周りの声に惑わされず、山を登りきったカエルのお話
一度は山に登ってみたいと思っていたカエルが10匹集まった。
みんなで一緒に登ろうじゃないかということになって、山の麓に集合した。
しかし、見送りにきた仲間達はみんなヤジを飛ばすばかりだった。
「登れっこないだろ!行くだけ無駄だぜ!やめとけ、やめとけ!」
そんな言葉を背に受けながら、10匹のカエルは出発した。
ぴょこぴょこと小さい足で跳ねながら、山に登っていた。
中腹にさしかかったところで、うさぎ達に会った。
カエル達が「頂上まで登るんだ」と言うと、うさぎ達はすぐさまこう言った。
「頂上に登る?無理だ、無理だ!この山はものすごく高いんだ。そんな小さい足で登れるわけないよ!」
これを聞いて、すでに疲れ切っていた5匹は諦めた。
残った5匹の前には、いっそう険しい登り坂が待っていた。
やがて、モミの樹海に入ると、今度はマーモットと出会った。
「頂上まで行くなんて、カエルさん達には無理ですよ。あまりに無謀です。とんでもないですよ!」この言葉を聞いて2匹が諦めた。
残った3匹はなおも進んだ。
少しずつ、少しずつ、とにかく頂上を目指して進んだ。
ぴょこん、ぴょこんと。
やがて今度は高山のヤギ達が現れ、カエル達の様子を見て笑った。
「このへんで引き返したほうがいんじゃないか?その調子じゃ、あとひと月かかったって頂上には着かないだろ」
ここで、また2匹が脱落した。
とうとう残りは1匹になってしまった。
しかし、この1匹は、それからずいぶんと時間をかけて、ついに頂上へと辿り着いたのだ。
その1匹が山を降りてくるのを待って、仲間達はいっせいに聞いた。
「一体、どうやって登りきったの?」
でも、そのカエルはただ一言「何?」と聞き返しただけだった。
仲間達はもう一度大きな声で聞いた。
「どうやってこんな快挙を成し遂げることができたの?」
すると、そのカエルはまたしてもこう聞き返した。
「何?何?何?」
そのカエルは耳が聞こえなかったのだ。
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