㉘ニューヨークのコロナの現状
ニューヨークの街角には、写真のようなコーナーがけっこうあちこちにある。どこのコーナーでも暇そうにしながら係員がぽつんと座っているだけで、参加者らしき人を見かけたことは一度もない。一見、「献血か?」と思わせるが、しかし、更に近づくと『COVID-19(コロナの正式名)TESTING』の出店であることがわかる。ここに来れば誰でも無料でコロナの検査をしてもらえる。旅行者であっても例外ではない。アメリカにいる検査希望の全ての人が、好きなところで検査することが可能なのだ。日本では考えられない。日本なら、年寄から順番に、あるいは葉書を受けとった人から順番に、あるいは発症者の比率が多いエリアから順番に、など、細かい手順を決めてから行うのだろう。それも予約票が丸必だったり、検査場所が決まっていたりする。それに外国籍の人は除くとか、旅行者は除くなどと細かな決まりができるに違いない。しかしアメリカは違う。事務手続きの時間と経費が無駄と考える。一気にやってしまうのがアメリカの凄いところ。このわかりやすさ。早さ。日本の必要以上の平等性優先ではこの早さに追いつけない。
では、街中はいったいどうなのだろう?
7月20日の午後。ニューヨクは、タイムズスクエアからグランドセントラル駅に向かう地下鉄の先頭から4両めの車両で調べてみた。乗客は私を入れて36人。それとなく観察すると、マスクをしているのは14人だった。その約4割に何か傾向らしきものがあるかどうか探ってみた。若い人ほどマスクをせず、年寄ほどマスクをしているかと眺めてみたが、それはない。女性ほどマスクをしているかと思ったが、それもない。お金持ちそうな人ほどマスクをして、そうでない身なりの人ほどマスクをしていないのでは?と思ったが、それもない。屈強な男性ほどマスクをしていないのでは?とも推測してみたが、ボブサップのような男性が小さく可愛らしいマスク姿で乗り込んでくる姿を見てこの考えも捨てた。一組、7~8歳の坊やを従えた若いママは子供にもしっかりマスクをさせていた。しかし、子供連れはマスクをしていると一般化できるかどうかはわからない。マスクをする、しないに男女や年齢や体型などはどうやら全く関係がないようだ。
7番街のペンステーションあたりを歩きながら街行く人も観察してみた。場所柄、旅行者が多いこともあるからアメリカと一括りで述べていいかどうかかわからないが、マスク姿の人は2割ほどしかいなかった。ここでも法則らしきものは見当たらなかった。
図書館でも観察を試みた。イーストリバーそばの図書館。自習室には幾つかのフロアに分かれて自習者がいる。その2割ほどがマスク姿だった。図書館の自習室だから隣との間隔は狭くない。でもそのことと関係はなさそう。流石に職員の多くはマスクをしていたが全員ではなかった。
ある語学学校の話。この学校は学費が安いためにトルコやコロンビアや、チリなどからの留学生が多いと聞く。この学校では7月の半ばにコロナの感染者が教師14~15人の中から2人出て、生徒の中からも2人感染者が発症し、そのため2週間の休校に追い込まれた。しかし再開されたからと言っても、以前と何も変わることがなく、ただ入口の受付での検温が以前よりも徹底されたことくらいで、他は何も変わらないという。
ブロードウェイでミュージカル『シカゴ」を見たときのことを思い出してみる。今年の6月のこと。チケットを購入するオンラインサイトには、事細かにコロナ対応のことが書かれている。だから入場受付でマスク着用を厳しく求められるのかと思ったら何もなく、拍子抜けして席に着いたことを思い出した。観客だってマスク姿の人は3~4割に過ぎない。
私が通うタップダンス教室はアメリカでは評判の高い学校。オンライン・サイトにはコロナ対策に如何に配慮しているかが書かれている。しかし、先生はレッスン中、ノーマスク。生徒に求めるわけでもない。生徒でも3人に2人はノーマスクだった(当然私はレッスン中もマスクを着用した)
アメリカでは、少なくともニューヨークでは、コロナに対して注意喚起はするし、必要な環境は整えている。早い段階から、職場などを通じて無料の検査キットも配布している。恐らく一家に5箱くらいの検査キットは今でも常備されているのではないか。このニューヨークにおいては、コロナを大変な流行り病だという意識はもはや薄い。普通のインフルエンザとの認識に近いようだ。だから日本の騒ぎとは一線を画す。「国としてやらねばならないことはすべて整えている。あとは自分で考えて行動するように」とでも言いたげだ。自由が何より大事な国らしい。
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