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夫に合わせて青森に引っ越したほのちゃんへ

ほのちゃんは 都会で とても良い経験をしたんだね 良い上司に出会って その言葉に心を震わせて  走ってきた5年間を わたしは知っているよ がむしゃらの居心地のよさを 体得したところなのに 青森に行ったら それと同じ体験はできないし 同じ高みには 進めないのでしょうね 夫についていく ほのちゃん 悲しさと 柔軟に生きてきた女たちの経験に挟まれて さぞ苦しいことでしょうね 立ち向かう強さが 勇気じゃなくて 新しい幸せを選ぶことが 勇気なんだよ わたしも あなたに続くから

    • ヒューズ

      地球と宇宙を繋げる線が人間の中には通っているのだけれど、 最近は、ヒューズが飛んでしまっていたり、 流せたとしても、か細いエネルギーしか送れなかったりする人間が多くなっちゃったから、 ヒューズが飛ばないように自分の体を整えておくことが大事で、 そんな人間のところばかりに、力が与えられている。

      • たなばた

        そんなさ、見せるわけないじゃん 年に一回の逢瀬よ? 2人きりがいいに決まってるって、流石にわかるでしょ? 年がら年中こちとら暇だからさ、 あんたたちのこと見てたりするわけよ それでその中にちょっと勘がいいやつなんかいたら、ちらっと目が合っちゃったりなんてしてさ、 ってのはどうでもよくて、 とにかくこっちは解放的でプライバシーもへったくれもないわけ、 そしたらさ、もう曇らすよね だから文句つけずに同情しろ

        • みらい

          今見えてる、 今の自分が行くと思うから怖いんだよ そこに行くのは別の人 今までもそうだったでしょう それは別の人がすることだから、 不安にならなくていいの 別の人になるの

        夫に合わせて青森に引っ越したほのちゃんへ

          憎い箏弾き

          お琴をはじめた。 ぽやんと光るここが、私の席。 入門してすぐでも、 ここの席は瑞々しく、華々しく、健やかな音が鳴らせるものだから、 一回り二回り上の人たちが、座りたそうにしているのをよく知っている。 本当はあっちもこっちも、 光る席が空いているってことは、 秘密にしている。

          憎い箏弾き

          死の注射

          とある白い診察室で、 私は死の注射を受けた。 受けた瞬間、同席して、傍観するだけの我が弟を憎んだ。 ああ、もう私は死ぬのだ。 腕から指先の方にかけて、どんどんと青白く、冷たくなっていくー と思いきや、腕が壊死することはなく、 ぶっ倒れることもなく。 私たちは診察室を後にした。 歩いても歩いても、腕の色は小麦色。 まるで人生を生きるのと変わらないことに気づいて、仕方ないから「二度目は無いぞ」と釘を刺して、弟を許すことにした。

          強い子についていく

          どう考えても 意地悪で攻撃的なあなたが わたしを惹きつけたのは 気 が強かったから なんだね 情報でも 芸術でも ポジティブなものでも ネガティブなものでも 気の強いものって 大人気 わたしも 今では 「~しなさい」なんて 言えるように なったから みんなに大人気

          強い子についていく

          信号無視

          明らかに車どおりが少ないと  ーほらほら、渡っちまえ  ーいやいや、待てないほど余裕の無い人間になりたくない と葛藤する そんな中、横からするりと渡る人がいるとむかついて  ーこの人はきっと日常的にこうなのだ  ー自身の気付かざる内に他人のペースを犯す危険分子だ と毒づく でもこれはその人に対してだけじゃなくて 自分に対しても言えることだから できるだけ自分が不審がらないように 私は律儀に信号を待っているわけで いい子ちゃんってことじゃないから

          機嫌叱責

          「自分の機嫌は自分で取ろう」って言われると なんだか 怒られているみたい 「自分の気を整えよう」って言えばいいのに それなら 言うこと聞いてあげる

          母の息

          わたしは 母の笑った時の息が 顔に吹きかかることが たいへん 不快なのだけれど とある虫にとってみれば 森を駆け抜けてきた 清 わたしが嫌っていても 一定数には どうしても快い だから やむを得ない

          寒椿

          寒椿 雪で桃に染まりけり 空の青が高くなる

          呼んで

          きっとさえじゃない どうして私はさえなんだろう あなたに呼ばれるに  ふさわしい名前があったはず

          世界の始まりは

          もし世界は はじめ1つで、 分離することで 生まれたのなら、 その2つは心の底から お互いを嫌っていただろう。

          世界の始まりは

          法事

          生に生きている四十九日。 通りを隔てて あっちの席は 死に生きざるを得ないだろう。 強まる生命感と 家族愛。

          朝 目が覚めると うっとうしかった 眠たくなった時に 不機嫌になりそうなことに 不機嫌になった

          通学電車

          少し汗くさくなった座席 あの塀の蔦は 少し茂ったかな 朝は学生でいっぱいになる この車両から やっぱりいろんな学校が見えて 過去のわたしたちも 見えてくる 出発の合図は電子音に変わったんだ でもアナウンスの英語は同じだ 私はいつも4両目 窓越しにあの子と手を合わせてお別れしたここは 改札から一番遠い場所だったんだね またあの子と散歩しようかしら 変わらない看板 看板って10年保つのね