古傷に効くのは万葉集
君待つと わが恋ひをればわが屋戸(やど)の すだれ動かし秋の風吹く
額田王(ぬかたのおほきみ)
学生時代の私的解釈は「ずっと待ってたのに彼は来てくれなかった。インターホンは宅配業者。期待してばかみたい」。
…けれど、現実の恋愛を突然失って15年以上経った今、印象が大きく変わった。もうこの世で再び会う事はなくても、私の待ち人は秋の風になって確かに来るのだ。失望感はもう無い。小説ならカズオ・イシグロ「わたしを離さないで」、あるいは漫画の諫山創「進撃の巨人」の読後感と似ている。現在、この有名な恋歌の私なりの解釈はとても幸せなものだ。まぁ、どっちにしても泣くんですけどね。
「恋しくなるといつでも応えてくれるあなた、今日は秋風に乗って来てくれたね。私にはわかったの」
過去の恋愛に関して、秋口は本当に思い出深いので、金木犀が香る頃までは感傷的になってしまう。この時期ただでさえ自律神経いかれてるのに。とりあえず良く寝て食べているので大丈夫でしょう。とにかく、恋の傷心には大小問わず万葉集が効くから読めばいいと思う。