関東圏から伊豆に移り住んで、30年になりました。
その頃既に絹、羊毛を手紡ぎし、身近な植物で染め、布を織って暮らしていました、が、段々と植物が採れなくなり、染めが思うように出来なくなっていまし
た。何処か植物が沢山有り、大きな機織り機が置け、暮らせる環境が無いかと
探していました。
そんな時、以前勤めていた工房の先輩にここ伊豆を進められ、迷いありました
が思い切って移り住みました。
それから30年、あいも変わらず糸を紡ぎ、身近な植物で糸を染め布を織って暮ら
しています。伊豆の自然は惜しみなく大きく手を広げ受入れてくれた…と言うか…
大きすぎる手の中で、小さな私は糸を紡ぎ、草木で染め布を織り続けました。
伊豆に移り住んで間も無く山に山繭が生息している事を知人に教えてもらい、
少しずつ集めては糸に紡ぎ、布に織り込んでいました。年々減っていく山繭の数
に仕方無いと諦めていた所近くに住む人が、山繭の卵を羽化させ育てている事を
知りました。有り難い事にその山繭を譲って貰える事になり、伊豆の山繭糸で布
を織る事が出来る様になりました。その事がきっかけとなり、伊豆ならではの
素材で糸を紡ぎ、布を織りたいと強く思う様になりました。
数年前、畑仕事の経験などなかったのですが、まわり人達に教えてもらい、
助けてもらいながら、近くの休耕田に和綿の種を蒔きました。
“種まきから布が出来るまで” 育てた綿を紡ぎ、布を織りオーガニックの下着、
帯などを制作しています。
その後、雑草の如く生息する苧麻(カラムシ)を知り、刈り取り、糸にし布を
織り、あずま袋等を制作しています。
伊豆の天蚕(絹)和綿(綿)苧麻(麻)、繊維が揃いました。それぞれの長所、短所
を生かした布作りをする為に“伊豆の布研究室”を作り試行錯誤の日々です。
また、若い頃、今の時代に合った織りとはどんなのもか?と考え40×60㌢(約)
のフレーム織り機を思い付き、織れる布は13×18㌢(約)と小さいのですが、
織っている間も飾ることができ、今の住環境に適していると考えます。
フレーム織り機は、着なくなった洋服等を裂いて糸にする裂き織りに適してい
て、昔から日本に伝わる布への考え方に添った布作りが出来ます。
“未来のためにできること”は、“布を織る” ことを人に伝えること、
私自身が“布を織り”続ける事です。