コネヒト式プロダクトビジョンのつくりかた💫
本記事はコネヒト Advent Calendar 2022の25日目のエントリーになります。
こんにちは。コネヒトという会社でCPOをやっている@itoshoです。年の瀬ということで、今日は2022年の個人的なハイライトを書きたいなと思ったので、少し前の話にはなるのですが、頑張ってつくったコネヒトのプロダクトビジョンの話をお届けします。
会社のビジョンについては多くの事例が公開されていますが、プロダクトビジョンの事例はそこまで多くないかと思いますので、その必要性も含めて何かしらの問いが立てられればと思います。
現在のプロダクトビジョン
はじめに今回完成したプロダクトビジョンを紹介します。
なお、今日はプロダクトビジョンの内容そのものではなく、このプロダクトビジョンができた背景や過程を軸に紹介できればと思います。
プロダクトビジョンとは?
そもそも、プロダクトビジョンとは何でしょうか?会社ごとに解釈の違いはあるかと思いますが、コネヒトではプロダクトビジョンを以下のように定義しています。
プロダクトの「Why」に対するメッセージ
プロダクトを使った時、どんなことが出来るようになるのか?
プロダクトを通じて、到達したい理想の世界
なぜ、プロダクトビジョンをつくったのか?
次に、今回プロダクトビジョンをつくった背景をお伝えします。コネヒトでは3年前に経営体制を刷新し「あなたの家族像が実現できる社会をつくる」というコーポレートビジョンを新たに掲げました。
このコーポレートビジョン自体はいわゆる"Social Good"なビジョンであり、メッセージとしても広がりと奥行きを兼ね備えていて、手前味噌ですが、イケてるビジョンだと思っています。一方で、プロダクトの方向性を決めるには抽象度が高く、社員全員の自律的な意思決定を促したり、その意思決定を自然にアラインメントさせたりするには、コーポレートビジョンだけでは不十分だと感じていました。
これは決してコーポレートビジョンが悪いわけではなく、コネヒトの主力プロダクトであるママリが変革期にあることにも起因しています。CPOに就任した際の記事でも触れていますが、コネヒト及びママリは名実ともに顧客を母親から家族へ拡げ、"次なるPMF"を目指すための価値探索が必要なフェーズに入っています。ソフトウェアエンジニアリングで例えると、コーポレートビジョンと現状のプロダクトにインピーダンスミスマッチが発生していると言えば分かりやすい?かもしれません。
兎にも角にも上記のような理由から、コーポレートビジョンとプロダクトの架け橋となったり、ギャップを埋めたりする手触り感のある"何か"が必要だと思いました。そして、その"何か"がプロダクトビジョンであると考えました。
プロダクトビジョンができるまで
では、ここからは具体的にどういう時間軸、どういうプロセスでプロダクトビジョンが現在の形になっていったかを紹介します。
なお、ここまでプロダクトビジョンに絞って話をしてきましたが、当然のことながらプロダクトビジョンだけではなく、プロダクト戦略もセットで策定しています。正確には、中長期のプロダクト戦略の(特に重要な)要素の一つとして、プロダクトビジョンは位置づけられているので、ここからはプロダクト戦略にも触れながら説明をしていきます。
STEP1: 経営と考える
まず、4月ぐらいから経営チームを中心としたメンバーで議論が本格化しました。もちろん、それ以前もプロダクト戦略に関する議論は行われていましたが、この時期は明確に新しいプロダクト戦略及びプロダクトビジョンをぶち上げることをひとつのゴールに議論を行っていました。
進め方としては、CPOである僕が資料をつくり、それを叩きとして議論を行い、そのフィードバックや議論内容を資料に反映するという流れをひたすら繰り返しました。この時期はマーケットやユーザー調査はもちろんですが、作業としては何百枚もスライドを描いていたので、なかなか大変でした。
STEP2: プロダクトマネージャーと考える
STEP1を経て、ある程度の骨子は固まってきたので1ヶ月半ほど経ったタイミングでユーザーのことを広く深く理解しているプロダクトマネージャーを中心としたメンバーと議論する時間を増やすようにしました。会社として大方針を決めることは経営の仕事だと思いますが、HiPPOという言葉があるように全てを経営で意思決定することは、特にプロダクト戦略においては危険だと考えています。
プロダクトマネージャーたちとは通常の議論以外にも1DAY合宿を行ったので、簡単に合宿で行ったことを紹介したいと思います。まず、コンテンツとしては、前半を戦略なんでもQ&A大会、後半をプロダクトビジョン作成ワークショップ(以下、WS)という二部構成で行いました。
戦略なんでもQ&A大会では、僕がその日時点での戦略を説明した後、みんなからひたすら質問を受けて、僕がそれに回答したり、僕が回答ができないものやみんなが納得できないものはその場で議論したりすることで、みんなの納得度 / 理解度と戦略の練度を高めようとしました。
納得度については、以下の5段階で評価してもらい、最終的に全員が2以上の納得度になることをゴールに議論を続けました。
5: 完全に同意
4: よいと思う
3: やってみるか
2: 引っかかるけど、やってみるか
1: 賛同できないな
0: 絶対にダメだ
プロダクトビジョン作成WSでは前半の内容を踏まえた上で「ぼく / わたしが考える最強のプロダクトビジョン」を各自でつくり、その想いを含めて発表するというワークを行いました。
