アンダー・ザ・スキン 種の捕食
アンダー・ザ・スキン 種の捕食(イギリス・アメリカ・スイス:2014年)
監督:ジョナサン・グレイザー
原作:ミシェル・フェイバー「アンダー・ザ・スキン」
脚本:ジョナサン・グレイザー、ウォルター・キャンベル
出演:スカーレット・ヨハンソン
:ジェレミー・マクウィリアムス
:クリシュトフ・ハーディック
:ポール・フラニガン
先日から有名な地球外生命体モノの新作が公開されているので、得体のしれない地球外生命体が人間を侵食する物語を観たくなった。美しい謎の生命体が次々と男どもを捕食するが、彼女の中に生まれた変化とともに彷徨う。よく言えば意欲的なアーティスティック映像や雰囲気、悪く言えば説明不足で自己満足的なSFホラーロードムービー。決してスカヨハの全裸にひかれたわけではない。決して。
バイク乗り男が女を運んでいた。その女の衣類をはぎ取り、着こんでいく美しも怪しい無表情な女。彼女は化粧してバンを運転し、男どもを誘っては廃屋に連れ込み欲情を煽るが、男たちは黒いタールのような液体の中に囚われ消えてしまう。クラブで男を捕らえた翌日、車の中で別の男からバラを贈られた彼女だが、バラのトゲで手を傷つけてしまい血が流れる。夜に連れ込んだ男は顔面が崩れた男で、その容姿から人付き合いを避けているため一度も女性と触れ合ったこともないと語る。彼女は廃屋に連れ込むが、鏡で自身の顔を見て何かを思い、顔の崩れた男を解放する。女は彷徨い始める。
人間社会に潜む謎の生命体のうごめきを描いているが、説明不足で何も分からない。いきなり女が全裸にひん剥かれて、美しくも無感情な女性型異形が男を連れ込んでは黒い液体の中に沈めていく。囚われた男は膨れ上がるが、皮だけ残して中身が萎んでしまい、ここで殺されて栄養にされたんだなと理解はできる。だが、彼女が何者で、彼女を助けるのか監視しているのか分からないバイクの男については一切語られないので、物語の全体像が理解できない。一応最後に彼女の正体が現れるのだが、期待していたほどの異形さはなく、肩透かしを食らう。
映像の撮り方や雰囲気作りはかなりの意欲を感じるが、セリフも説明も少ないので余計に鼻につく。何でも映像作家志望の監督らしく、独創性を前面に推しているようだが、どこかで見たような表現に、いかにもというような映像。ドキュメンタリータッチに見せつつも、所々に恣意的な演出もある。オープニングとエンディングは妙に長く、特にラストの焚火程度の薄い煙が雪降る灰色の空に上がっていく映像にまったく美を感じられず、この監督とは感覚が合わないと感じた。カメラのレンズに雪が付着してるから余計に興が醒める。
こんな訳の分らない作品でスカーレット・ヨハンソンを使っているのがもったいない。印象的な刺さるような眼差しを持った瞳に、赤い口紅が映える形のよい唇。今回は黒髪に染めてよりミステリアス、でも惹きこまれてしまう妖しさをにじみ出す存在感は流石。序盤の無表情な顔は妖艶さがあったが、後半バスで移動している時の落ちぶれたような影ある表情の作り方は同じ人物とは思えないほどの表現力。そしてこの作品のキモであるフルヌードの姿は少したるんだ感があっても退廃的なエロを具現化しており、これを見せられたらそりゃ男は血迷うわと痛感させられるほど。しかも全身見せてくれるからこの人どこまで体当たりでやるんだろと驚かされる。間違いないように、誤解のないように、一応言っておくが、これが目当てで観たんじゃない。SFホラーが目当てで観たんだ。やましい心は決してない。
ストーリーが分からないので同じような男を捕らえる展開が続いて、観ていて本当にダレる。多分彼女は男を文字通り捕食することが目的で、手段、方法、境遇、容姿なんか関係ないんだろうが、何かの変化、これも多分バラのトゲでケガしたことで痛感を知り、人の優しさや顔が崩れた男の悲しさなどを感受することで、人間の感情が彼女を侵食していることを物語としたかったのかな、と思う。それにしても説明不足で意味不明。彼女に関わるバイクの男が何者か説明はなく、彼女がこの地球にいる理由もまったく分からない。ここを説明してこそSFホラーとして成立すると思われる。
観終わっての感想は悪いのは分かるが、この程度の作品に天下のスカヨハが出演して、更にはフルヌードまで晒したのはもったいないどころか、損害賠償レベル。もっと高尚で深みのある作品でスカヨハのお姿を拝みたかったが、この人が例の電脳サイバーパンク作品で少佐を演じてたのはおっちゃん認めへんで。