヘルシングを「ガブリエル」と呼び、その昔彼に殺されたと告白。ヴァン・ヘルシングは記憶がないためその過去が分からない。その因縁は語られないので消化不良になる。ヴァチカンの工房ではガトリング砲やニトログリセリン爆弾とか開発してたのに、ヴァン・ヘルシングが使う武器は連射ボウガンと手裏剣と二丁拳銃とか。ガトリングを乱射して空飛ぶ吸血鬼どもをバッタバッタと打ち落としてくれたら爽快感があったのに。またこの作品、敵は強すぎて、人間は弱すぎる。なので最終決戦はある手段を使って戦うのだが、自分にはスッキリしなかった。ビックリ人間大集合が観たいのではない。あくまでも魔物を倒すのは人間であるべきと思っている。
エンディングを見る限り、続編が考えられていたと思われる。解けていないヴァン・ヘルシングの正体や、筏で海へとこぎ出す仲間と旅立つ馬上の後ろ姿。まだ見ぬ怪異を追ってヴァン・ヘルシングの活躍が期待される。が、まだ何も発表もないのでお蔵入りかな。魅力的なコンテンツなだけにもったいない。

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