このワークの狙いは、それぞれが自分の言葉でビジョンを言語化することで自分ごと化してもらい、戦略の重要な要素やキーワードが浮かび上がらせることだったのですが、自分だけで考えていたら思い浮かばなかっただろうなと思えるアウトプットがたくさんあり、みんなからも好意的なフィードバックが多かったので素直にやってよかったなと感じました。
STEP3: ひとりで決める
STEP1とSTEP2を経て、プロダクト戦略やプロダクトビジョンのピントがおおよそ定まってきましたが、最後の仕上げに関しては、ほぼ僕ひとりでつくりあげました。
これは決してチームでの対話や議論を放棄したわけではありません。ただ、OSSの世界に「優しい終身の独裁者」という言葉もありますが、合議だけではよいプロダクトはつくれないと僕は考えています。プロダクト戦略やプロダクトビジョンをひとつのストーリーとして機能させるためには、最後は誰かひとりがまとめ切る必要性があり、その責任を負うのがプロダクトの責任者(コネヒトではそれがCPO)の仕事だと思います。
ですので、このSTEPでは、とにかく自分で最高だと思えるプロダクト戦略とプロダクトビジョンをつくり切ることを意識しました。絶対に勝てるプロダクト戦略やプロダクトビジョンなんてものは存在しませんが、それに甘えることなく、少なくとも自分が信じられるものをつくることがユーザーに対する誠実な態度なんじゃないかなと僕は思っています。
そして、最終的に完成したプロダクトビジョンは冒頭にも挙げた「未来の可能性が増え、家族の幸せが連鎖する」というものですが、このプロダクトビジョンではプロダクトの「Who(顧客)」「Value(提供価値)」「Goal(到達したい世界)」を明快にすることを特に意識しました。他にも色々と意識したことはありますが、個人的にはイケてると思えるプロダクトビジョンができたので満足しています。
プロダクトビジョンができたあと
最後にプロダクトビジョンを公開した後の話をしたいと思います。
全社へのリリースと浸透
まず、全社への共有は7月と8月の全社イベントの時間を使い、2回に渡って行いました。
最初の共有では、プロダクトビジョンと事業方針の2つに絞って話をしました。上述のスライドでも触れたようにプロダクト戦略全体だとかなりボリュームがあるため、意図的にスコープを絞って話をしました。また、初回はブロードキャスト的なコミュニケーションで、僕がほぼ一方的にプロダクトビジョンの必要性やそこに込めた想いをひたすら話しました。
ただ、今後プロダクト戦略を推進する上でみんなからのフィードバックは欲しかったので、アンケートで質問などを書いてもらい、後日その質問への回答をNotionにまとめるといった工夫は行いました。全ての質問に答えるのは大変でしたが、自分の思考を改めて整理する上ではとても良かったです。
2回目の共有では、より具体の戦略やロードマップの話をしました。この時はWS形式で行い、プロダクト戦略をインストールしよう!(NOT ダウンロード)というテーマで、僕の発表の後に以下のシートを活用したグループでのディスカッションを行ってもらいました。
限られた時間の中での共有ではあるので、みんなの理解や納得度に濃淡はあったかと思いますが、アンケート結果も悪くはなかったので、2回の共有を経て、ようやくプロダクトビジョンの一歩目を踏み出すことができたなと感じました。
プロダクトビジョンの現在と未来
では、社内リリースから数ヶ月経って、プロダクト戦略やプロダクトビジョンの浸透度や進み具合はどうかと言うと、オープンにお伝えするとまだまだだなと感じています。
冒頭に書いたようにプロダクトビジョンをつくった目的の一つに「社員全員の自律的な意思決定の促進とその意思決定を自然なアラインメント」がありましたが、日々の意思決定の軸にプロダクトビジョンが根を張っているかと問われるとそうではないので、もっと流通量を増やしていく必要があると感じていますし、プロダクト戦略に関しても、僕らの事業ドメイン特有ですが数ヶ月と比べても社会の変化が大きいので、より成功確度を上げられるように戦略を日々チューニングしていかなければいけないと改めて痛感しています。
ただ、その中でも先日有志で行われた合宿でプロダクト戦略やプロダクトビジョンと繋がりのあるアウトプットが生まれていて、やっぱり「どんなビジョンでも何もないよりはずっとマシ」だと感じているので、今後はこういった動きをどんどん誘発させていきたいと考えています。
というわけで、2023年はつくって終わりではなく、このプロダクトビジョンを本気で前進させていく1年にしたいと思っているので、コネヒトの次回作にご期待ください!
最後まで読んでいただきありがとうございます。
参考文献 / サイト
プロダクト戦略及びプロダクトビジョンをつくるにあたって、たくさんの文献やサイトにお世話になりました。
プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける | Melissa Perri, 吉羽 龍太郎 |本 | 通販 | Amazon
プロダクトマネジメントのすべて 事業戦略・IT開発・UXデザイン・マーケティングからチーム・組織運営まで | 及川 卓也, 曽根原 春樹, 小城 久美子 |本 | 通販 | Amazon
プロダクトマネジメント実践講座: シリコンバレー企業の現役PMが伝授する、プロダクトの成長を加速するロードマップの書き方 | Udemy
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?